第二百八十一話
作戦室を借りて会議。
京子ちゃんの新兵器発表会である。
なぜかいつメンとエディにイソノ&中島がいる。
「はい、新兵器の説明です」
京子ちゃんがいつになくハイテンションで武器の説明をしてくれた。
「ジェスターは観測されてる中で最強の能力者ですが、実態は個人の資質による制御不可能な能力で効果は不安定。おまけにレオくん本人のいい加減な性格も相まって安定的運用が課題となっていました」
「なんかひどくね?」
そう口にしたらみんなの視線が俺に突き刺さった。
はいそこ! ひそひそ話やめい!!!
すると嫁ちゃんが慈愛の眼差しを向けてくる。
「婿殿。どう考えても皆が正しいぞ。あきらめよ」
正しいらしい。オレカナシイ。
京子ちゃんは続ける。
「そこで武器によるアシストでレオくんに能力の方向性を与えることで、毎回使い捨てだった必殺技を再現することに成功しました!」
「うむ。素晴らしいぞ!」
つまりデスブラスターの増幅とか現実改変とか、俺が追い込まれたときにやってた数々の個人芸を任意で起こせるって事か。
あ、違うわ。
道具で再現だから物理現象として観測できるのだけか。
あれ……それなら……?
「えー……じゃあさ、タチアナの能力使っていつでもワープできる装置作れば技術革命起きるんじゃね?」
思わずつぶやいた言葉でその場の空気が変わった。
京子ちゃんの目はギラつき、嫁ちゃんやクレアが顔を青くする。
「い、い、い、今すぐじゃ! 今すぐ技術開発部に連絡を取るのじゃ!!!」
「つつつつつつ、作っちゃってもいいですよね! 今すぐ!」
京子ちゃんがヒャッハーした。
「待って! 京子ちゃん! いったんストップ!!! 使い方次第で帝国滅びかねないから! 待って!!!」
カオス! あまりにもカオス!
原因俺だけど!
すると妖精さんが呆れ声を出す。
「だめだこりゃ」
ですよねー。
つうわけで技術開発は対ゾークと並行してジェスター戦用装備の開発が急務になったのである。
やだ怖い。
でだ。
先の戦闘での負傷者である。
憲兵と俺の近衛隊にボコボコにされた兵士軽傷者多数。ナノマシンで対処。
俺、通風口から逃亡する際に突き破った蓋で頭を切る。
頭部治療用のホチキスだけは勘弁してくださいと泣いて頼んだら数針縫ってくれた。
イソノと中島、ケツにナイフ突き刺して重傷。痛み止めとナノマシンと縫合で対処。猫のポーズで部屋での療養中。
他の艦、イソノと中島のマネをせず手の平を切っただけ。ナノマシン入りの軟膏で対処。
カーフマン伯爵、戦闘機での緊急脱出時に肋骨骨折。あれ痛いんだよなあ……。死ぬよりはマシだけど。
他、トマス艦や諸侯の艦で戦闘時に転倒したり作業員が荷物の落下に巻き込まれるなどで骨折者数名が出た程度。
損害は恐ろしいまでに軽微であった。
あれだけバチバチにやってたのにリザルトは完全勝利と言える。
新兵器の開発も間に合ったし、いいことばかりである。
「それとこれ」
京子ちゃんが小さなものを手渡してくれた。
戦闘服のヘルメットに貼るタイプのデバイスだ。
「なにこれ」
「脳に軽微な苦痛を与えることでゾークの精神攻撃を軽減する装置です」
「……単語が不穏すぎん?」
「婿殿試してみるのじゃ」
「えー……」
「他の兵士で試して安全なのはわかってる。あとはジェスターや他の超能力者の反応を見るのじゃ」
「気が進まないけど了解ッス」
すでに用意されてたヘルメットにデバイスを貼り付ける。
今回は試作品でヘルメット内に内蔵させたいんだって。
「スイッチ入れますよ」
京子ちゃんがスイッチを入れる。
するとMRI受けてる時みたいな轟音が頭に直接響いた。
「うおおおおおおおおおおお! なんじゃこりゃああああああああああ!!!」
「うむ、かゆいじゃろ。その程度の……どうした婿殿!」
視界が真っ赤になった。
すると真っ赤な視界の片隅になにかが見えた。
ケーブルみたいな光る筋が見える。
俺はフラフラとその筋を追って部屋を出る。
「レオくん! 聞いて!」
妖精さんの声が聞こえた。
「あー……なんすか? 俺はあの筋を追わないと」
「いいから聞いて! いま何が見えてる?」
「ええっと……光の筋が……あの兵士の頭に伸びて……」
俺は談話室で話す兵士を指さした。
「京子ちゃん! スイッチ切って!」
「はい!」
いきなり赤かった視界が元に戻った。
俺はあわててヘルメットを脱いだ。
あー……なんか気持ち悪いなと思ったら鼻血出てやんの。
血がボタボタ垂れてる。
もしかして高血圧なのかな?
光の筋が伸びてた兵士と目が合った。
若くて小柄、中性的な顔立ちの兵士だ。
だけど髪型は一兵卒のアーミーカットだった。
若いな……新入隊員かな?
「あ、悪い。気にしないで……」
俺はごまかすようにヘラヘラしながら手を振った。
「う、うおおおおおおおおおおお!」
な、なに!?
ヘラヘラ笑ったのに相手が激高して突っ込んできた。
「ちょ、なんで!」
突っ込んできたのをよける。
すると今度はつかみかかってくる
しかたないから一発ぶん殴る。
相手はアゴを打ち抜かれて倒れた。
ふう、誰かティッシュ持ってないかな?
そこに嫁ちゃんたちがやって来る。
「な、なにがあった!? って血が!!!」
「それが俺にもなにがなんだか……あー、だれかティッシュ持ってない?」
クレアが持っていた。
血を拭き取る。
すると妖精さんが興奮したような声を出す。
「れ、レオくん! たいへん!!! その人、たぶん……女性型ゾークだ」
「あん?」
つまり……ゾークネットワークを見ちゃったってことぉ!?
「よ、嫁ちゃん……」
「まだスパイが潜入してたことも驚きだが……婿殿、わかるな?」
「わかりませぬ!」
元気に答えてみた。
なお本当に意味がわからない!
「研究区画に入院じゃ!!!」
「ふえーん!!!」
ということで強制休暇が発動したのである。
アタイ……暇に耐えられないの。




