第三百八話
大王が雑に戦うのを俺が尻拭い。
なにが「スポーツとやら」だ!!!
がっつりサポーターじゃねえか!!!
屍食鬼の戦艦は一つだけ。
エンドコンテンツなのにクソ弱い敵……。
なんだろうね。この違和感。
「大王さん! 止まれ!!!」
大王の動きが止まる。
「なんだ! なにかあったか!」
「おかしい! イベント襲撃してきたのに戦艦が一機だけ……陽動じゃね?」
「どういう意味だ!?」
「大王……いいや、おっさん! 俺たち側のゲート開けようとしたか?」
「なんの話だ?」
……まずい。
「サリア! 聞いてるか!?」
「はい! ゲートの件が何か!?」
「おっさんはゲート開けようとしたこと知らないって! 鬼神国に異変ないかな?」
「……ッ! 全力で調べます!!!」
「おい! わからん! どういう意味だ!?」
「だって屍食鬼と国交ないんでしょ! わざわざそこを襲ってきた! イベントに大王が来てることが漏れてると考えれば……」
俺たちだって知らなかった情報だ。
つまり漏らしたのは大王の近くにいる存在だ。
「クーデターか!?」
「可能性だけどね!!! そして……クレア! 戦艦撃って!!!」
「う、うん!!!」
クレアのバズーカが屍食鬼の戦艦に直撃する。
元々はデスブラスターだとしてもサイズ的に効果が高すぎた。
なにも疑問に思わなかった。俺たちも浮かれてたんだと思う。
「やっぱ来やがったか……」
バキバキと戦艦を突き破って大型の人型戦闘機がやってきた……。
いや違う?
装甲がついてる戦闘服を着た人間?
「大型の屍食鬼だ!」
近づいたら出てくる作戦だったんだろうな。
でもこちらはゾークさんのゴミカス外道先方を生き残ったのだ。
絶対やると思ったのよ!!!
それにしても屍食鬼……ちょっと手強いかも。
公爵会と侍従長乗っ取って王手までかけてたのにそれを活かせなかったゾークとは違う。
敵の敵と組む程度には知性がある!!!
戦闘力が低くてもそっちの方がよほど怖い。
「おっさん下がれ!!! 俺たちでやる!!!」
「ぬ、ぬう! 鬼神の矜持が!」
「いいから! おっさんが死んだらそこで終わりなの!!!」
「ぬ、ぬう!」
「鬼神族の皆さん連れてって」
がしっとおっさんの機体がつかまれる。
「ぬ、ぬう、離せ! 離せえええええええ!」
はい連行。
さらに暴れたのでバトルドーム守備隊にも連行手伝ってもらった。
この場に残ったのは俺たちである。
ということで巨大屍食鬼との戦いである。
「名称ギガントで登録しましたよ~」
あれギガントだって!
とりあえず……。
「クレア撃って!」
「了解!」
クレアのバズーカが直撃した。
動きはそんなに速くない。
だが異常に硬い。
「ぐおおおおおおおん!」
ギガントが着用してる戦闘服。
その顔部分、ちょうどドクロみたいになってる部分が発光した。
あ、マズッ!
「全力回避!!!」
それは巨大ビームだった。
もうね!
生身で巨大ビームを放つ巨人とか!
いろいろ反則だろと!!!
幸い俺たちはよけるのにはなれてる。
なんとか回避できた。
いや、わりと余裕か。
「ちょっと男子ぃッ! どうにかしてよ!」
「うざ! レオうっざッ!」
するとケビンから通信が入る。
「こちらケビン! 配置についたよ!!!」
「こちらニーナ。配置についたよ~」
……最大火力二人が戦闘可能になったと。
よし、あとはテキトーに逃げて……。
そう思ったら屍食鬼の人型戦闘機がやってきた。
これですべてかな。
「ちょっと男子ぃ~、あいつら倒してよ~。クレア、メリッサ、俺と迎撃。レン、援護頼む!」
クレアがバズーカを捨てた。
そもそもクレアはスナイパーの資格持ってるけど機体は接近戦カスタムである。
ステゴロファイターなのである。
レンがギガントを攻撃する。
足止め頼んます。
俺たちは雑魚の掃討。
でもさ、俺はみんなのやる気に気がついてなかった。
もうね、キレてたのだ。
後半にエキシビションを予定してたサッカー部。
空手、柔道、相撲、レスリングなど演武や試合を予定してた格技部。
このどさくさに売り込もうとしてた野球部。
そして発表会を予定してたプロレス研究会。
それだけじゃない。
吹奏楽も書道も美術もブチ切れてた。
「オラオラオラオラオラァ!!! かかって来いやー!!!」
いつになく好戦的になったイソノ。
「脇が甘い!!! 俺を殺りたきゃ束でかかって来い!!!」
狂戦士と化した中島。
中でも伝説と化したのは。
べこん。
アイアンクローで敵機体の頭を握りつぶしたのはクレアだ。
「……たのに」
「え?」
「せっかく練習したのに!!!」
顔を握りつぶした機体を片手で振り回しぶん投げる。
後ろにいた機体にぶつかり爆発した。
お、おう、強すぎじゃね?
「だりゃああああああああああ!!!」
ラリアットで首を粉砕。
ローリングソバットで敵を一撃で葬った。
それだけじゃない。
他の連中も敵を蹂躙していく。
俺……やることがない。
たまに来るギガントのビームをよけるだけだ。
そしてケビンのドローンとニーナさんの戦闘機が到達した。
「いっくよ~」
それは地獄の業火だった。
ケビンの自爆ドローンがギガントを焼いていき、さらにニーナさんのミサイルが浴びせられる。
機体のスペック云々なんてもう意味がなかった。
俺はと言うとみんなが討ちもらした機体が来たので相手する、あちょー!!!
敵が斧を振り回してきたので手をチョップ。
武器を落としたのを見てそのまま同じ手で地獄突き。
一撃で頭を吹っ飛ばす。
調子こいてたら二機に囲まれた。
斧をよけて後ろに回り込んでケツをキック。
よろけて屍食鬼の味方にぶつかったところを足に格納した拳銃取りだして撃つ。
三体片付けたところでギガントが撃墜されるのが見えた。
自爆は? ない?
なめてんのかな?
サクッと倒して終了。
するとサリアから通信が入る。
「……クーデターです。レオ様が仰るように首都星でクーデターが起きました」
はい、亡命政府確定と。
大王のおっさんこっち来ててよかったね。




