第二百三十七話
普段、食料を運ぶのに使われてるモノレールだけど人を乗せることもできる。
俺もエディたちと人型戦闘機用の飛行甲板へ向かう。
自機に乗り込んでカタパルトで射出される。
大きな戦艦はこういう大型の装備がそろってるがいいよね。
エディの専用機【雪原の悪魔】が出撃する。
エディの二つ名が機体名になった。
本人が死ぬほど嫌がっていたのが印象的である。
カラーが白で目立つ。
近距離でも強い中距離タイプである。
【隊長、出撃するよ!】
未だに俺を【隊長】と呼ぶメリッサの専用機【護国の神刀】、近距離特化型だ。
もはや銃を持つのもめんどうくさいって感じで頭にマシンガン仕込んでる。
メリッサはサクッと出撃した。
クレアの【光翼の神拳】も出撃準備を終えた。
近距離特化と見せかけた万能型だ。
両手のナックルにトゲが生えてる。
やっぱり近距離特化型だよね?
サクッと出撃。
次にレン。
レンの機体は【沈黙の魔弾】、遠距離特化型だ。
「旦那様。お先に失礼します」
レンも出撃する。
そして……。
「とのぉ~ッ!!!」
がったんがったんと雑な操作でヨタヨタカタパルトにつくのはエディのとこの末松さんだ。
明らかなギャグキャラなのにジェスターじゃないという謎人物だ。
操作の難しい専用機ではなく標準型のカスタム機だ。
全身をカバーするもの凄く大きな盾に全身につけたミサイルの山。
機動性は捨てて装甲ゴテ盛り&大盾での防御、操縦技術はミサイルでカバーみたいなピーキー機体である。
最近思うのだが……末松さんって評価が難しいタイプの天才なんじゃないかって思う。
操縦技術がないのちゃんと理解して自分が活躍できる機体のカスタマイズを選択してる。
実際、戦闘では毎回活躍してるし給料分以上は戦ってくれる。
ただ評価が難しいだけだ。
あのおっさんを扱えてるエディもヤバいよね……。
あ、コケた。
なんとか末松さんも射出される。
俺も行くか。
【殺戮の夜】でカタパルトに足をかける。
「カミシロ少佐、射出します」
「了解」
今回は剣と新型アサルトライフル。
宇宙空間でも使えるものだ。
弾頭の毒を注入する仕様だけど、要するにこれさ、ほぼほぼミサイルだよね。
毒は女性型ゾークの皆さんの善意で提供してもらった細胞を培養したもので実験したら効果あったんだよね。
それだけだと確実性がないので体内に圧縮ガスを注入して中から爆発させる弾も支給された。
かなりの非人道兵器である。
カタパルトのスラスターが火を噴く。
次の瞬間、一気に加速して俺は射出された。
後ろからエッジの機体もやって来る。
エッジの機体は【煉獄の紅】。
エッジは試験で強力な発火能力者と判明した。
やはり主人公は火属性なのよ。
決して【主観依存の万単位バフ】とか【嫌な出来事をギャグに変換する】とかじゃないの!
アリッサもやってきた。
アリッサは俺と同型機【殺戮の夜カスタム】だ。
ジェスターのデータがなさすぎて俺を基準にするしかなかった結果だ。
で、俺は少し前進すると待機。
レイブンくんとカミシロ大公親衛隊を待つ。
本当は俺より先に出なきゃならんのだけど、俺の方がどうしても機体の起動が速いのでこうなる。
俺に遅れること数分、レイブンたちが来た。
「殿!」
「はいはーい、遠足行きますよ~」
「……」
……スルーされた。
一人くらいツッコミ入れてくれてもいいと思うのよ。
みんなくそ真面目だな~。
近衛隊のみなさんは標準型のカスタム機だ。
全部で100機。
これだけ人型戦闘機をそろえてるのは今や我がカミシロ大公家くらいだろう。
公爵会滅びたしね。
レイブンくんは殺戮の夜のシミュレーターに挑戦してたが今回は断念。
マニュアル操作が難しくて数値がよくなかった。
さて今回は総力戦である。
前回の遠征で足手まといは全滅した。
今回こそはいけるんじゃないかな。
そう思いたい。
元海賊領の戦闘機が出撃するのが見えた。
彼らもせっかく市民として認められて、ありとあらゆる支援を帝国から受けられるようになったのだ。
それを手放すなんてできない。
志願兵も多く士気も高い。
向こうにはヒューマさんがいるのだ。
活躍してくれるだろう。
元海賊領の市民たちは俺たちが考えてるより必死なのかもしれない。
大野のおっさんたち子爵男爵軍は年季の入った軍艦で参戦。
海賊との戦闘経験が豊富な領主たちだ。
強いよ。
トマスとサイラスの艦隊が俺たちを追い越した。
身分を隠したサイラスはともかくトマスはもう後がない。
俺たちは前回の遠征失敗の原因をトマスだと考えてないけど周りは違う。
トマスはもう失敗できない。
こりゃ俺も負けてられんわ。
「全軍出発進行! ゾークと遭遇したら事前のシミュレーション通りに戦闘。やばかったら各自逃げろ。俺より自分の命優先な。大丈夫大丈夫。俺は死なないから」
ヘラヘラ笑いながら予定を説明。
俺たちが進むと、偵察操作ドローンの映像が送られてきた。
ケビンから通信が入る。
「ゾーク確認。戦闘に備えて。まずは自爆ドローンを突撃させる」
「へーい」
俺の間の抜けた返事を合図に攻撃が開始された。
自爆ドローンの爆発でゾークが傷ついていく。
「……レオ、まずい。強化型みたい。戦車並に頑丈だよ」
ですよねー!!!
そりゃ総力戦ですもんね!
強いのも来ますよね!
もちろん毒の弾頭はこの事態を想定していた。
効果はあるはずだ。
「ゾーク機雷地帯に突入! ああああ! あいつら仲間の屍を越えて行ってる!」
ですよねー!!!
やると思った!!!
数の暴力強い!!!
「行くぞ!」
ま、要するに今回の戦闘はゾークマザービビらせゲームである。
敵のウェーブを凌ぐとかじゃない。
片っ端からぶち殺して人間の恐ろしさを叩き込む。
ゾークマザーをわからせるしかないのだ。
我が隊が作戦位置に到着。
しばらく待つと機雷の爆発を真正面から受けたカニの大群がやって来た。
「撃てえええええええええッ!」
俺の合図で一斉射撃が始まった。
最初はおそらくレンの一撃だった。
その弾丸はカニに命中。
貫通はしない。体内に入ってで毒をまき散らす。
カニは痙攣するとすぐに動かなくなった。
弾は強化型に効果があったのだ。
「新型兵器! 効果あったぞ!!!」
「うおおおおおおおおおおお!」
俺たちは吠えた。
だけどさ、ちょっとさ、数多くない?
どう考えてもおかしい数の敵が押し寄せていた。
戦略もクソもない。
ゾークは俺たちを蹂躙しようとしていた。




