第二百八十六話
なぜか要求されてる気がして社の部屋にバスケットコートを設置した。
この艦の守り神はスポーツ好きのようである。
まー、軍艦だし。
おっさんから士官学校勢まで暇なとき球技か筋トレやってるしな。
ボールもおもちゃボックスに入れておく。
シューズ欲しい?
子ども向けのってあるの?
検索したら出たわ。
造形プリンターで出力……できるやつだわ。
カラーリングは?
お菓子メーカーとのコラボモデルがいい?
このかわいいやつか。
キャンディーカラーね。
バスケットシューズって結構なお値段するのね。
いや少佐の給料いいんで問題ねえッスよ。
へいへい注文っと。
サッカー用品は?
ボールあるからいい?
へーい。
あと子ども用の竹刀?
カトリ先生の稽古に混ざるって。
ケガすんなよ。
「はーい♪」
なにか聞こえたような気がする。
その後、無人の社でボールが跳ねるとの報告が来たが正常であると認定。
一部のお化け怖い勢が騒いだが無視無視。
さて救助隊の隊長をしていたサカモト伯爵が皇帝陛下への暗殺未遂容疑、ようするに大逆罪で逮捕という衝撃的なニュースは銀河を駆け巡った。
暗殺の実行犯は流子爵。
ゾークが潜入させていた団体にそそのかされた模様。
サカモト伯爵との関係は不明である。
爺様虐めてもしかたないので適当なところで釈放する予定だ。
だって暗殺計画立てられるほど頭良さそうじゃないし。
流子爵家は取り潰し。
連座は嫁ちゃんの方針でなし。
流家とサカモト家には本家がある。
それぞれの本家の次期当主候補に人質という名の再教育が施されることになった。
同じ家にいても家が潰れるだけという判断だ。
サカモト家は取り潰さない方針だけど本家に家督を返還するって話になりそうだよね。
さすがに皇帝暗殺はシャレにならない。
嫁ちゃんも貴族たちも厳しく断罪することを期待してるんだけど、サカモトの爺さんを処刑して一族を連座で処罰するレベルは望んでない。
匙加減が難しい。
なので嫁ちゃんは連日学者やレイモンドさんと会議してる。
過去の判例では一族連座で処刑相当なんだろうけど、明らかにサカモトの爺さん巻き込まれただけだろと。
でも隊長なんてやったから重罪ほぼ確定と。
諸侯はそれはちょっと厳しすぎやしないって空気だ。
嫁ちゃんも大逆罪はさすがに引くわーってのが正直な感想だ。
そこをどうにかする会議である。
……なるようにしかならんな。
俺は社で祈る。
「嫁ちゃんが得する結末に落ち着きますように」
ついでにバスケットコートにボールをシュート。
普通に入った。
それにしても……ゾークのスパイもどんどん小者になってきた。
もう末期だということだろう。
来月にはゾークネットワーク可視化装置が完成予定だ。
これで人型ゾークは高確率でわかるはずだ。
あとは流みたいなやつだけ気をつければいい。
おっと、お昼だ。定期連絡しよう。
【嫁ちゃんお昼どこで食べる?】
【食堂行く】
【了解】
食堂へ。
トマトを押しつけたのでトマトフェアは終了。
今日の日替わりはエンサイの炒め物と焼肉……また無限に増えそうなものが……。
お願いだから品種改良するなよ。
エンサイはデフォルトで水耕栽培の管がつまるくらい根が生えるんよ。
食堂で嫁ちゃんの分も注文して待つ。
ピゲットはこだわりがあるから勝手に注文すると怒られる。
やはり年齢が行くと肉より魚なのだろう。
言うと怒られるけど。
待っていると嫁ちゃんがやって来た。
いつものジャージである。
ただ俺たちの芋ジャージとは違い、嫁ちゃんのはフードつきでかわいいデザインだ。
「待ったか?」
「ぜーんぜん。注文しといたよ」
「ありがとなのじゃ。それでのカトリが探しておったぞ。最近遊んでくれないって」
「レオは戦場で死んだって伝えて」
「婿殿の場合、段差でコケて死ぬとか豆腐に頭ぶつけて死ぬとかの方がリアリティあるのじゃ」
「やめて! なんかありそうな気がするから!」
料理ができたので取ってきて昼食。
一口目を食べようと思ったらクレアとメリッサが来た。
「おーっす」
「おいっす。隊長たちは日替わり?」
「そそ、エンサイの中華風炒めと焼肉」
「うちらもそれでいいっか。なあクレア」
「うん、私頼んでくる」
ということでみんなで日替わり。
いいかげん食べようと思ったらタチアナとワンオーワンが来た。
さらに肉山盛りのレンも合流。
エディやイソノ中島がいないのが不安である。
「そう言えばの、皆に言わねばならんことがあった。共和国人の惑星じゃ。もう片方を攻略する」
当然だよね。
「もうゾーク側にも手札も物資も少なくなってきている。ここで一気に片をつける。共和国民を救助したらマザーがいる惑星サンクチュアリを奪還する」
「あのさ、聞いていい?」
「なんじゃ婿殿?」
「そもそも惑星サンクチュアリってなにがあるの?」
「なにもない。ただの国定公園じゃ。史跡はあるが帝都から遠すぎて観光客もおらん。じゃから士官学校生の操船実習の目的地になっておるのじゃ」
「そういやなんで?」
「壊してもかまわないからじゃ! 学生のために着陸でミスってもいいようにしてるのじゃ!」
身も蓋もねえな。
おそらく過去に何度も墜落したな……。
……待てよ。
実習中だったのにバリバリ敵と戦えてた俺たちって超能力抜きにしても優秀なんじゃね?
だからゾークに目をつけられたんじゃ。
公爵会とか文官とか侍従長グループの末端でも俺たちの成績くらいなら入手できる。
各地の士官学校生なんかのデータを一括で送ってたとしたら……。
あ、そういうわけね!
成績からデータ抽出してジェスターが在籍してる可能性を算定してたんだ!
こんなん避けようがないじゃん!
もうレオくん生きていけないよ~!!!
あれ……それならアリッサはどうやって探し出したんだろ?
うーんわからん!
とりあえず目の前のタスクを消化しておこう。
カトリ先生の稽古だけはスキップする方向で。
「お、レオ、そこにいやがったか! 午後は俺と遊ぶぞ!」
はいフラグ回収。




