第三百四話
おっぱいの約束忘れてないよメリッサ(ニチャア)。
「なに気持ち悪い顔してるんですか……」
妖精さんにツッコミ入れられた。
「いやさ外宇宙がフレンドリーでよかったよ。ゾークがひたすら悪いだけじゃん。よかったよかった」
うんうん。
こんなにイージーなの久しぶりだね。
いやーよかった。
「違いますよ」
胡散臭い笑顔でサリアが言った。
「バトルドームに加盟してる種族だけが話が通じるんです。そもそもゲートも鬼神国のアホどもが壊しそうだったんでバトルドームが取り上げたんです。私たちが調査してたらあなた方が来たんです」
「あー! そういうことか! ゲート開けようとする連中が急に手強くなったんです! サリアさんたちに代わったんですね!」
ふむふむと妖精さんが納得する。
でもサリアとお話しする気はないらしい。
サリアの前には出ない。
「バトルドームで守ってくれるとかは?」
「ないですね!」
ですよねー。
「むしろ試合の放送で戦闘民族が接触したがってるようですが」
ガッデム!!!
次々と敵が強くなるバトル漫画みたいになってきたぞ!
「それで権利関係なんですが、皇帝陛下には銀河帝国の放映権契約にご快諾いただきました」
さすが我が皇帝陛下。
クレアも関わってるんだろうけど仕事が速いわ。
「それで大公閣下のプロモーション契約もさせていただきたいと思いまして」
「帝国内はもう契約してるんで、バトルドーム内なら契約してもいいっすよ」
「それはもう! よろしくお願いします!」
「その代わり……だましたら暴れますよ」
にっこり。
「ご安心ください。大公閣下のような狂戦士をだますことはございません。私も命が惜しいので」
とてつもなくいい笑顔をされた。
なんだろうか。
ちゃんと適度な距離感のツッコミが返ってくる。
リアクションが新鮮である。
「で、サリアさんに相談なんですけど」
「はいはい。なんでしょう? お金なら年利三割でお貸ししますよ」
「そっちじゃなくて、俺たちは帝国に攻め込まれないようにしたいんですよ。なにかいい手ありませんか?」
サリアは考える。
「そうですねえ。バトルドーム加入国家ならトーナメントを勝ち上がればいいかと。でも現状参加してるのは全体の三割ってところですからね。そうですね、この周辺の危険な種族についてご説明しましょうか」
そうそう。そういうのが聞きたかった。
「まずは屍食鬼ですね。彼らは表向きは国家を持ってません……ですが、この近くに縄張りを持ってて事実上の国を作ってますね」
「なんでそんなの野放しなのよ」
「倒すには規模が大きすぎるからですよ。上位陣に目をつけられるには実力が足りず、低中位は倒すには失うものが多すぎるって感じですかね。それに放って置いても絶滅しますし」
「絶滅?」
「彼ら、肉を食べることで獲物の能力を得ることができると主張してるんですがね、合わない肉を食べて病気で滅びかけてます」
プリオン病みたいなもんか。
帝国じゃ治療法が確立してたな。
昔は現住生物食べて住民絶滅とかあったらしいよ。
「それでも現時点では凶暴ですからね~。そちらを試食しに行くかもしれませんね」
俺たちは美味しいお肉にしか見えないと。
食われるのはさすがに嫌である。
「向こうはどういう文化なん? 名乗りを上げる文化圏?」
これ重要。
ゾークみたいに話し合い自体が成立しないってわかってたら先制攻撃しちゃえばいいし。
「ゾークと同じ……というかゾークは屍食鬼に影響されたんだと思いますよ」
「了解。それとさ、ゾークが手に入れた異星人のテクノロジーってわかる?」
「さあ? テクノロジーを提供するのが己を幸せにするみたいなこと言い出す勢力もいますが……」
「遺跡だって」
「それこそ星の数ほどありますから。調べてみます。ただ期待しないでくださいね」
サリアはいつもどおりの胡散臭い笑顔になった。
ホントこいつ胡散臭いな。
そんなんで話は終わり、客分扱いでバトルドームに滞在。
どこか適当な拠点を手に入れないとな。
バトルドームの本部にも行きたいし。
なんて思いながらこちらの文化も勉強する。
こちらの端末の仕様を提供してもらい放送を見る。
「……つまんねえな」
俺たちの世界と比べて圧倒的に文化が洗練されてない。
スポーツ的に強さを決めていくくらいなのだから、もうちょい洗練されてると思った。
ヤンキー集めて試合させるところから一歩たりとも進歩してない。
コンテンツにも多様性がない。
かろうじてドラマは存在するがヤンキーものだけだ。
いやヤンキーではないんだけど下級兵士とか地方豪族とかが戦争で手柄を立てるのばかりだ。
暴力で成り上がっていく物語しかない。
小説のようなものはあったが軍記モノしかない。
ふーん……なるほどね。
「妖精さんいる?」
「はいはーい、あなたの妖精ちゃんはいま暇ですよ~」
「あのさ悪いんだけどさ……」
「なんでそんな悪い顔してるんですか?」
だって面白いこと考えたんだもん。
で、計画書を嫁ちゃんに提出したらすぐに呼び出された。
「婿殿、なに言ってるかわかるけどわからん。説明しろ」
脳が理解を拒否したんですね。
だってしょうもない作戦ですし。
「プロジェクトデカルチャーです。我々の文化を翻訳して配信、文化汚染を試みようと思います。同時に食べ物も輸出して舌も調きょ……我々を深く知ってもらおうという平和で文化的で人道的な作戦です」
キリッ!
澄んだ目で言い放つ。
「音楽……映画、アニメ、ゲームに小説……婿殿は鬼神国を壊すつもりか?」
「ただお互いを知りあって戦争を回避したいって思ってるだけだヨ」
「その表情が信用できんわ! 笑っとるではないか!」
だってこんなにチョロいと思わなかったんだもん。
思想表現の自由って外的に侵略されないための武器でもあるよね?
さあ、まずは音楽コンテンツから。
女性向けコンテンツも定番から大量投入だ。
もう元の生活には戻れなくしてやる。




