第二百四十八話
会議でひたすら下を向いてやりすごし……なんていうのは許されるはずもない。
リモート会議で悪人面のおっさんたちに詰められる。
「つまり……周辺の惑星がゾークの基地になってるというわけだな?」
俺はうなずいた。(なにもわかってない)
すると参考人で参加してたアオイさんが俺に代わって発言してくれた。
「カニ、我らはフィロソーマと呼んでますが、彼らの成功例はごくわずかです。共和国側は成功した個体をクローンで増やして作戦に使用しています」
フィロソーマ?
幼生?
「アオイさん、ちょっと待って。今重要な話がポロッと出た。あいつら幼生なのぉッ!?」
「ええ、そうですよ。脱皮を繰り返すことでエイリアンの遺伝子がランダムな変化をもたらし、巨大になったり、分裂し続ける肉の塊になったり、サリエルのように知能が必要なら人型になったりします」
「待って、女性型は?」
ケビンが脱皮するなんて聞いたことねえぞ。
いや急激な変化はしたけどさ。
「人と交配が可能な個体はカニを経ません。女性型は人間という種を保ったまま強化できた成功例ですので。ただ、遺伝子の変化のせいで女性として生まれるものと女性に変化するものしかしませんが。初期型の私もワンオーワンもゾークネットワークで兵士に指示を与える能力しかありませんでしたから」
「その……つまり、今のゾークは人間ではないと?」
「フィロソーマやサリエルと人間は交配不可能ですので。そもそもサリエルは生殖機能が存在しないはずです」
ち●こないんかい!!!
叫びそうになったが我慢できた。俺偉い。
良く見ると軍のお偉いさんも我慢できたみたいだ。
目が合うとち●こやう●こだけで盛り上がった子ども時代みたいな眼差しをしていた。
ふふ、野郎ってのは何歳になってもバカで居続けられるのさ。
で、お仕事的に考えると、今まで戦ってきたカニはすべて同一個体と。
「ではそれまでの共和国市民はどうなったのだろうか?」
「そこで絶望の証言が重要になってきます。どうやら彼らはクローンで生態を維持することを選択し、旧型、つまり広く人類と考えられる個体のジェノサイドを画策しているようです」
「待てアオイ、そうなった女性型はどうなるのじゃ?」
嫁ちゃんが質問する。
「使い捨てです。おそらく帝国が滅亡したあとに皆殺しにするつもりだったのでしょう」
うん、実は共和国が帝国の被害者説が頭の隅にあったけど、実態はは昔の帝国なんか足元にも及ばない外道だったわ。
よーし、レオさん本気でボコっちゃおうっと。
「婿殿、やる気出たか?」
「出た出た。ボコボコにしてやるっす」
「なら問題ないな。皆の衆、正義は我らにあり! 共和国市民も救うのじゃ!」
嫁ちゃんも帝国の被害者だ。
【共和国、帝国の被害者説】が頭にチラついていたのね。
でも人類滅亡を企む悪の組織なのが政治的に確定したわけだ。
軍のおっさんたちもモチベーションに多少影響してたわけだ。
麻呂の所業を知ってるからねえ。
殺人犯だった侍従長と麻呂は論外として、公爵会は【共和国は被害者だったのだ! 正義は我らにあり!】が言えたんだけどそれもなくなった。
アマダの超絶ウルトラファインプレーからのホームランすげえ!
嫁ちゃんは帝国の被害者として前皇帝の悪行を処断する側にいられるし、公爵会は人類を滅ぼそうとした悪の組織である。
正義! 圧倒的正義よ!
【絶滅嫌でゴザル】が【俺たちこそが正義!!!】よ。
モチベーションが違うわ。
その日の会議はいったん終わり。
で、忙しい嫁ちゃんとイチャコラすることもなく、訓練に励み(カトリ師範に殺されかけて)就寝。
次の日、いやすげえわ。
疲れてたからニュース確認してなかったけど、正義は我らにありがトップニュースよ。
食堂でニュースのストリーミング放送を見てたらケビンが来た。
疲れた顔をしてる。
良く見たらニュースに礼服を着たケビンが映っていた。
「よっ有名人」
「やめてよー。もー、さー、うちの領地で女性型を匿ってたじゃない。だからボクがインタビュー受けることになっちゃってさ。これからも予定ギチギチにつまってるんだよ!」
このままグラビアデビューしそうだな。
「そういう顔やめて! 絶対にグラビアなんかやらないからね!」
「読心術か!?」
「顔に出てる!」
えー、ケビンでえっちな妄想なんてしないぞ。
虚無になるだけで。
虚無の顔でいると嫁ちゃんが来た。
「おー、ケビン。いいタイミングじゃ。グラビアの仕事が来」
「絶対イヤ!!!」
すると嫁ちゃんがケビンのおっぱいを鷲づかみにする。
「なぜじゃ! こんなに素晴らしい胸があるのに!!!」
「なんでキレるの!!! 意味わかんないよ!!!」
「妾がどれだけこれを欲してるかわかるか!!!」
あ、気にしてたんだ。
そりゃ俺だってあればいいとは思うけどさ、アマダみたいにおっぱい至上主義者じゃナイヨ。
「やだ!!! ボクはおとこ……だよね?」
「揺らぐのやめて」
俺が言うと男子たちが立ち上がる。
「もうどっちだっていいだろ!!!」
「そうだケビンは俺たちの仲間だ!!!」
言葉だけ見るといいセリフだ。
だけど目がエロかった。
どうしようもなく目がエロかった。
「目がイヤ」
ほらな、ケビンだって怒るわ。
アホどもが!
すると女子たちも立ち上がる。
「ケビンちゃんは女の子だよ!!!」
「そうだよ! ケビンちゃんをいじめるな!!!」
「グラビアなんか出なくていいよ!!!」
そういう女子たちも視線がケビンの大きなお胸に集中していた。
このおっぱい星人どもめが!!!
やれやれ。俺は巻き込まれる前にあっちに行こう。
と思ったらケビンに腕をつかまれた。
「そうだ! レオと約束あるんだ! じゃあね!」
「あ! 婿殿、ケビン、どこにいく!」
なんてことだ……しっかり巻き込まれたようだ。
こうなったらワンオーワンとタチアナに押しつけよう。
俺の完璧すぎる計画が発動したのだ。
あとケビンのグラビアって、前に見つけた大昔のグラビアと同じジャンルだよね?




