第三百十四話
プローン兵をよく観察すると統率してる機体がいるのがわかった。
というか、俺たちが暴れるのを見て自由参加組はターゲットをプローン兵に変えた。
俺たちと戦うよりはマシだと判断したようだ。
でも連携がカスなのでただの暴徒。
がっちり固めたプローンを突破できない。
だけどそのおかげで中島と戦ってる連中と分断された。
中島を助けるチャンス到来っと。
俺は中島と戦っている方にローラーダッシュフルスロットルで接近する。
「ちわーっす、地獄のお届けでーす!」
ショルダータックル。
頭蓋骨メイスが吹っ飛んだ。
ふははははは!!!
パワー! パワーはすべてを解決する!!!
「レオくん、なに言ってるんですか……」
「なんとなく!」
「中島! 助けに来たぜ!!!」
「ふえーん! レオおおおおおおおおおッ!!!」
と泣きながら中島はトゲ付き鉄球を空中でキャッチ、そのまま引っ張った。
「な、なんだとおおおおおおおおおッ!!!」
よろけたプローンの頭部にヒザ蹴りをぶちかました。
そしてハンマーを振りかぶる。
「や、やめ!!!」
「野球しようぜ! ……お前がボールな!!!」
ホームラン。
ひどいものを見た。
中島はこれで大丈夫。
次はメリッサ……。
「終わったぞい」
二チーム壊滅させてた。
さすが戦闘民族サムライの末裔……。
では最期の王子チームを倒しに……。
「おどりゃあああああああああああああッ!!!」
あ、サリアが倒してた。
サリアは機体ボコボコだけどそれ以上に相手をボコボコにしてた。
「うおおおおおおおおおおお!!! 長兄倒したぞおおおおおおおおッ!!!」
顔面の装甲がボコボコである。
かなりくらったな。
ツノが片方折れてる。
でも観客はそれにわいた。
「サリア王子が帰ってきたぞ!!!」
「知恵者って噂のサリア王子が! 祖国を救いに来た!!!」
「サリア様万歳!!!」
「人気者じゃん。みそっかすって何よ?」
そう口にするとサリアが猛反論する。
「一番下の子はですね、小さい頃の写真を出されてこすられ続けるんです。わかりますか!!! 未だに三歳のときの映像出される悲しみが!!!」
あー……そういうことね。わかるー!
あれだ。実家に帰ると小学校時代のいたずらをずっとこすられ続けるのと同じだ。
帝国のニュースも俺のアホアホ子ども時代の映像無許可で流すもんね。
嫁ちゃんくらい下になると映像すら残ってないんだよね……。
「わかるわー。ジャッカル拾ってきたとか、オオカミの背中乗ってたとか」
「その生き物がなんなのかわかりませんが、あんたの場合頭おかしい場面だってのは伝わってきます」
ひでえ。
「それはそうとプローン倒すぞ!!!」
秘技、話題を変えてウヤムヤの術!
俺たちはプローン、それを取り囲む一般参加者の方にゆっくり進んだ。
当然、サリアが真ん中でね。
「サリア、なんか言え」
「えー……レオさん代わりにやってくださいよ。そういうの慣れてるでしょ?」
「いやぷー」
「む、むかつく!!!」
「るせー! おまえがやるんだよ!!!」
肩を押し出して前に。
本当はケツを蹴ろうかと思ったが自重した。えっへん!
「……サリアだ! プローンどもよ! よくも我が故郷をおもちゃにしてくれたな!!! 貴様らは償わなければならぬ! 鬼神族の怒りを思い知れ!!!」
サリアがそう宣言すると暴徒の群れが割れて道を作った。
彼らは両脇にひざまずいた。
それは新しい大王が誕生した瞬間だった。
だけどプローンも熟練の詐欺師集団。
詭弁で乗り切ろうとする。
「皆さんだまされてはなりません! サリア王子は銀河帝国の属国にする密約をしたのです」
うんそう来たか。
「しない」
俺は断言した。
「嘘を言うな! この神に逆らう侵略者めが!!!」
「遠すぎる」
「は?」
「遠すぎるんだよ外宇宙は。領地の肥大化は国が滅びる原因になる。我らの望みは鬼神国との友好関係でしかない。お前らのように家畜化する気もなければ、無駄な争いを求めてるわけでもない」
「はははははは!!! 馬脚を現したな!!! この詐欺師めが!!! この銀河に友好関係など存在しない!!! 食うか食われるかだ!!! 我らはこの銀河を喰らい尽くす! 生きとし生けるものをむさぼり食ってくれる!!!」
だろうね。
思いっきり本音をぶちまけてくれた。
サリアは無言で走った。
あ、キレちゃった。
俺も伴走する。
いやメリッサもエディも中島も。いないのはイソノのバカだけだ。
「死ねい!!!」
盾を持ったプローンが巨大なモーニングスターを振りかざす。
俺がモーニンスターを持った手を切り落とし、サリアが剣を突き刺す。
メリッサはさらに奥にいるプローンの首をはねた。
エディも無難にプローンを斬る捨てた。
倒れたプローン兵は一般参加者がボコボコにした。
パイロットの命もないだろう。
最後に残った豪華な機体にサリアが剣を突きつけた。
「ま、まい……」
降参なんかさせない。
サリアは指揮官を斬り捨てた。
「皆の衆! このまま我が国からプローンを追い出すぞ!!!」
「おおおおおおおおおーッ!!!」
もうこの場のノリである。
そして前大王がディスプレイにデカデカと現われる。
「でかしたぞ! サリア!!! あたらしき大王よ!!! 我も続くぞ!!!」
「前大王様だ!!!」
「歴代最強の大王様が来るぞ!!!」
結局、プローンは外交下手であった。
鬼神国の強ければなんでも許される感をなめていたのだろう。
逆に言えば弱ければ空気。
そして鬼神国人はヤンキーの論理で動いている。
弱い王子の下になんか誰がつくかと。
そして俺たちも共通だけど……お肉として出荷されるのなんて誰が喜ぶんだボケがああああああああああッ!!!
ぶち殺すぞ!!!
「前大王とサリアたちが王都になだれ込む。駐留してるプローン軍がボコボコにされていく」
おそらく鬼神国民はリーダーであるαオスが強ければ強いほど戦闘力が上がるタイプの生き物だ。
現在のサリアはαオス適性が高い。
なんて言ってもマゾ仕様シミュレーターソロモード制覇のエースパイロットだ。
ちょうど年齢的に弱まってた前大王から代替わりしたことによって群れの戦闘力は爆上がり。
こうなったら駐留してたプローンはただのカモだ。
俺たちは暖かい目で見守りながら退場して食堂で一休み。
宮殿が焼けるのを見ながらお菓子を食べていたとさ。
めでたしめでたし。
プローンが報復開始するまでは平和だろう。




