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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第三百六十話

 ゾークの遺跡に案内された。

「なるべく少ない人数で」って言われたので暗殺を疑ったがそういう意図じゃなさそうである。

 それでも怖いからエディとメリッサを連れて行く。

 クレアやタチアナ、ケビンは怪我されると裏方の仕事が崩壊するので待機。

 レンを護衛として置いてく。

 嫁ちゃんはピゲットが護衛してるので大丈夫だろう。

 レイブンくんは「殺されてもお供します」っていうのでメンバー入り。

 忠誠心が重い……。

 あと学者も連れてく。例の院生パイセンである。

 院生パイセンは寄生虫感染で入院してたけど間に合った。

 生物学の調査だから専門家は外せない。

 で、行くじゃん。

 ラターニアの輸送船で行く。

 いいのかな?

 中身見せて。

 撮影してるから技術パクっちゃうよ?

 え? 問題ない? 技術レベルは同じくらい?

 そうッスか。

 ゾークが見つけた遺跡ってのは鬼神国とラターニアの中間地点のどちらの領地でもない惑星だった。

 そうラターニアと鬼神国は国境を接してない。

 滅亡したプローンと鬼神国やラターニアは国境が接してるんだけどね。

 現在はプローンの領地には双方の友好国である帝国が居座ってる。

 そのせいか安全な航路として両国とも使用してる。

 なにもしなくても帝国に通行料や貿易の仲介料など各種収入がある状態である。

 いや海賊退治とかの治安対策は【執拗に】してるんだけどね。

 で俺たちのいる地点から鬼神国側に少し進んだところにその惑星はあった。

 名無しの惑星である。

 かつて住民や原生生物がいたらしいけどプローンが食い尽くして全滅。

 以後死の星になってる。

 動物が絶滅したため普通の植物まで絶滅。

 地表から動物の死骸がなくなり、有機物の減少と共に土が消滅。

 砂の惑星に。

 現在は菌類が大量繁殖している。

 正確には菌類じゃないらしいけど難しい話で俺は理解してない。

 大気中に毒成分が大量に含まれており、戦闘服でなければ生存できない環境だ。

 プローン……ろくなことしねえな……。

 輸送機が地表に降りた。

 俺たちは完全装備の戦闘服で外に出る。


「うっわー暗ッ!!! ライト、ライトっと」


 ライトをつける。

 環境破壊が進んだ結果、風化が進んで軽くなった砂が常に風で舞いあげられいる。

 そのせいで常に砂嵐みたいになっている。

 日光は遮られ常に暗い。

 暗さと砂嵐で視界は悪い。

 地表には苔すら生えなくなった。

 もう人が住める惑星ではない。

 こういうの見るとプローンって生きてくのヘタだったんだなと思う。

 人間も大概だけど、プローンはもっと他の生物の共存ができない生き物だったのだろう。

 おとなしく草食してればよかったってのは結果論だな。

 あれから何度もシミュレーションしたけどプローンを滅亡から救う手段はなかった。

 俺たちが来た時点でプローンはすでに詰んでいたのだ。

 反省は大事だけど、反省しすぎるのもよくない。

 ただプローンの残した結果がこれなのである。


「こちらが遺跡になります」


 遺跡は放置されていた。

 見た感じはピラミッドというか古墳というか。

 とにかくなにかの墓みたいだった。

 中はプローンの文化様式とは違う装飾が施されていた。

 砂で汚れて断言できないが、ラターニアや鬼神国とも違う様式だ。

 壁画や壁の模様を撮影。

 文字みたいなのが書いてる。

 表意文字かな。

 ラターニアは表音文字。

 鬼神国は表意文字と表音文字の組み合わせだ。

 バトルドーム加盟国はたいてい文化が失われてて鬼人国語を使ってる。

 帝国はご存じ日本語。表意文字と表音文字の組み合わせである。

 この辺で表意文字だけってのは珍しい。


「それはかつてこの惑星にあった文明の経典と考えられてます」


 大使さんが直々に解説してくれた。

 カメラで撮影。

 すぐに戦艦に転送。

 リアルタイムで撮影してる映像から抽出するより元から写真の方が扱いは楽である。


「経典ってのは?」


 そう聞くとラターニア大使の顔が曇った。

 いつもの冷や汗ではない。

 顔色が悪いタイプの質問だったようだ。


「【すべての生き物に進化を。すべての生き物に文明を】。これが我々を悩ませているものです」


「それって神みたいな存在がいるっていう……」


「ええ、我々が便宜上ゼン神族と呼んでる存在です。生物の元に現われ気まぐれで進化とテクノロジーを与える存在です。遭遇する可能性は低く、狙って会える存在ではありませんがね」


「気まぐれ?」


「ええ、与えられた方は神だと思ってるようですが……我々の分析ではゼン神族の目的は【遊び】です。彼らは様々な方法でテクノロジーをばら撒いていまして。こういった遺跡だったり、直接与えることもあるそうです」


「ラターニアへの接触は?」


「記録上はございません。ただ記録が存在しないほど過去に接触したかもしれませんが。我々はゾークを交渉相手とみなしてませんでしたので、この遺跡のテクノロジーを知ったのはごく最近になります」


 相変わらずラターニアは約束守らない連中に冷たいよね!


「なぜこれを俺たちに?」


「我々の誠意と受け取ってもらえば幸いです。……我々も対等に交渉できる存在ができてうれしいのです。できれば銀河帝国とは末永く友好関係を構築したいと考えております」


 えーっとつまりゾークのはじまりの地ってこと!?

 もともとゾークは帝国に負けて外宇宙へ追放された。

 そのときはまだワンオーワンやアオイさん、それに執事みたいな人間型だったわけだ。

 で、逃げた先にあったこの銀河、初期配置は暴力全振りだ。

 だからカニちゃんになったわけだ。

 だけど実は真に試されてるのは交渉力。

 ゾークが進化のために捨てた能力こそが攻略に必要なスキルだったのだ……。

 ゾークちゃん……運が悪すぎる……。

 さすがに可哀想になってきたぞ……。

 そのてんウチら帝国は皇帝がいる社会だけど支配はゆるく自由主義。

 思想の自由は認められている。

 社会秩序のためのゆるい縛りだけだ。

 公爵会こそが正しい説を唱えても逮捕されない。

 会社はクビかもしれんけどね。

 少なくとも帝国はいちいち関与しない。

 帝国が取り締まってるのって嫁ちゃんの下品な悪口くらいか?

 俺の悪口は自由に言ってもらってる。

 とにかく帝国はゾークに比べたら自由な社会である。

 それゆえ能力の多様性があり、ゲームの局面が変わっても誰かが対応できる仕組みだ。

 嫁ちゃん含めてみんな社会の歯車。

 大量の歯車があれば誰かがカチッとハマるってわけ。

 だから生物学からプローンを攻略できたのだ。

 今回のラターニアだって俺たちが自由な社会だからこそ好意的なわけである。

 もしかすると運の良さってそういうことなのかもしれない……。


「レオ閣下、これは心よりの忠告です……ゼン神聖国の遺跡はもちろん直接のコンタクトがあっても相手にせぬ方がいいかと。ラターニアはゾークを驚異とみなしてませんでした。ですが帝国はラターニアと対等の国家で手強い交渉相手とみなしており、敵に回れば脅威であると考えてます。進化によってその文化が失われるのは惜しいと思っております」


 かなり、ほめてくれてる。

 おそらくリップサービスではないだろう。

 おおむね価値観が似てるしね。


「心に留めておきます」


 俺たちは握手した。

 ゾークの戦略的失敗を見るのはつらいが……良い勉強になった。

 あとは記録を分析にかけてっと。

 おそらく屍食鬼も同じようなテクノロジーから生まれたのだろう。

 ま、その辺も学者に投げとこ。

 俺の仕事じゃねえや。

 いまは屍食鬼問題に集中しよう。

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テクノーロージァ!
テッカマンブレードのラダム的なヤツを連想しました
ドラえもんの映画で見たやつ……アチコチで遊び半分に生物 進化させ文明を与える青狸は邪悪な神様!
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