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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第二十五話

 嫁の命令でケビンのところに行く。

 地下の営倉かと思ったら病院で入院してた。

 入るとケビンがいた。

 元から中性的だった顔は完全に女性に。

 体つきも変化していた。

 たいへん大きな果実が嫌でも目に入る。


「ええっと、たいへん大きくお育ちになったようで」


「いきなりセクハラか!」


「いやだってお前も男だったからわかるだろ!? なんか目が行っちゃうんだって! エロいことなんにも考えてないのに視線が吸い寄せられちゃうんだって!!!」


「わかるけどさ! 自分に向けられたらキモいよ!!!」


「だってさ! だってさ! 友だちがいきなり【ばいーん!】てなってたらびっくりするだろ!!!」


「死ね!!!」


 声を張り上げるとお互い満身創痍になった。

 なんだろう精神がガリガリ削られる。


「……胸はいったん置こうよ。お願いだから!」


「わかった」


 ……無言。

 何言っていいかわからねえや。


「話してくれないかな。間がもたないよ」


「では……でさー、これからどうするよ?」


「ぼくは君の所有物だろ? 好きにすればいい」


「好きにってなによ?」


「実験動物にするなり。胸を弄ぶなり?」


「しねえよバカ。おまえさー、俺はこれから学校の連中とこの惑星を統治しなきゃならんのよ。いくら裏切者でもさ、友だちを痛めつけるような頭おかしいヤツに誰がついていくのよ? 次は俺の番だわって不和の種ばらまくようなもんだわ。いいか、俺たちは軍隊と仲良しサークルの中間でバランス取ってる組織なの。内部統制厳しくしたらすぐに崩壊するわ。これ真面目にさー」


 これは嫁と話し合った。

 規模の大きな基地に合流して軍の一部にでもならないかぎりは仲良しサークルのままでいようと。

 規模の大きな軍が既存の武器を手放せない以上は合流できないけどね。

 とにかく、ケビンの扱い一つで俺たちは内部から崩壊する。

 だからどエロい展開などあり得ないのだ。

 というかメリッサとすらエロい展開がないのにあるわけねえだろ!!!


「俺さー、お前をゴードンとかフィンに預けようと思ってるんだわ。たしかお前あいつらと仲良かっただろ?」


「あいつらにリンチさせる気か?」


「バカだねー。これからいくらでも人型ゾークに出会うのにいちいち殺してられるかよ。お前がいて普通に扱ってたら寝返るヤツも多いだろ?」


 これも話し合った。

 いくら洗脳されててもゾークは金を出してくれるわけでもなければ、生活の面倒を見てくれるわけでもない。

 金や地位で裏切るヤツは多いはずだ。

 公立の士官学校で金のいらない安定した生活をしているケビンが例外中の例外なのだ。

 で、信用してもらうには仲間に人型ゾークがいて扱いが悪くなければいい。

 俺はケビン虐待を避けるという精神的な平穏を得るし、組織に不和の種をばらまくことを未然に防げる。

 ケビンは虐待されない。

 たとえ俺のハラワタぶちまけてもだ。

 心神(こう)弱で減刑だ。

 安全になるまで隔離させてもらう。

 人型ゾークからしたら決断の指標がわかりやすく、安心してゾークを裏切れる。

 メリットしかない。

 エロ漫画のキャラとかアレ、一種の超能力持ちだと思うのよ。

 ギャグとシリアスを行き来するシュレディンガーのジェスターな俺にはその才能はない。


「あえて言えば……」


「なんだよいきなり」


「人権停止されちゃったんで年金はあきらめてくれ。これだけはどうにもできん」


「ゾークが蜂起した時点で破綻してるだろ! バカなのかな!?」


「どうすんだよ……俺……国からもらってる金の半分軍人年金基金にぶち込んでた……」


 国立の士官学校なので俺たちには帝国から給料が出てる。

 俺はナイトライフを彩るデータの購入と年金基金にぶち込んでた。

 本当は株に直接投資したかったのだが、投資の年齢制限でできなかったのだ。


「そんなの知らないよ!」


 オレ悲シイ。

 俺がかわいそうなモンスターになってると乱暴に病室のドアが開く。


「ケビン! 無事か!!!」


 やたらバタ臭い顔とちょっと濃いめのアジア系の男子コンビが入ってきた。

 ゴードンとフィンである。


「おいレオ! ケビンになんかしやがったらぶち殺すぞ!!!」


「てめえ! 俺たちの親友(ダチ)になにかしやがったらぶち殺してやるからな!!!」


 熱い友情の発露だった。セリフだけは。

 目線はケビンのお胸に釘付けであった。

 露骨なまでに。

 セリフを聞いた瞬間はパァッとうれしそうな顔をしていたケビンの表情が絶対零度に変わっていく。


「あ、そのだな……育ったな」


「あの……その……ちょっと触らせて……」


「出てけ!!!」


 俺まで追い出された。

 結局ケビンは「あいつらの目が怖いから嫌」と俺に預けられることを選んだ。

 俺、今回の件に関しては何も悪くないと思うのよ。

 精神的に疲れ果てて家に戻ると嫁がくつろいでた。


「予想どおりの展開じゃ」


「もう何があったか知ってるのね」


「それにしてもすごい胸じゃのー♪」


「嫁ちゃん、本音言っていい?」


「なんじゃ?」


「胸凄くても野郎時代知ってる友だちと交尾できないから。男の子は繊細なのよ」


 胸に目が行ったのはただの反射作用である。

 触りたいとも思わない。

 ケビンの胸触るくらいならメリッサに頼んで触らせてもらう。

 エロい気分(そのとき)が来たら土下座も辞さない覚悟である。

 そういう意味ではフィンの野郎はド変態だろう。


「なんじゃー。面白くないのー」


 嫁は父親が鬼畜すぎるアレなので男を誤解してる。

 皇帝は男の目から見ても気持ち悪いからね。


「GPSも解除されたようだし。しばらくはケビンをからかって遊ぼうぞ。それじゃこれを見てくれ」


 嫁が何かデータを送ってきた。

 それを見て俺はため息をついた。


「なんでミストラル公爵家なんすか?」


 惑星ミストラル。

 ミストラル公爵家所有の惑星だ。

 もともと危険生物のいない天然の居住可能惑星である。

 テラフォーミングの必要のない惑星は本当に貴重だ。

 皇帝の親戚でもなけりゃもらえない。

 贅沢すぎて想像すらできないものだ。

 なおカミシロ侯爵領の近所である。

 ただ長年ガン無視され続けてる。

 代々のカミシロ侯爵家当主が必死にすり寄ろうとするからなめられるのだと思う。


「ゾークが攻め込んでおる。相当苦戦してるらしいぞ」


「助けても接収できないッスよ?」


 さすがに公爵家の惑星を乗っ取るのは不可能だ。

 それに義理もないところに攻め込んで犠牲者出したくない。

 俺には優先順位がある。仲間優先なのだ。


「それに関しては、いま通話を繋ぐぞ」


「なんだよヤケに遠回しだな」


 通話アプリが繋がった。

 作業用のツナギを着用したケモ耳の少女が映る。

 レンだ。

 彼女は整備班とブリッジを行ったり来たりしている。

 優秀である。

 うん、できることならなんでもお願いして。

 代わりにケモ耳触らせて。


「どうしたレン?」


「あ、あの! レオくん!」


「あーはい。なになに?」


「実家なの……」


「お、おう?」


 意味がわからない。

 ビースト種の公爵家はないはずだ。

 それに侯爵以上の姫を記載した姫名鑑にもレンは記載されてなかったと思う。

 最高位貴族はアイドル扱いなのだ!

 なお嫁は近親相姦を表沙汰にしたくない帝国によって本来は顔出しNGである。


庶子じゃ。非嫡出子ってやつかのう。今まで公爵家の話が出なかったのはそういうわけじゃ」


「あのね。お父様は、士官学校なら私を守ってくれるからって。そのね……お母様と私、大奥様にずっと命を狙われてたから」


 びきりと額の血管が脈打った。


「やる気出たじゃろ?」


 かなり。


「わかったレン。約束したな【お前らの実家も取り戻すって】」


「うん! 最高の機体を作るね!!!」


「頼んだわ!」


 通話終わり。


「嫁ちゃん。公爵家乗っ取る作戦考えて」


「もうできてる。というか、やることは一緒じゃ。ゾークをぶちのめせ! あとは任せるのじゃ」


「了解ッス」


 やる気出ちゃったぞー。

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― 新着の感想 ―
ケビンちゃんにはぜひ「元男の僕に言い寄られても気持ち悪いよね…」って言ってほしい
TS親友モノを嗜むのだポッター! あれは良いぞ・・・
面白い。人体実験こそSFの花。案外、ジェスターはゾークの遺伝子入り人間かも、ですね。ジェスター、道化師、人間でもゾークでもない半端者の笑われもの。子供も出来ないなら失敗作、という意味かもしれません。
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