第二百九十九話
嫁ちゃんが帰ってきた。
「妾がいないときにタコパするとはいい度胸よの!」
なぜかたいへんお怒りでたこ焼きを作らされた。
メリッサやワンオーワンなどいつものメンバーもやって来た。
なぜ俺はたこ焼きを焼いているのだろうか?(哲学)
たこ焼きを食べながら嫁ちゃんが言った。
「ゲートの開き方がわかったらしい」
うーん、背中がぞわぞわする。
おかしいな……カトリ先生は二日酔いで動けないはず。
「ミストラル公爵家に記録があった」
レンの実家である。
代々ゴミ屋敷……収集癖をこじらせているせいか葬ったはずの五百年前の記録が保管されてたとのことである。
ただし整理整頓はできてない。
ゴミ屋敷の住民あるある。
その辺に、というか紙の資料は床に積んでるし、データは異常に古い端末に死蔵されているようだ。
歴史学者や古文書復元の専門家を動員して一年がかりで文書を発掘したそうである。
あと妖精さんのコピーちゃんで。
そうか。惑星ミストラル解放からもうすぐ一年か……。
かなり政治的に危うい文書がバカスカ出てきてるらしい。
結局、各地にカニを封印、さらに女性型を社会に忍ばせた状態で共和国は……というかマザーが外宇宙に追放になったというのが真相のようである。
それを一気に解放して短期決戦を狙っていたと予想される。
共和国を外宇宙に追放しなければ帝国は存在してなかったかもね。
そんな記録とともに発掘されたのがゲートの開け方である。
ゴミ屋敷に放置されていて風化しそうになっていた資料を気合で復元したとのことである。
内容はなんてことはない。
権限を持たないものが開けようとすると防衛機能が働いて死ぬとのことである。
じゃあ、今のワンオーワンは?
「アヤメ殉職によりゾークネットワークを掌握。マザーゾークになったであります!」
なるほど。チョコあげる。
じゃあ大丈夫……なのか?
とりあえずゾーク側のテクノロジー資料も復元されたので妖精さんに丸投げ。
「解除できますね」
「でもさー、これ解除しちゃうと向こうから来ない?」
「現状でも正しい開閉方法で犠牲さえ払えば開けられますしね~。ゾークくらい頭おかしければ時間の問題だと思いますよ~」
やだ怖い!!!
「こういうのは先制攻撃できるようにしといた方がいいですよね~」
結局、喧嘩は先手必勝なのよね。
ということで罠を解除して開けることになった。
ピゲットと俺たちでワンオーワンを守る。
空からは嫁ちゃんやトマス義兄さんらが見守ってる。
フレンドリーな種族だといいなー。
……ねえか。
たぶん頭おかしい戦闘民族なんだろうな。
「ではいくであります!!!」
ワンオーワンは嫁ちゃんと同じ儀式の服を着ている。巫女っぽいヤツ。
この衣装を着るってことは皇族またはその関係者って意味になるんだって。
要するに「妹分に手を出したら帝国が相手になるぞ」って意味である。
共和国民は帝国が保護してるよとも取れる。
やはり政治は難しい。
祝詞っぽいのをワンオーワンが歌った。
前に「意味は?」って聞いたら「なんとなくであります!!!」だって。
未だ解析中だけど。正直誰もわからんって。
そのうち惑星ミストラルのゴミの山から資料が発見されるような気がする。
ゲートが光を放った。
前みたいに危険な感じはしない。
「婿殿! 直感はどうじゃ!? なにか異変があるか!?」
「なにも。いまのところ大丈夫そう」
「……婿殿がそう言うのならそうなんじゃろうな」
なおこの一大スペクタクルは生中継されている。
裸の美女の出現ですべてぶち壊しになるのを期待してる。
ワンオーワン……お兄ちゃんはごく普通のお姉さんがバニースーツ着て恥ずかしがる姿が好きだよ。
恥じらいからしか摂取できない栄養が存在するはずだ。
ぜひみんなに届けて!
なんてクソくだらない妄想をしたのがまずかった。
ゲートが光を放った。
ワンオーワンは?
「無事であります!」
ゲートは光の奥に見たことのない場所が映っていた。
そこから人型のなにかが歩いてくる。
おそらく人類型の異星人の頭には角が生えていた。
服装は和服っぽい。
「翻訳機オン。通じますか?」
男なのか女なのかすらわからない。
その人物はニコッと笑った。
「通じてる」
俺は人型戦闘機から降りる。
戦闘服のヘルメットを取って直立する。
「銀河帝国大公レオ・カミシロです」
「バトルドーム商業連盟。ゾーク担当支店長、サリアと申します」
ニコッと笑う。
「いやー、ゾークの方々は商取引の概念がありませんでしたから! 話が通じる方々のようでなにより!」
うーん、フレンドリー。
だけどさ……。
「……あなた相当お強いですね」
そう口にした途端空気が変わった。
「なるほど。ゾークどもとは違いそれがわかる実力と」
俺は無言でほほ笑む。
別にサリアが怖いわけじゃない。
嫁ちゃんに言われてるのだ。
商人は言質を取ろうとしてくるからなるべく情報渡すなって。
「いいでしょう! 我らバトルドームは帝国を歓迎いたします!」
商人って言ってるけど興行主っぽいな。
扱ってる商品はエンタメかな?
次の瞬間、サリアが腰に隠してた剣を抜いた。
だから抜いた手を押さえて喉輪。そのまま片手で持ち上げて締め上げる。
悪役絞めである。
殺気隠せてねえでやんの。
「なんのつもりだ?」
「ぐッ!!! お、お見事……こ、降参です」
嘘つけ。「へえ、このレベルか」って顔に出てやがるぞ。
この状態からでも戦闘継続できるだろお前。
でもそのまま手を離す。
「げッ、げほッ……。ぞ、ゾークを追い出したってのは嘘じゃないようですね……帝国のみなさん! 我々の商品は闘技場。この銀河の覇権を賭けた戦いの殿堂にようこそ!」
やはり頭おかしいやつだった。
俺はサリアに手を差し出す。
引き起して言う。
「だが断る!!!」
「えええええええー!!!」
「頭おかしすぎるわ。妖精さん、二度と開けられないように封印して!」
二度と開けられないは無理ですよって声が聞こえた。
そうか無理か~。
するとサリアがあわてた。
「いやいやいやいや! 待ってくださいって!!!」
「いーやーでーすー!!!」
「ちょっとぉ! ゾークと全然違うタイプじゃないですか! 聞いてないですよ!」
「るせー!!! こっちには戦う理由がねえんだよ! ばーかばーか!!!」
するとサリアが真顔になった。
「ありますよ理由」
「なんでよ?」
「このゲートを開けようとしてた連中、恥ずかしながら我が種族なんですがね。鬼神族が帝国を傘下に収めようと動いてます」
「あんたは?」
「私はすでにバトルドームの民。鬼神国がどうなろうが知ったことじゃありません。悪いことは言いません。一度戦ってみては?」
クッソ、脅迫じゃねえか!




