第三百二十八話
武将ぶって言ってみるが、所詮俺は皇帝陛下の婿でしかない。
俺がいなくても、英雄ルートのエッジならゾークマザーに特攻して勝利した。
人口の9割死ぬルートだけど。
……俺が失敗したら人が死にまくるのか……謙虚に生きようと思う。
未知の文明との戦争である。
プローンや屍食鬼は鬼神国から機体の情報もらったから安心して戦えた。
だけど海賊ギルドは謎に包まれてる。
自前の武器開発はなし。
ありとあらゆる文明から略奪や交易で戦艦などの兵器を取得している。
バトルドームと付き合いのない文明のものになるとスペック不明。
上位層の超絶兵器の可能性すらあるわけである。
とりあえずレア武器持ってるやつを鉄砲玉にするはずもない。
サクサク倒せばいいわけである。
で、おそらく戦闘機を出したのが作戦のミソではないかと思う。
乗組員の命はいらないだけど船は欲しい。
戦力にならないけどこちらのテクノロジーの理解の糸口になる。
いくら仲良くてもバトルドームや鬼神国がテクノロジーくれるわけがないのよ。
相手の船は帝国だと駆逐艦相当の大きさだ。
そこに戦闘機が近づく。
「あんッ!? 攻撃するのか!? やってみろよ! 海賊ギルドのバックにゃ、てめえらが逆立ちしても勝てねえ大国様がいるんだぜぇ! おう、やってみやがれ!!!」
「トマス、やれ」
「攻撃開始!」
嫁ちゃんイラッとしてた。
問答無用で攻撃。
なおこのミサイルであるが破壊を目的としたものではない。
爆発に紛れて蜘蛛型ドローンが放出。
戦艦に到達できるのは数体といったところだろう。
それを複数のドローンオペレーターで一体ずつ操作する。
ミサイルが壊したすき間から入り、中に侵入。
中に入ったら火災でドローン消失なんかも考えられるけど、今回は普通に入れた。
装甲薄いな……。
完全に殺されるために特攻させられてる状態じゃん。
「え、ちょ! 待て! 話し合うところじゃねえの……ぎゃあああああああああああああッ! ミサイル撃ってきやがった!!! クソ、話が違う! 俺たちも反撃するぞ!!!」
「火災が発生しました!」
「クソ! 消火しろ!」
グダグダまでこちらに放送してくる。
こりゃ民間船に毛が生えた程度の戦闘力だな。
中に侵入した蜘蛛型ドローンは指揮官の後頭部にくっつき……自爆。
他の指揮官も次々始末していく。
最初にイキってたおっさんは真っ先に処した。
ただこれだけで総崩れである。
すぐに降伏してきた。
一人一体操縦するだけでもこの成果なのに、蜘蛛型ドローンを数千へたすると数万を同時に操るケビンの恐ろしさがよくわかる。
でもこのドローン弱点は多いのよ。
いまのところ露呈してないだけで。
パワーないし、動作時間短いし、すぐ壊れるし。
投降した海賊に関しては良い運命は待ってない。
処刑するほどアグレッシブではないが、条約に基づいて恨みを持っている国に引き渡し。あとは知らん。
難癖つけてきてもいい。
それよりも機体を大急ぎで回収、嫁ちゃんの戦艦でバラしていく。
あらかじめ爆発物は取り除く。
自爆特攻ではないと思うけど念のため。
敵が蜘蛛型クラスの極小ドローンを持っている可能性を考慮して電磁パルスで焼く。
これが蜘蛛型の弱点。
まうちの戦艦の場合、妖精さんが見張ってるから侵入されないけどね。
当然、電波も切断処理しておく。
そしたら分解。
メカニックのおっさん軍団を率いて京子ちゃんが分解する。
「まずは内装外しましょうか。みなさんがんばりましょう!」
船外活動用の宇宙服型のツナギを着て京子ちゃんはほほ笑む。
「はい! 親方!!!」
さすが工学系の院生や作業員のおっさんの頂点に立つ女である。
階級ではなく親方と呼ばれている……。
なお俺も今回は解体工事&電気工事でお呼ばれしてる。
し、仕事しないと……なんか震えが……。
まずは私物の運び出し。
家電やガジェットっぽいのは解析に回す。
ソフトウェアも帝国側のメディアにディスクイメージを吸い出して解析する予定だ。
ソフトウェア吸い出しが終わって、データベースもコピー。
あとでテキストにして鬼神国に翻訳お願いする。
いまさー、バトルドーム経由で鬼神国や周辺国、プローンの辞書と子ども用の学習教材買ったのよ。
プローンのは聖典も買った。
これを言語学者さんたちのチームが死ぬような思いしながら習得中。
すでに一般向けに帝国で編纂したプローン解説書が発売されてる。
プローンの聖典の翻訳版は出すか会議中。
洗脳されたら嫌なのである。
あとは時間の問題だろう。
はっはっは、俺たちに技術の一端をつかませたのは失敗だったな!
帝国は軍人が無双する国ではない。
おっさんたちが工業で無双する国だ。
え? なによ妖精さん?
「私は?」
あ、はい。
妖精さんと愉快な仲間たちの工業ネバーランドです。
ということで内装はどうしても多少破壊する必要がある。
ヤンキーの部屋みたいな赤紫の内装が少しイラッとするので容赦なく破壊。
接着剤でつけてるのは壊すしかないよね。
なので破壊して運び出す。
これも解析。
塗料とか接着剤ね。それでわかることもあるのよ~。
プローンの船や人型戦闘機もこうやって調べたけど……彼らは面白い技術持ってなかったんだよね。
極端に技術の幅が小さいのよ。
サリアに聞いたら教義的に新しいものを受け入れないんだって。
それって衰退が運命付けられてると思うんだよね。
今回は海賊と言えど他国の技術を受け入れてる連中で良かった。
ローグライクの敵を倒して資材ゲットは楽しいよねー。
内装を剥がして資材を見つめる。
神棚とか祭壇的な物はなかったな。
プローンはよくわからん板があったけど。
無宗教かもしれない。
で、設備を見る。
人型重機がある。
これは運び出そう。
【要運搬】の札をつけておく。
「おっと面白いものがありますね」
「なになに……おおう」
武器があった。
こういうの。こういうのが欲しかったのよ。
「京子ちゃん、武器発見」
「了解です。すぐに回収班を向かわせます」
ヘタに触ると危ないので【危険物につき運搬注意】の札をつけておく。
それにしても……まったく異なる文明だからグロテスクな船内を予想してたんだけど、そんなことはないな。
むしろヤンキーが好きそうなデザインである。
においも自動車用消臭剤のにおいだ。車酔い起こしそう。
さすがにミラーボールはないか。
そこらじゅうにゴミが落ちていたらしい。
ゴミからわかることもあるので破片まで回収。
ふはははは!
帝国人の根気をなめるなよ~!!!
貴様らの生活文化まで解析してやるのじゃ~!




