第三十五話
脳筋の俺が言うのもなんだが……頭が悪い。
いやアリかって言われたらアリだし大好物である。
だがここでやるか!?
合体ロボさぁー!!!
リニアブレイザーが進む。
カニちゃんが現われるけど大きさが違いすぎる。
カニちゃんを踏み潰していく。
「隊長。新しい攻略法見つけたねえ」
メリッサから通信が入る。
圧倒的質量による蹂躙。
たしかに一番単純な答えだ。
問題はすぐに作れないことだよねえ。
造形プリンターだといくつかのパーツが出力できないだろうし。
そもそもあのサイズだと組み立て中に自重で壊れる。
宇宙戦艦の建造と同じように宇宙にドックが必要だろう。
経済性を無視すればいけるかもしれない……。
公爵の搭乗したリニアブレイザーはカニを蹴散らしていく。
圧倒的な戦力差に公爵は調子に乗った。
「ふはははははははははー! このカミシロの悪魔どもめ!!!」
どうやら公爵はカミシロ家がゾークを作ったと思い込んでるようだ。
「いやその理屈はおかしい。カミシロ家は侯爵やぞ。ここより田舎やぞ! ゾークなんて作れるわけがねえっての」
「隊長。たぶん……もう理屈じゃないんだよ」
本当にさあ、カミシロ家なにやったの!?
ここまで憎まれてるのおかしいだろ!
「ぐはははは!!! 今日ここにカミシロ家との戦いは終わる!」
巨人がやってきた。
だが大きさが違う。
俺が苦戦した巨人を蹴り一発で倒す。
「脆弱! 脆弱! 脆弱ぅッ!!!」
無敵。
まさにその言葉通りに見えた。
見えたんだよねえ……。
俺は弱点がわかっていた。
そう、ゲーム内も超巨大ロボを売っていた。
強いんだけどねえ……。
俺が呆れていると警報音が鳴った。
ほらね。
【危険です! 危険です! 危険です!!!】
「ぬう! 何事ぞ!?」
リニアブレイザーの足をカニがよじ登っていた。
その数は何匹も、もはや数百にもなろうとしていた。
「こしゃくなあああああああッ!!!」
公爵は暴れカニを踏み潰していく。
やはりだ……。
「あははは、隊長。せっかくの巨大ロボなのに使い方わかってねえや」
「貴様ァ!!! 公爵様への言葉、看過できんぞ!!!」
伍長がブチ切れた。
「だってさあ、せっかくデカいの使ってるのに護衛つけてねえの。普通デカいのって盾役じゃん」
そうなのだ。
巨大ユニットは盾役なのだ。
それをしないということは、デカくて目立つという利点をドブに捨てているのと同じだ。
さらにもう一つ致命的な欠陥があった。
「しかたない! 胸部砲台起動! デスブラスター発動!!!」
胸が開き巨大な砲台が出てくる。
絶妙にダサイのが逆に素晴らしい。
正直、このデザインは好きだよ。
「デスブラスター発射あああああああッ!!!」
デスブラスターは周囲をなぎ払っていく。
だけど足元のカニは一匹たりとも倒せてない。
そしてそのときが来た。
めきめきめきめきめき。
関節部からひしゃげる音がした。
ばきん。
接合部のボルトが飛んだ。
つうかボルトでとめんな!!!
そこは今の技術で改修しとけ!!!
続けて、しゅるんっとワイヤーが弾ける音がした。
次の瞬間、膝が変な方向に曲がった。
「ぬううううううううう!!! 何事ぞ!!!」
ぐちゃりと機体が傾いていく。
これが致命的な欠陥だ。
500年前の機体は関節が弱い。
最新式のギアに取り替えたとしても、ジャイアントスイングでへし折れるくらいに弱い。
長期戦向きではない。
俺の専用機は関節部の設計見直しになった。
関節部を最新式の立体構造体に変更し、重量バランスの変化した分の計算を行っているところである。
そこまでやらねばならないほどに脆いのである。
現行の素材の方が軽くて頑丈である。
そして残念なことにその最新素材と言えども壊せる頭のおかしい生物がゾークなのだ。
戦艦の外壁壊して侵入してくるからな。
当然、何百匹ものゾークにたかられたリニアブレイザーの脚部はあっと言う間に切断されてしまったのである。
何匹ものゾークがリニアブレイザーの下敷きになる。
それでも生き残ったものは這い上がり攻撃を仕掛ける。
そこに死への恐怖などない。
ゾークの一匹一匹はドローンみたいなものなのだ。
だが人間は違った。
「ひいいいいいいいいッ!!! や、やめろおおおおおおおッ!!!」
公爵の悲鳴が響き渡った。
すかさず近衛隊のピゲット少佐が怒鳴った。
「いますぐ中継を切断せよ!!! 公爵閣下の名誉を汚すな!!!」
「は、はい!!!」
伍長がどこかに連絡すると中継が切断された。
「伍長。これから指揮権は近衛隊に譲ってもらう。残ってる最高責任者は誰だ?」
「は、はい!!! 公爵様の三男のマルマ様がおられます!」
「連れていけ。婿殿! それにクレア……は体調不良か。メリッサ一緒に来い!」
「うっす」
「へーい」
駅の事務所に案内される。
そこにいたのは軍の制服を着た10歳くらいの男の子だった。
「マルマ・ミストラルです」
そう挨拶する男の子の頭にはちょこんとケモ耳がついていた。
「もしかして……レンの?」
「あ、弟です。姉をご存じで?」
「ご存じも何も……レン、弟さん発見したぞ。お父さんは手遅れだった」
そう言って通信をするとホログラムがオンラインになり、レンが映し出された。
「マルマ! 無事だったのですね!」
「姉様!」
「兄様は? お姉様は? お母様は?」
「兄様はお父様と一緒に出陣して……お母様と姉様は地下鉄にいるよ!」
「正妻様は?」
「化け物が出てから行方不明だ。あのね、姉様。正妻様は戦争が始まる前から様子がおかしかったんだ」
……あー……かなり高い確率で正妻はゾークのスパイだわ。
メリッサの顔を見たら【言うなよ】って顔をしてた。
うん余計なこと言わない。
レオ、できる子。
するとレンが切り出す。
「聞いてマルマ。そこのレオに指揮権を譲って。彼はカミシロ家だけど獣人を差別しない人よ」
「カミシロ家……まさか……」
「ニュースにもなってって……そちらでは入らないか。レオはゾークを倒してヴェロニカ皇女殿下の配偶者になった英雄よ」
「そ、そんなことが……まさか寿命のある悪魔と言われたカミシロ家が……皇女殿下の」
「この状況を救えるのはレオしかいないわ。お願い。指揮権を渡して」
マルマはしばらく考えた。
そりゃ絶対悪と教えられてきたカミシロ家の人間に指揮権渡すなんて理屈ではわかっていても感情が許さないだろう。
と思ったが返事は案外速かった。
「わかりました。レオ殿。指揮権をお渡しします。領民をお救いください」
「マルマ殿。ベストを尽くします」
俄然やる気出ちゃったかなあ。
あとでマルマ様の耳触らせてもらおう。
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