第二百三十八話
とんでもない数のゾークが押し寄せる。
「自爆ドローン展開!」
ケビンのドローンが爆発していく。
ケビンのドローンの爆薬には例のガスをカニの体内で爆発させる弾を入れてある。
うまく体内にめり込めば大ダメージを与えられる。
毒の方は無駄になりそうで使えなかった。
ドローンの爆発を浴びた数匹のカニが中から爆発した。
効果あり!
別に一発で殺せなくてもいい。
ここは宇宙空間だ。
殻さえはがせればすぐに動けなくなる。
俺たちだって宇宙対応の生き物じゃねえ。
でもカニだって同じだ。
一皮剥ければ行動不能だ。
でもさ、そういう損耗を無視して突撃してくる場合ってどうすればいいかな?
爆発をものともせずにカニは進軍してくる。
「撃て!!!」
俺の合図で攻撃開始。
まずは浮遊台座に取り付けられた機関銃を掃射。
それと末松さんをはじめとするミサイル隊が攻撃を開始する。
ここまでは予想通り。
シミュレーションの通りだ。
「ネットミサイル発射!!!」
人型戦闘機が一斉にミサイルを発射。
ザリガニの駆除には網じゃああああああああ!!!
当たり前と言えば当たり前。
この戦いのルールを考えればわかるだろう。
これは領域確保ゲームである。
敵を多く倒すことなど二の次だ。
とにかく広い領域を確保した方が勝ち。
狭いところに追いやられた方が負けるのだ。
数の暴力なんぞ紀元前には攻略されてるんだよ!
だからこんなしょうもない手も使う。
ネットは合金製。
有刺鉄線みたいに絡んで動きを封じるものだ。
ふははははは!!!
仲間が邪魔になって動けねえだろ!!!
「新型ゾークから熱反応!」
ケビンが叫んだ。
はい?
一匹のカニが口を開けるのが見えた。
あ、まずい!
そう思った次の瞬間、カニの口からプラズマ弾が発射された。
その弾は前戦で指揮してたエディを捕らえ……。
「とのおおおおおおおおおおおおおッ!!!」
信じられないくらいの速さで末松さんが盾を構えて射線に入った。
普段のモタモタ走行を見たらありえないスピードだった。
末松さんは盾で弾を受ける。
「ぬおおおお! と、止まらない!!!」
い、いやスラスターで減速……ってツッコむ前に末松さんは慣性でどこかに飛んでいった。
……お、おう。
ま、まあ位置確認信号システムあるしそのうち見つかるだろ。
あのおっさん……いいタイミングで退場しやがったな。
そして新型のカニどもが一斉に口を開く。
「ぜ……全軍攻撃ぃッ!!!」
エディの合図で再度攻撃開始。
まー、こういうのは攻略がわかりやすい。
口の中が弱点だろう。
「口の中を攻撃しろ!!!」
誰ともなく命令した。
だってどう考えても弱点じゃん!
だからみんなで一斉射撃。
だけどさ、そんな見え見えの弱点があるはずもなく。
撃った瞬間、カニがふくらんだ。
「熱反応! 退避!!!」
ケビンの声と同時に網に絡まっていたカニどもが一斉に爆破した。
他のカニにも誘爆する。
エディたち前戦で戦っていた機体が爆発で飛ばされた。
エディは化け物じみた反射神経で盾を展開。
衝撃を最小に抑えた。
だけどすべての人型戦闘機乗りがそれをできたわけじゃない。
エディ隊のほとんどが戦闘不能に陥っていた。
ほとんどの機体が手足がもげてた。
死者はなしと。
全体としての被害は微弱。
救助しながら作戦続行。
「エディ隊を救助しろ! 元ハウンド隊でここはしのぐ!!!」
もうね俺たちしかいないのよ!
この戦いに対応した反射神経の持ち主は。
それにさ、カニちゃんどもさ!
今の爆発で明らかに数減ってるしね!
ゾークどもにとっても自爆は隠し球だったってことよ!
ヒャッハー!
エディは部下の避難をするために戦う。
カニが爆発するのさえわかってれば誘導して撃つ。
残ったミサイル隊もネットミサイルを撃って足止めする。
避難が完了後、エディが俺の隊に合流。
「メリッサ! 俺が出る! 行くぞ! レンは援護! 嫁ちゃんは待機! たぶんこの後のウェーブがある!」
俺がそう言うとメリッサとエディがついてくる。
結局ね。
俺が指揮するのが間違ってるのよ。
俺は一番前で戦って味方を奮起する役。
そういうタイプの武将ユニットね。
俺が後ろにいるのが間違ってるのよ。
俺は浮遊台座について前に出る。
浮遊台座は固定台座の宇宙版。
宇宙空間だから固定しないで立ち乗りバイク気分で使う。
銃は軽機関銃。
軽なんて言ってるけど、もはやなにと比較したのかは不明である。
ほぼ戦艦の銃座である。
弾は実弾。
もちろん毒入りのものだ。
「ヒャッハー!!!」
悪役みたいな雄叫びを上げながら銃を撃ちまくる。
後ろには友軍がいる。
対戦FPSみたいに後ろから撃たれることはない……よね?
カニどもは次々と動かなく……あ、口が光った!
「全力退避!!!」
はっはっはっはっはっは!!!
そんな見え透いた爆発など喰らわねえ!!!
俺はひょいっとよける。
カニが誘爆していく。
メリッサたちも浮遊台座について銃を撃ちまくっていた。
兵がビビる作業を指揮官が代わりにやる!
頭おかしくて結構!!!
恐怖を知らんゾークに人間の恐ろしさを刻み込んでくれる!!!
相互理解とはお互いぶち殺せる距離まで近づいてから始まるものなのさ!!!
「こちらイソノ!!! てめえなにやってんだコラ! 頭が前戦に突撃か!? ああコラ!!!」
イソノはキレてたが、そんなイソノだって浮遊台座でヒャッハー中だ。
「こちら中島! レオ! てめえ帰ったら殴らせろ!!! なーにが【今回は大軍を指揮するだけだから】じゃ! いつもと同じじゃねえか!!!」
プークスクス!
ざーこざーこ雑魚お兄ちゃん!
(俺の心のメスガキレベルが上がった)
「レオ! ぼくも支援する!!!」
ケビンのドローンも撃ちまくる。
「こちらレイブン! とのぉ! なんで俺たちを待たずに行くんですか!!!」
エディ隊を救助してたレイブンが慌ててやって来た。
よーし戦術成功っと。
【無茶するバカ殿に気を取られて絶望ちゃんがどこかに行っちゃうの術】である。
ふははははは!
敵も味方も俺に振り回されるがいい!!!




