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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第二百四十二話

 奥に進んでいく。

 その前にポインティングしてドローンで爆薬を仕掛けておく。

 小惑星級のゾーク相手じゃ致命傷にはならないだろう。

 惑星の地下でなんぼ爆発させても割れないだろって話。

 でも嫌がらせで仕掛けておく。

 こういう細かい積み重ねが生存に繋がるのである。

 それに生き物だから痛がってくれるかもしれないしね。

 単細胞生物形態とは違って、こういう肉のやつは痛覚あると思うんだよね。

 甲殻類だって痛みの受容体あるし。

 用意した爆薬は地下施設を破壊するためのものだ。

 うまくいけば胃潰瘍みたいな痛みが襲うはずだ。

 名付けてアニサキス作戦!!!

 地獄の苦しみを味わわせてくれる!!!

 どうか尻から排出されませんように。


「ナパームまいておくね」


 ケビンから通信が入った。

 無自覚に容赦ない。

 でもケビンが頼りだ。

 デスブラスターじゃ外まで掘れないからね。

 こういう丸呑み系ってさ、窒息するようにできてたり、強力な胃液で溶かしたりしてちゃんと殺すような仕組みがあるんだよね。

 そうじゃない人間とかは基本的には口に入れる前に殺すわけでさ。

 つまり丸呑みした時点で負けなのな。

 人間をなめるなよ!!!

 ポインティングしながら奥に行く。

 すると部屋があった。

 ほんといきなりだ。

 肉の奥に部屋が出現である。

 中には共和国の軍服かな?

 幻覚で見たアオイさんの服とも違う。

 とにかく俺たちとは違う軍服を着た男がいた。

 ただサリエルや偽物部隊とは違う、なんと表現しようか……うん、ピゲットやヒューマさんと同じ俺たちの側。

 ちゃんと仕事ができるガチムチの軍人に見えた。


「降りろなんて言わん。少し話がしたいだけだ。ただの軍人の愚痴だ」


 なんだろう。

 一気に親近感がわいてきたぞ。


「500年生きてきたが、お前らと戦うことになった。マザーの命令だ」


「そりゃご愁傷様で。ここはなんだ?」


「惑星級ゾーク……と言いたいところだが旧型のものだ。主砲はあるが撃ったら崩壊する。お前らがこいつを無視して素通りしようとしたら後ろから撃つ予定だった」


 勘弁してくれよ。

 予想が大当たりじゃねえか。


「そりゃどうも。えっと、言われたとおり体育館裏来たんで帰っていい?」


「そうもいかんのだ。俺はここでお前と戦って死なないとならない」


「ゾークネットワーク切断して逃げりゃいいじゃん」


「それができたらクソ真面目に戦わないさ」


「どんな理由よ。金なら貸すぞ」


 人生の問題の9割は金で解決できる。

 嫌味でもなんでもなく。

 限界集落だった実家が金で蘇るのを見たから言える。


「はは、悪いが金じゃ解決しない。……人質だ。俺たちゾークの旧型、まだ人間と言える連中だ。ゾークの中じゃ差別されててな。俺が逃げたら皆殺しだ」


「外宇宙の技術がなんとかって世代と仲が悪いのか?」


「仲が悪いってもんじゃねえな。カニを見ただろ。まったく会話が成り立たねえ」


「マザーは?」


 マザーは原作では合理的な結論を出していた。

 だが……もう原作の時間軸ではない。


「マザーは定期的に世代交代する。外宇宙の技術でな。つい最近生まれ変わったマザーは外宇宙の技術の受け入れを拒否した俺たちが邪魔なのだろう」


「あんたが死んだら残った連中は皆殺しじゃないのか?」


「そればかりは祈るしかない。……いや俺は見捨てたのだな……同胞を。俺じゃマザーに対抗する術がない。俺はあれほど拒絶してた外宇宙の因子を受け入れてしまった。なにが絶望だ! ただの捨て駒でしかない。もう俺には大義名分も矜持もない存在だ。はは、500年の旅の結末がこんな終わり方だとはな……」


 た、戦いにくい……。

 かつてこれほど哀れな敵がいただろうか?

 いやこちらも人類の存亡を賭けてるのだから大義名分はある。

 ……今まで何の感情も抱いてなかったけど、一気にマザー嫌いになったわ。


「さあ、ジェスター。戦おうぞ。どちらが勝っても仲間は逃がしてやる。……どちらにせよ待っているのは絶滅だがな!」


 絶望の周りに砂が集まっていく。

 それは形になりカニの殻のように高質化していく。

 その形は殺戮の夜とそっくりになる。

 ただ違うのは向こうは大斧を持っていた。

 ポールアックスってやつかな。


「エディ、メリッサ、クレア、内緒で脱出方法考えてくれない? おっさんが約束守るかわからないから」


「了解」


 俺は剣を抜く。

 さーて長物相手。

 殺戮の夜の装甲はあるけど、喰らったら一発で壊れそうだな。

 まずは様子を見る……なんて思うかね!!!


「先手必勝じゃああああああああああッ!」


 後の先やるほどの技術があるわけでもなし。

 ああいうのはカトリ先生がやるものであって俺がやるものではない。

 だけど敵もさすがのもの。

 俺の剣をポールアックスで受け止める。


「嘘だろ! 神経反応力強化手術を受けた俺よりも速いだと!!!」


「俺も受けられるとは思わなかったっての!」


 カトリ先生ほどじゃない。

 でもピゲットよりも力が強い……って殺戮の夜のコピーだからか。

 厄介だな。

 絶望が距離を取る。

 だったらこいつを喰らえ!

 足に格納した拳銃を抜いてぶっ放す。


「ぬう!」


 ヒットしたけど斧で急所は守っていた。

 絶望は俺へ走ってくる。

 まずい!

 何度も撃ったが敵の勢いは止まらない。

 絶望が肩から俺に体当たりをぶちかました。

 俺は吹っ飛ばされてゴロゴロ転がる。


「冗談じゃねえ! 自分から飛びやがったな!!! この化け物やろう!!!」


 あ、バレた。

 でもね、戦術は完成したのよ。


「ケビン! 爆破! 嫁ちゃん! ぶっ放して! もう情報は得た!!!」


 ふはははははははははー!

 まともに戦うわけねえだろ!!!


「クレア! 脱出経路は!?」


「たぶんこっち!」


 俺は立ち上がってスタコラサッサと逃げる。

 人質取られてるんだからここは撤退。

 なあに俺に一撃与えたんだ。

 皆殺しはねえだろ。

 時間を稼ぐ。

 感謝しろよおっさん!!!

 俺はな!

 敵だろうが味方だろうが鬱展開が嫌いなんじゃボケええええええええッ!!!


「さーらーばーだー!!!」


「ま、待て! まてえええええええええええええッ!!!」


 ケビンの爆弾が爆発した。

 悲鳴が上がり、俺たちは口から排出……ちょっと方向違ってないですか?

 ケツ! ケツから出るのは嫌ああああああああああッ!!!

 なんか体液的なものに流された。

 アニサキス作戦成功。

 結論から言うとケツからではなかった。

 惑星級の巨大な目から、要するに涙として排出された。

 あれよ、むせて目から飲んでたやつが出るやつ。

 よかった。ケツからジェット排出じゃなくて。

 俺の完全勝利である。

 さーてここで今回のお土産だ。

 敵は内紛を抱えている。

 旧型の人間という自認がある連中を新型が抹殺しようとしてる。

 それを俺たちが知ったことは大きい。

 有史以来、血で血を洗う内紛繰り返した我らはそういうのは得意なのだよ!!!

 そして……向こうもそれがわかっていたようだ。

 音声パケットに偽装されたファイルが忍び込ませてあった。

 テキストファイルだ。


【絶望は8体いる】


 さーて、これからどうしようかなっと。

 嫁ちゃんの砲撃で小惑星型のゾークが消滅するのが見えた。

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― 新着の感想 ―
目から涙で……ミクロの決死圏ですね
「レオ・カミシロお前への贈り物を考えていた。絶望を贈ろうか」とか言い出すロン毛の細マッチョが出てくると思ったらガチムチ軍人だったでござる ところでおそらく旧型ゾークによって帝国が弱体化していただろう…
そういうの俺らの得意分野だせ!人間の悪意舐めるなよ!…みたいなノリになっているけど、帝国が技術レベルの割に食えるけど田舎みたいな土地が多かったりしたの数割はゾークの工作のせいなのである 今まで一方的に…
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