第二百三十五話
アオイさんの病室に行く。
今回は一人だ……ってレイブンくんいるのね。
「ただいま戻りました。殿には入院中お守りできず申し訳なく……」
やめて。小型犬みたいな顔で俺を見るのやめて。
「いいのいいの。名誉の負傷だって。はっはっは!」
レイブンくん、実は折れた肋骨が内臓に刺さっちゃって入院が長引いちゃったのである。
「まだ味方って認識が薄いからバフが中途半端になった」と専門チームの分析を嫁ちゃんに聞かされた。
いやーシャレにならねえわ。
なんていうか俺の主観でバフがかかるかどうかが決まるのって怖いわ。
しかも俺が「だうーん」ってテンション下がってると効果が悪くなるそうだ。
そう考えるとアマダの野郎って結構危ない橋渡ってたんじゃ?
それを嫁ちゃんに聞いたら「初対面から友だち扱いしてたじゃろ」って言われた。
そうか? そうなのか?
その自覚はない。
やはり俺の能力は不安定である。
で、護衛の兵士に伝えてからアオイさんの病室に入る。
アオイさんは軍のバッグに服をつめてる最中だった。
「少佐。来てくれましたか」
「退院ですか?」
「ええ、客室に移動になりました」
近況報告してるとケビンがやってきた。
ナース服である。
もはやケビンは女性の格好になんの抵抗もなくなってる。
おもしろいので指摘しないでおこう。
「はいアオイさん。退院の書類。書いてくださいね」
「ありがとうございます」
そういや共和国はずいぶん前に分かれた文明なのに普通に日本語通じるな。
住民の管理がいいかげんな惑星だと日本語が変質しすぎて標準語が通じないところもあるのに。
世の中には【漢字の読み書きできるのは村長だけでいいや】みたいな恐ろしい領主もいるもんな。
……気にしないでおこう。
書類に署名するとアオイさんは俺を見た。
「少佐、情報を開示するかどうか迷いましたが。あなたがたは信用に値すると判断しました。このファイルをご覧下さい」
中を見る。
化学分野のレポートのようだ。
うん! わからん!!!
いや職業学校生ってどうしても普通科と比べて基礎教科の知識が弱いのよ。
そう、俺の場合、電機系の工兵の課程を受けたから化学ぜんぜんわからない。(パイロットになりたければ電気4単位必要)
誰か化学戦の課程受けたやつ連れてくればよかった……。
「なにこれ? 毒かな?」
あ、いたわ。
化学戦の授業受けてたケビンがいたわ。(衛生兵を希望する場合こっちも4単位必要だったはず)
「対ゾーク用の神経毒です」
……おう。
思ったよりヤバイの来たな。
「えーっと、俺だけだと判断に困るわ。嫁ちゃんと妖精さんに投げていい?」
「そうやってちゃんと許可を取ろうとするところが信用できると判断しました。どうぞご審議ください」
というわけで嫁ちゃんと妖精さんににファイルを投げる。
妖精さんはいきなり出現。
嫁ちゃんは全速力で走ってきた。
「ぜえ……ぜえ……はあ……なんていうものを送ってきた……のじゃ……」
嫁ちゃんは肩で息をしてる。
「そうですよ! なんですかこれ!!! もうレオくんは! そういうとこやぞ!!!」
妖精さんにも怒られる。
俺は悪くないと思うのよ。
「アオイ、いいのか? こんなものを我らに渡して……」
「ええ、あなた方は信用できます。この判断で我らが絶滅したとしたら……それは運命でしょう」
運命って言われても、もう絶滅させるしかないんだよね。
あまりにも話が通じなすぎて。
いやさ、これが【ゾークのために○○って領地を割譲せよ】とか【賠償しろ】とか【謝罪しろ】なら交渉できるのよ。
目的がハッキリしてるから。
でも実際は問答無用で殺しに来てるわけ。
サリエルはギリギリ話が通じてたけど、それでも交渉できるレベルじゃなかった。
だから殺し合うしかないわけ。
でもこちらが強大な力を持てば……もしかすると交渉の余地があるかもしれない。
……ゾークちゃん恨み買いすぎてて俺たちでも世論を説得するの無理ゲー疑惑あるけどね。
あ、でも女性型のみなさんやワンオーワンとかになにかするつもりないわ。
そう考えるとゾーク自身は絶滅したように見えても生き残るのか。
それにしても原作にない武器が出てくるなー。
こんなの最強じゃん。
「……ただし現在のゾークに効果があるかはわかりません。さらに言えば毒ガスなどでは効果ありません。弾丸にして直接内部に注入するしかありません」
「あ、なるほど。そういうことね」
都合のいい兵器ではないわけだ。
うーん難しい。
「研究所にデータ送りますね~」
「ああ、頼んだ。妾はレイモンドに法務関係者の会議を招集するように命じておく」
ゾークは人かどうかが曖昧だ。
だから法的にに詰めるのだろう。
ちゃんと話し合いして結論出しておけば後で問題になっても安心だ。
まー、問題にすらならないだろうけど。
レイモンドさんはこれからデスマーチ確定と。
本人ヤバいくらい有能だからなあ……。
もはや軍のバックヤード業務の総責任者認定されてる。
戦争終わったら軍の二番目くらいの地位に収まるんだろうなと思う。
がんばって!
「ボクら……遠いとこまで来ちゃったね」
「ほんとそれ!!!」
ケビンに心の底から同意した。
こうして確実に総力戦の準備が整っていった。
惑星シナガワを基地にして準備を整える。
無数のAI制御式の可動機雷を設置する。
敵味方を自動判別して敵を爆破する機雷だ。
人工知能によって最適なルートを割り出して自動巡回する。
かなり厄介な兵器である。
問題はデブリだらけになることだろう。
大野のおっさんが子爵男爵を率いて到着。
ニーナさんのお姉ちゃんのリリィもやって来る。
超有能下士官であるヒューマさんもいた。
いやさ、下士官が配置されるとヒューマさんの有能さがわかっちゃってさ。
とにかくである。
仲間が多いことは基本的にはいいことである。
これでとうとうゾークとの戦争も終わるのか。(フラグ)
うん、俺……この戦争が終わったら……どエロい青春を送るんだ……。(フラグ)




