第三百十三話
イソノが薙刀を振り回す。
イソノと中島の仕事は一般参加者の整理だ。
とにかく数を減らすのだ。
一番キツい仕事かもしれない。
……私怨じゃナイヨ。いや本当に。
イソノと中島はタイマンよりこういう方が向いているのだ。
「オラオラオラオラ! かかって来い!!!」
一般参加者のレベルが問題だ。
俺は自分たちの専用機、俺の場合は【殺戮の夜】を持ち込んだ。
つまり機体は私物だ。
人型戦闘機が軽トラより安いわけがない。
それなりの値段だろう。
そう考えるとVIPの子弟子女だろう。
鬼神国の社会的ヒエラルキーは強さで決まる。
つまり圧倒的な才能持ちってことだろう。たぶん。
でも取り巻きの方が才能がありそうだ。
そりゃそうか。大王になんかなるよりナンバー2の方が楽だ。
王朝が変わると将軍官僚皆殺しじゃなかったらナンバー2目指すわな。
うん納得。
でさ、イソノが雑魚を片付けてたんだよね。サクサク。
そのときキュピーンしたのよ。
すっげえ殺気を放つ存在に気づいたわけだ。
そいつはイソノに向かって言い放つ。
「正々堂々勝負したい!!!」
女の子の声だ。
だが強者であることがわかる。
イソノは薙刀を構える。
「イソノだ。帝国の命令でサリアの助太刀してる」
「カーラだ。我らはどの勢力の下にもつかん! 私が大王になってプローンも屍食鬼も倒す!」
「ふっ、その志あいわかった!!! 我々の理想とは道が違うが尊重する! その思いを俺にぶつけてみよ!!!」
どうしよう……あのイソノがまともなことを言ってる……。
試合終わったらすぐに病院連れてかなきゃ……。
「い、イソノが壊れた!!!」
メリッサが思いっきり叫んだ。
あ、俺だけじゃなかったわ。
「イソノどうした!? おなか痛いのか!!!」
中島まで心配する。
「うるせー!!! このクソバカども!!! 俺はツノ有り女子にチヤホヤされたいんだ!!! 邪魔するなボケが!!!」
イソノが俺たちにだけ聞こえる通信で叫んだ。
よかった……一ミリもぶれてなかった。
最低なままだった。
安心したぜ。
「俺は! モテたいんだーッ!!!」
妖精さんがほほ笑む。
「婚約者に全部通報しますね」
「だってだってぇー!!! すぐ遠征になっちゃったんだもん! デートする予定だってお流れになっちゃったんだもん!!!」
血走った目のイソノがディスプレイにデカデカと表示される。
しかたないじゃん。
俺らが最大戦力なんだし。
「レオ! お前だってもうすぐ卒業だぞ!!! 高校生じゃなくなるんだぞ!!! つまりどういうことかわかるか? ラノベみたいな恋愛をするチャンスがもうなくなるってことなんだぞ!!!」
俺たちはあと数カ月で繰り上げ卒業である。
というかすでに軍で働いていて、領主の仕事もしてる。
「高校生? なにそれ美味しいの?」でしかない。
そもそも俺たちがいるのは高校じゃなくて士官学校だ。
ラブコメの舞台になんかならねえっての!!!
「いや俺、ちゃんと婚約者と毎日通話してるし」
エディが冷静なツッコミを入れた。
「うおおおおおおおおおおお! うるさい!!! 俺は! イチャイチャしたいんじゃああああああああああッ!!!」
イソノが血の涙を流した。
うぜえ。
そして中島が死刑判決を出した。
「わかるけどさイソノ。俺たちもう婚約者いるだろ。レオなんて結婚してるし」
「うるせえええええええええ!!! かかってこいやああああああああ!!!」
だめだこいつ。
たしかに俺だってラブコメしてみたい欲はある。
それは否定しない。
だけど口にしないもん。
心の中で言うだけだもの。
カーラが斬りかかった。
カーラの武器は長い刀。
斬馬刀ってやつだ。
「ぬん!!!」
いかにも威力ありますっていう斬撃が次々繰り出される。
だがイソノも死線をくぐってきた漢、攻撃をよけて……あ、バカ!
下から切り返した刃が兜をえぐった。
だけどイソノはそれをわかっていたのかスネを払っていた。
うっわ! 地味!!!
だけどその一撃はカーラ機の機動力を削ぐには充分だった。
カーラ機の足がべこんと折れた。
イソノが残心する。
「ま、まいった!!!」
泣きそうな声でカーラが宣言した。
ふう、アホが普通に勝ってくれた。
だけどイソノが言った。
「あ、コントロールおかしくなったんで棄権しまーす」
「このおバカ!!!」
「しかたないじゃん。センサー壊れちゃったんだから」
するとカーラから映像付きで通信が来た。
わなわな震えてた。
小柄な女の子だった。
タチアナたちと同じくらいの年かな。
うそーん! あの年でこの実力なの!?
鬼神国のポテンシャルって結構凄いんじゃ……。
「か、勝ち逃げするのか!!!」
そりゃ怒るわ。
舐めプされて負けたうえに棄権されたようにしか見えないもん。
イソノ……お前がダメなのはそういうとこだぞ。
「しかたないじゃん。もう戦えないし」
頭がガクガク小刻みに震えてる。
どういう壊れ方だよ!
イソノ退場である。
で、イソノ最大の被害者は後始末に奔走する中島きゅん。
「うおおおおおおおおお!!!」
ハンマーを振り回す。
どうやら一般参加者に鬼神国勢に擬態したプローンがいた模様。
トゲのついた鉄球を持ったやつやら、頭蓋骨を模した禍々しい棍棒を持った機体に囲まれてる。
どうやらプローンはこっちが本命だったみたいだ。
バカ息子たちに加勢した連中なんかより強い。
「神の名の元に触れ伏しなさい!!!」
鉄球が中島を襲う。
中島は鉄球についてる鎖を踏みつける。
そしたら敵がバランスを崩して……って別の機体がカバーに入る。
中島へ棍棒で殴りかかった。
中島は棍棒をよけるために鉄球をあきらめる。
させてくれませんよねー。
だから俺も加勢に行く。
だけどさ、ここで問題が起きた。
さっき俺が吹っ飛ばしたプローンども。
さっきのアホどもがおかしいんですよね!!!
まだ戦闘不能じゃなかった。
俺の行く手を阻んでくる。
俺は合気道みたいに……って向こうも慎重になってジリジリ距離をつめてくるだけだ。
時間稼ぎかよ!
「クソ! もう! めんどくせえ!!!」
あー、なんとなくわかってきた。
鬼神国は一人一人は強いんだ。だけど連携がカス。
逆にプローンは一人一人は弱いけど、連携は得意なのね!
こりゃ時間かかるぞ!




