第三百四十七話
カトリ先生にヤンキーの群れが押し寄せる。
海賊だけじゃない。
ラターニア側のヤンキーもだ。
棍棒、ビームソード、拳銃まで持ち込むバカがいた。
って拳銃は暗殺者だな。
だけどカトリ先生は笑っていた。
あー……、うん、体験型テーマパーク【バカの末路】。
かっきーん!
拳銃を撃とうとした暗殺者を最初にぶん殴る。
こっちは放物線で客席にホームラン!
大型ディスプレイに突き刺さった。
なお誰もこぼれ球をキャッチしようとしない。
死ぬ気で逃げてた。
警備員が施設内の病院に運んでいく。
大丈夫大丈夫。
俺のギャグ補正&ナノマシンで回復できるはずだから!
……即死しなければね。
ヤンキーどもはそこでふと我に返った。
そして正しい認識をした・……してしまった。
自分たちは生意気な下等民族を制裁しに来たはずだった。
だけどそこはカトリ先生という猛獣の檻で、自分たちはただの餌だったと。
「うわああああああああああッ!」
一人が叫んだ。
すると恐慌が連鎖する。
今さら我に返ってももう遅い。
ヒャッハー!!!
「き、聞いてねえ! こんな化け物がいるなッげぶらッ!!!」
ビームソード持ってたやつが大型ディスプレイに突き刺さった。
よかった。
少し画質悪いけど、すぐに交換できるやつにしといて。
「オラオラオラオラオラァッ!!! 逃げてんじゃねえぞ!!! 俺を楽しませろ!!!」
「う、うわああああああああああッ!!! てめえら、かかれぇ!!!」
海賊とラターニアヤンキーの熱い友情。
涙なしでは見られない。
熱い共闘が……。
かきーん!
ですよねー。
ただの残酷ショーになりかねないので対戦選手戦意喪失によるTKOで幕を閉じる。
これで試合後に乱入してくるバカを封じた。
なおチケット周りはラターニアと約束したけど、運営周りの約束はしてない。
【ちゃんと大会開催したもん!】で終わりである。
ちゃんと規約に【飛び込み参加可能。ただし命の保障はしない】って書いてあるもん!
ラターニア人弁護士複数人にも規約確認させたもん!
ラターニアは武力を持った闇金だけど、銀河帝国はゴリゴリの武闘派ヤクザである。
わりと相性いいよね。うちら。
大型ディスプレイ張り替えての第二戦は宇宙空間でピゲットのおっちゃんである。
ここで渋い戦いを……。
「海賊の反応多数。命知らずが多すぎますね」
妖精さんがため息をついた。
「妖精さん……あいつらバカなのかな?」
俺なら絶対にしない。
ピゲットが化け物なのは見りゃわかんだろ!
「バカだから海賊になっったんだと思いますよ~」
「ですよね~」
すでに対戦相手とバカどもの冥福を祈る俺。
だけど対戦相手の海賊は空気など読ま……読めない!
「なめやがってこの下等民族がよぉ! てめえらぶち殺して女どもは変態どもに売りつけてやらあ! なんだあの皇帝って名乗ってるガキは! レオとか言う野郎の前で……」
「あッ!」と思う前に海賊のコックピッドが撃ち抜かれていた。
それはだめ。絶対。
ピゲットに嫁ちゃんの悪口はダメ!
娘みたいなもんなんだから!!!
嫁ちゃん育てたのピゲットなんだから!!!
「不敬は許さぬ」
声が完全に凍っていた。
タマヒュンである。
完全にキレたピゲットが正確に海賊を抹殺していく。
もうね、見られた瞬間デッドエンド。
超精密射撃でパイロットを射抜いていく。
エンターテイメント?
そんなものはねえ!!!
嫁ちゃんの悪口を言った時点でやつらは死んでいたのだ。
悪口さえ言わなければ首か背骨折られる程度ですんだのに……。
海賊絶滅シナリオまであるぞこれ。
「ま、待て! 俺は何も言って……」
ぼかーんっと人型戦闘機が爆発した。
バックヤードの運営本部から貴賓席にいる嫁ちゃんに連絡。
「止めたげて」
「婿殿。妾に対して言うことはないか?」
「大好きです。でもスポーツ感ゼロになっちゃうので止めてくだしゃい。おなしゃす……後で海賊ぶち殺すので……」
「あいわかった。『ピゲット! やめ!』」
止めるがもう遅い。
ピゲットは全員抹殺完了してた。
客席は静まりかえっていた。
そりゃね、「あれは冗談だから」ですまされるわけがない。
お前らはラインを超えてしまったのだよ。
カトリ先生はまだ笑えた。
だがこっちは俺が見ても当然の結果である。
あとで知ったのだが、このときラターニア高官はメモ書きを残していた。
【銀河帝国民に皇帝陛下への不敬は厳禁】と。
ですよねー。
俺だったらエンターテイメントしつつ事故を装ってぶち殺すかな。
どちらにせよ言った時点で殺す。
「わざと殺しただろ!?」
大騒ぎするバカが出たけど連行されていく。
うんそうだよ。
「あらまー、レオくん。ラターニア大使が【今すぐ海賊ギルドと手を切ってください! 融資は打ち切り! ただちに返済させなさい!!! 私たちは間違ってた! 銀河帝国は賢いお人好しなんかじゃない!!!】って本国に報告してますよ。私たちに聞かれてもいいから速報送ることを選んだようですね」
「あらまー。ちょっとやりすぎちゃったかな」
ラターニアも尊い犠牲で学んだようだ。
大使も自分たちが優越してると思ってたんだろうけどさ……。
賢い相手でよかったわ。
で、次はマスク・ド・イソノの番である。
何言ってるかわからねえだろ?
メキシコっぽい音楽が流れる。
イソノの故郷の伝統音楽なんだって。
イソノが現われる。
もうね、マスクつけてノリノリである。
体も仕上げてきてる。
腹筋バキバキ。
「マスク・ド・イソノ参上!!!」
ちゅどーんっと特設ステージに花火が上がった。
ほら観客……バカじゃん。
さっきの皆殺しショーをもう忘れたのよ。花火の音で。
ナイスイソノ!!!
イソノはリングに飛び乗る。
一つだけツッコんでいいかな?
お前……野球部じゃなくてプロレス研究会に入りたかっただろ?
もう一回花火。今度は仕掛け花火。しゅわわー。
相手は大男。
海賊ギルドで用心棒してたんだって。
イソノがジュニアヘビーなら相手はスーパーヘビー級。
だけどイソノの野郎……全然怖がってなかった。