第三百十二話
コロシアムには50機ほどの人型戦闘機が待ち構えていた。
見た感じツノありが七割。鬼神国勢だ。
三割がメイスなんかの鈍器を装備した連中。
プローンだろう。
記念受験組がどれだけいるかが問題だ。
間違えて殺しちゃったら気分が悪い。
うむ、作戦を考えよう。
「妖精さんいる?」
「はいはい、あなたの愛人、妖精さんですよ~」
なによ愛人って。
「妖精さん、王族がどの機体かわかる?」
「サリアさんの情報から照合した機体にマーカーつけておきますね」
なんだ。わかりやすい。
プローンと一緒にいるのが王族か。
五組くらいいる。
「あとあっちの機体は将軍のご子息みたいですね」
ツノ有りが固まっていた。
サリアと通信する。
「あっちにいる将軍の息子たちは味方?」
「まーた面倒なのがいるな……。敵ではありませんが味方でもありません。マジャーノ将軍は粛正されたそうです」
「粛正って失脚ってこと?」
「いえプローンの腹の中です」
プローン絶滅すればいいのに。
「サリアとの個人的関係は?」
「よく知らない人ですね。良くも悪くも私はみそっかすなので」
なんか親近感わくわ。
俺も限界集落領主の末っ子だしね。
「お兄ちゃん殺しちゃうかもしれないけど許してね」
「兄って言ってもそれほど親しいわけじゃありません。お好きにどうぞ。それよりも私を大王にしたら一生恨みますからね!!!」
それは知らん。
運命だ。あきらめろ。
俺だって実家の本家になると思ってなかったし。
「各戦士位置につけ!!!」
アナウンスがあった。
そしたら俺も作戦指示。
「メリッサ、プローン兵がまもってるやつらが王族。俺もやる」
「了解。サクッと倒すわ」
「サリア、逃げたら後ろから撃つから。俺と一緒に王族討伐な」
「うわあああああああん!!!」
うっさい。
「エディ、そこの連中が将軍の息子。頼んだ。手が空いたら王族討伐に加わって」
「了解」
「イソノと中島、記念受験組蹴散らして」
「なあ……俺たちの扱い酷くね? 俺たちも王族倒してチヤホヤされたいのだが」
「レオよ! ツノ有り女子と恋愛したい。その気持ちをなぜわからないのだ!!!」
「お前らの都合なんぞ知らん。とにかく邪魔な連中倒せ。あと今の発言は婚約者に密告しておく」
「ド畜生がああああああああああッ!」
アホどもめ!!!
せせら笑ってると審判がカウントを始める。
「3、2,1、はじめめえええええい!」
ドンドンと太鼓が鳴った。
俺は前に出る。
まずは近くの王族。
バトルロイヤルなんて言ってるけど、要するにアメフトと同じだ。
かいくぐってボール取ってタッチダウン。
俺の前進をプローンの機体が阻む。
こういうのは慣れっこだ。
プローン兵がメイスで殴りかかってくる。
まずは攻撃をよけると同時に首に手刀の一撃。地面に叩きつける。
もう一体が来る。
メイスをくぐって手で足をとってぶん投げる。
もう一体が体当たり。
これはもう好物。
逆に俺の体当たりで吹っ飛ばす。
腰が高すぎる!!! もっと気合入れろ!!!
残りのプローンが吠える。
「させんぞ!!! させんぞおおおおおおおおおッ!!!」
メイスを振ってくるがすべて見切っていた。
下から顔面をつかんで床に叩きつける。
プローンどもは装甲が厚くて重い機体を使ってる。
だけど操縦技術がなってない。
だから俺に簡単に転ばされる。
「うおおおおおおおおお!!!」
はい最後が突撃。
ぶん殴ってノックアウト。
「ひ、ひいいいいいいッ!!!」
王族が悲鳴を上げた。
後ろから蹴飛ばして倒れた。
「サリア! トドメ!!!」
「あー! もう!!! 兄者覚悟!!!」
サリアが剣を突き刺した。
やはりサリアは操縦技術が高い。
文句言いながらも俺のスピードについて来られてる。
強いじゃん。
兄貴の機体も行動不能にしただけでパイロットは死んでないようだ。
「今のは一つ上の兄貴です。宮殿でよく殴られたなあ……やっぱ殺そうかな」
「サリア、ステイ。よく言うだろ。復讐っていうスープは冷めてからが美味しいって」
あとから煮るなり焼くなりした方が楽しいと思うの。
「……レオさん、あんたいい性格してますね」
くくくく。
俺は人格者なんかではない。
きっちりやり返すタイプなのだよ!!!
エディは将軍の息子と対峙していた。
「なぜだ!!! なぜ貴様らは王位争奪戦に介入する!? 関係ないだろ!!!」
アホか!
エディは俺の声が聞こえてるかのように冷静に言い放った。
「我らの安全のためだ。サリアなら信用できるし無茶はしない。バトルドームとの関係を継続できる。人食いナメクジと手を組んだ王族は論外だが、貴公らがどれほど安定的に政権運営をできるか、我らと友好関係を築けるかは未知数だ」
「勝手なことを言うな!!! 我が父はやつらに食われたのだぞ!!!」
「サリアには大王がついてる。サリアなら仇を取ってくれる」
「そもそも大王がしっかりしてれば……」
「その大王は我らと友好関係を築くためにバトルドームに来たのだ。責任があるとすれば王の息子たちとプローンだ。敵を間違えるな」
「ぐ、かかれ! 敵は一人だ!!!」
「我ら帝国は友人を、鬼神国を見捨てることはない。私はエディ・アンハイム伯爵。レオ・カミシロの副官だ」
将軍の息子たちのグループが一斉に襲いかかった。
だけど実力差は明確だった。
複数を一斉に相手する俺たちはこういう戦いになれている。
エディは6人の間合いをコントロールしていた。
一斉に斬りかかるのを防ぐためにお互いがお互いの邪魔になるように誘導。
まずは一体目。
斬りかかってきたところにカウンター。手首を切り落とす。
もう一人がその隙に斬りかかるがそれは予定通り。
斬撃をくぐって足を斬りつける。
そのまま後方にいた三体目を突き刺した。
「な、なん……だと……」
三体を一瞬で倒したエディを見て将軍の息子が呆然とした。
「帝国最強の騎士か!!!」
「俺が最強? それは違う。帝国最強はレオ・カミシロだ」
そう言うとエディが最後に残った護衛二人を一呼吸で斬り捨てた。
やだ今の見えない!!!
エディも強くなってる!!!
「無様に負けたくなければ降伏せよ」
エディは将軍の息子に刃を突きつける。
クリーンファイトなのに……怖いッス。迫力が凄え。
「ぐ……ま、負けを認める……降参だ」
これで二チーム潰した。
あとはメリッサやイソノたちがどうしてるかだ。
がんばれー。




