第二百九十三話
降下して思ったのは……簡単だわー。
今まで味方のシステムに撃たれるわ、ゾークの攻撃があるわで死ぬかと思うことが多かった。
降下したらしたで空気がなかったり、巨大生物だらけだったり、大気が毒だったりである。
もうね、これが帝国所有惑星の素晴らしさよ!!!
最初に絶望の近くに降りる。
駆けつけると絶望と他の機体が見えた。
カニに囲まれていた。
「レン、ケビン、ニーナさん頼める?」
遠距離攻撃三人衆に頼む。
「自爆ドローン準備完了したよ」
「自走砲配置完了したよ~」
「んじゃレンは絶望を援護して、俺が無線で話してみる。二人は共和国民が避難したら爆撃して」
「了解」
レンが狙撃しはじめたのと同時に俺は無線で話しかける。
「絶望のおっさん、生きてるか~? こちらはレオ・カミシロ」
「お、おう! 来てくれたか!?」
「人質はどうなったん?」
不意打ちワープとアヤメ騒動で助けられなかったが……。
「アヤメの事を聞いて部下たちのところに戻ったらこの惑星に移送されていた。マザーめ! 最初から約束なんて守る気がなかったんだ!!!」
「なるほどね。俺たちは超能力のワープでこの辺まで飛ばされてさ~。おっさん、そっち行けなくてごめんね」
「いや帝国が行く前に処刑は始まっていた。それに……生き残りは……ほら」
他の機体が親指を上げた。
初めて話の通じるゾークを見た気がする。
ワンオーワンにケビンにアオイさんに女体化したおっさんたちも話通じるか……。
でもみんな帝国民だしな。
「すぐに退避して。俺たちで援護する」
「かたじけない」
「みんな援護。ケビンとニーナさんはタイミングが来たら焼き払って!」
攻撃開始。
レンが援護をしつつ、俺たちはカニの群れに弾丸を浴びせる。
こういうのは当てる必要がない。
ただ攻撃するのが重要だ。
だって俺らの目的は時間稼ぎなのだ。
俺が指示を出すまでもなくイソノと中島が軽機関銃を広げて弾をばら撒いていく。
カニたちは突然の攻撃に戸惑った。
反応が遅いのは指示を出してるのが一人だけだからだ。
アヤメは理解できないだろう。
俺が絶望のおっさんを助けに行くなんてのは。
不合理の極みだからな!
よく考えればそれこそがゾークの弱点なのだ。
ゾークのプレイヤーはアヤメと絶望、それにサリエルなどのごく少数のみ。
あとはプレイヤーが操るユニットでしかない。
それに対して俺たちはゾークと違いそれぞれがプレーヤーだ。
どの作戦でも並行処理できる。
新規開発や知識を共有すればゾークの優位性は喪失する。
ゾークはアヤメが死んだ時点で終わりだが、俺たちは嫁ちゃんが死んでも皇位継承者はまだ100人以上いる。
皇位継承者がみんな死んだって誰かがリーダーになるだろう。
誰かが俺らの戦闘データを引き継いで戦いを継続する。
俺たちを全滅させなければ永遠に戦えるのだ。
それが俺たちの長所なのだ。
ルールさえわかればどんなゲームも攻略可能。
死にゲーの攻略情報が出回ってクリアできるものが一気に増えるのと同じだ。
もうゾークなんか恐ろしくもないのだ!(俺自身が死なないとは言ってない)
絶望のおっさんが安全圏まで逃げたのを見とどけた。
「爆撃!!!」
それはまさに地獄の黙示録だった。
カニが焼き尽くされていく。
ビーム兵器無効。
それは開戦初期こそ圧倒的優位性があった。
だけど仕組みがわかれば恐ろしくない。
「殿! 後はおまかせください!」
ヨタヨタと末松さんとエディのとこの騎士団がやって来た。
そう、カニどもはもはや末松さんたちにまかせても問題ない存在なのだ。
末松さんたちの騎士団はカニ相手のミサイルとミニガンを装備してる。
超大型かつ重量級の人型戦闘機……というかもはや戦車だ。
俺の戦闘データ元に開発した攻撃力全振りの新機体だ。
こいつはすでに実戦投入されていくつかの惑星を奪還した。
帝国は新しい機体、新しい戦術に適応したのである。
末松隊は生き残ったカニにミサイルとミニガンを浴びせる。
カニどもは一瞬でミンチになっていく。
「ふははははは! これぞアンハイム騎士団の実力よ!!!」
末松さんたちアンハイム騎士団が無双する。
この光景は帝国全土に生中継されている。
それだけ帝国は自信があるのだよ!
「末松さん! ここはまかせた! 行くぞレオ!」
エディがそう言うので俺は自前の騎士団に指示を出す。
「レイブン! 末松隊の援護を頼む!」
「了解。殿、お願いですから無茶はしないでください!」
うーん、ごめんレイブン。
これから新戦術だけじゃ対応できない敵と戦いに行くわ。
生きてたらボーナス出すから許して!
じゃあの!
「遺跡に行くぞ! 決戦だ!!!」
「おおー!!!」
よし、終わったらなにしよう?
修学旅行気分で遊びに行こうか。
前みたいにテーマパーク貸し切りで遊ぶか!
嫁ちゃんがみんなと遊ぶの気に入ったみたいだしな!
光るカチューシャつけて記念写真撮ってさ!
……もうバカ殿はやらねえぞ。
俺たちは遺跡になだれ込む。
道を阻む敵どもはなぎ倒していく。
遺跡の中に入ると通信が入った。
「レオの兄貴! ワンオーワンが!」
それはタチアナからの通信だった。
「あん!? どうした?」
するとワンオーワンの声がした。
「遺跡が呼んでいるであります……」
その声と同時に遺跡が揺れた。
揺れと同時に壁が発光した。
「な、なんだ!?」
揺れと光に戸惑っていると声が聞こえた。
アヤメだ!
「愚かな帝国民どもよ! 貴様らに教えてやろう! 我らの旅の結末を!!! 苦渋にまみれた歴史を!!! さあゲートが開く!!! 新しきマザーよ!!! その力を示せ!!!」
光がアヤメのいる部屋に収束していく。
「帝国は道連れだ! 貴様ら帝国は死と破壊、殺戮の世界に押しつぶされるのだ!!!」
光が拡散した。
俺はその光を眺めていた。
そしてワンオーワンに語りかける。
「中止できたらパフェおごったる」
「え? 少佐殿! いまなんと!?」
「ワンオーワン! お座り!!!」
「はいであります!!!」
光が急に暗くなっていった。
「俺の妹分になにしてんじゃボケが!!!」
俺は剣を抜いた。
鬱展開などさせるわけねえだろボケが!!!




