第二百四十話
俺たち帝国側の識別信号とは違う通信が入ってきた。
海賊でもない。
サリエルもアオイさんも帝国の通信プロトコルで帝国の識別信号を使っていた。
「妖精さん、音声通話からクラッキングされるかも。警戒お願い!」
「はーい!」
音声通信のパケットにノイズに偽装して実行可能なスクリプトを隠して送る。
それを任意のタイミングで実行して人型戦闘機をシステムダウン。
妖精さんががんばっても復旧までに一時間はかかる。
その間に反転攻勢。
俺だったらそうやって盤面をひっくり返す。
だけど俺たちには妖精さんがいる。
可能性に気づいてさえいれば心配する必要はない。
そんな古典的な手に引っかかるか!!!
「用意できましたよー。サンドボックス内で再生しますね」
「へーい」
音声が流れてくる。
「こちら共和国遊撃隊所属ホアキン中尉だ。レオ・カミシロ、お前と話をしたかった」
「俺は話すことなんかないのだが」
もはやゾークと話あうことなどない。
だって話通じないもん。
「俺は貴様と戦ってみたかった!」
な、話通じないだろ?
会話のキャッチボールできないだろ?
だから嫌なんだよ。こいつらと話すの。
無駄に疲れる。
「戦いたいが……その前に貴様を勧誘しろと命令されている。どうだ? 共和国に寝返らないか?」
「カニになりたくねえからヤダ。それに俺、これでも妻帯者なんだよね。しかも嫁ちゃんは帝国の皇帝陛下。裏切るとかありえねえわ」
そもそも裏切るメリットがない。
だって共和国にはおっぱいもお尻もないもの。
あるのは元おっさんの女性型ゾークだけじゃねえか!
ぶち殺すぞ!!!(思い出し激怒)
「はは……即決だね。でも知ってるよ。お前はただ人間に生まれたから人間の味方をしてるだけの化け物じゃないか!!!」
今まで言われた罵倒の中でも最悪のものをぶつけられたよ。
なにその言い分!
「ひっでえ! なあ、みんな! そんなことないよな!?」
「あ、うん、隊長は……たぶん化け物じゃないと……思う……よ?」
なんでメリッサ自信がないの?
ねえ、なんで?
「あ、うん、レオくんは……化け物……だと困るかな。あは、あはははは……」
妖精さん……不安になる言い方やめてくれないかな?
「う、うん、レオは……たぶん……人間だと……思うよ?」
クレアさん……なぜ自信がないのでおじゃる?
「あー……うん、ほらレオだし……」
ケビン! お前まで!!!
「だ、旦那様は……に、人間ですよ!」
なぜだー!
レンまで俺が人間じゃないとか思ってるのか!
「そもそもレオは人間じゃないと思うぞ」
エディ……あとで体育館裏な。
「む……婿殿は……婿殿じゃし?」
嫁ちゃんまでー!!!
みんなひどい!!!
俺は人間だっつーの!
なしてみんな自信なさげなのよ!!!
もういいもん!
こいつらぶっ殺すもん。
俺を人間じゃないとかの火元皆殺しにするもん!!!
「ははははは! レオ・カミシロ! 仲間にも見捨てられたか! さあ我らと共に世界を統べようぞ! 貴様は化け物なのだからぐはぁッ!!!」
俺はホアキンを一刀両断にした。
なんだカニの殻だからもうちょっと硬いかと思ったらサクサクじゃないですかー。
「な、見えなかった!」
「なんだ今のは!?」
「あんなに速いなんて聞いてないぞ!!!」
俺は剣を血振りすると遊撃隊の連中に剣を向ける。
「オレ、オマエラ、ブチ殺ス」
「こ、殺せえええええ!!!」
遊撃隊が突撃してきた。
カトリ先生との地獄のような特訓で俺の戦闘力は底上げされていた。
そこに怒りのバーサークモードである。
「あーあ、うちのバカ殿キレちゃったよ」
俺のバーサークモードを見てエディも参戦。
「あーあ、怒らせちゃって。隊長って銀河最強の一角なのに……」
メリッサも参戦した。
というわけで安心してジェノサイド開始。
地獄を見せてくれる!!!
敵はデスブラスターを発射。
だが当たるはずがない。
我、数百体のリニアブレイザーを一度に相手できる男ぞ!!!(勝てたわけではない)
「は、速い!!! デスブラスターが当たらなぎゃばあああああああッ!!!」
まずは一体!
胴を一閃。
「ちぇ、チェーンソーで斬りかかれ! や、ヤツの動きを止めろ!!!」
宇宙空間なので薩摩殺法は難しい。
帝国剣術で勝負だ。
慣性で飛んでいく、ブレーキ? いらねえ!
「う、うわあああああああああああ来るなああああああ!!!」
首を刈る。
メリッサもエディもサクッと切り捨てていく。
「なんだ! やわらかいじゃん! カニの装甲は実現できなかったか~」
「違う! 俺たちの腕が飛躍的に上がったんだ!!! レオ! そのまま斬って斬って斬りまくれ!!!」
エディとメリッサが好きなことを言ってるなー。
俺だってたいへんなのよー。
ほら今だって。
二体の敵が前後から挟むように移動してくる。
なんで、俺の後ろから迫ってくるやつの頭をつかんで後ろに回り込んで背中からバッサリ。
前から来たやつの剣をパリングしようと思ったら頭が吹っ飛んだ。
おっと、レンの狙撃か。
「ば、化け物があああああああああッ!!!」
人間やめたゾークに化け物呼ばわりされる剛速球の理不尽。
でも関係ないもんね!
どうせお前らはここでデッドエンドだ。
敵が突っ込んできた。
もう作戦も戦術もクソもないのだろう。
デスブラスターを撃ってくるがひょいっとよける。
当たりませんよー。
チェーンソーを振るってきたので手を取って剣で腕ごと切断。
そのままチェーンソーを突き刺す。
「あーあ、バカだねえ。カニの大軍の方がマシだったわ」
知性も恐怖も何にもなくやたら硬い。
それだけでカニどもは脅威だ。
なのに俺たちの偽物作って、パイロットまで用意して。
そりゃ弱くなるわけよ。
だって俺たちが有人パイロット続けてる理由なんて実にしょうもない話だ。
ハッキング対策なのだ。
有人パイロットの方が安定して戦えるのだ。
別に有人パイロットが優秀なわけではない。
そしてワンオーワンとケビンから通信が入る。
「少佐殿! なんかあそこ変なのであります!!!」
「なにかいるよ!!!」
それは岩のような小惑星だった。
マザーかはわからないけど指揮官がいるのだろうな!




