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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第二百三十三話

 アオイさんの容態が安定してからというもの、ありとあらゆる研究機関がルナちゃんに接触してきた。

 たしかに実質的な不老不死だ。

 権力者や実業家からしたら夢のような話だろう。

 でもヴェロニカちゃんの見解は違う。


「妾は帝国が滅びるところも宇宙が滅びるところも見たくない。長老を見てればわかるが過剰な長寿など地獄じゃ。そこそこでいい。ひ孫の顔を見るくらいでいいじゃろ。不老不死の研究はしてもいいが普及には反対じゃ」


 本当にその通りだ。

 死ぬのは怖いけど……ルナちゃんみたいに肉体をコンピューターの部品にされたり、長老様のようにただ生かされてるだけの方がずっと怖い。

 当の本人であるルナちゃんも「戦争終わったら肉体再建して適当に生きて死ぬ予定ですよ~」だそうだ。

 マンガ、アニメ、ゲームには飽きてないけど、政治や終わりのない人生には飽きてるようだ。


「一度は子育てしてみたいですねー」


 だそうである。

 たとえ神に近い存在であっても人間という枠での幸福の追求に落ち着くようだ。

 神に近いと言えば婚約者のレオである。


「ねえレオ。不老不死になりたい?」


「不老はいいけど不死はいらねえかなぁ」


「不老はほしいの?」


「ほら、俺、よく水飲むじゃん。……実は親父が尿路結石持ちでさ……おっさんが悲鳴を上げるほどの苦しみは味わいたくないなと……普段から水飲むように気を付けて……ほら若いほど発症率低いし……」


 実に切実な話だった。

 それにしてもゾーク戦争の英雄が尿路結石を恐れるとは……。

 この戦争の真の勝利者は体内にできる石かもしれない。

 数日後、アオイさんの病室に遊びに行けるようになった。

 なにぶん魂の移動なんて、研究者でも初めての経験だ。

 退院はまだらしい。

 レオとお見舞いに行く。

 アオイさんの病室は女性兵士が護衛していた。

 これは不審者からアオイさんを守るためじゃない。

 研究者からアオイさんを守る人選だ。

 なので部屋の中にはケビンちゃんなどの看護師資格を持った人員と医師が常駐している。

 私たちは内なる敵との戦いの経験が抱負だ。

 だから常に最悪の事態を想定してる。

 ルナちゃんも不老不死を望んだ皇帝と研究者に生きたまま体を切り刻まれてる。

 今のアオイさんの境遇は他人事じゃないだろう。

 だからルナちゃんも常に監視してる。

 とは言っても、すべての研究者に


「もしアオイさんに危害を加えようとしたら、次に容器の中の脳になるのはあなた方かもしれませんよ」


 と警告してる。

 よほどおかしい人物でなければ大丈夫だと思うんだけど。

 それも甘いのかもしれない。

 容器の中の脳になりたい人もいるみたいだし……。

 私には理解できない。

 レオや私は顔が知られている。

 それでも入室手続きはきちんと行う。

 中に入るとケビンちゃんがいた。


「こんにちわクレアちゃん。レオもね」


「ちーっすケビン。おつかれー」


「アオイさん。レオとクレアちゃん来たよ」


「いつもどうも」


「はい、これ、どうぞ」


 お菓子と果物の詰め合わせを渡す。

 刃物の持ち込みが禁止なのでカットフルーツだ。


「ありがとうございます!」


 見た目、味ともに自信がある。

 実家が皇帝陛下御用達の高級スーパーとみなされた自慢の商品だ。

 生の果物は一時廃れたことがあるらしいけど、栽培できない惑星が多い今では高級品だ。

 水耕栽培もできるものとできないもの。

 美味しくできるものと美味しくないものがあるしね。

 缶詰やドライフルーツは大量に出回ってる。

 だけど生のフルーツは手に入らない高級品の扱いだ。

 苺なんかは野菜感覚で栽培されてて手に入りやすいんだけどね。

 あと柑橘類なら日持ちするからある程度出回ってる。

 他の果物だと帝都の市民ですらも自分で栽培しないと入手できない。

 そういう意味では惑星カミシロ本家から大量の果物が供給されるうちの艦の食糧事情は最高レベルである。

 そしてこのカットフルーツは紛れもない高級品。

 実家の総力を結集した贈答用だ。

 首都から遠い地までの輸送態勢まで整えた品だ。

 ほんの少しだけ自慢したい。

 どうしても口角が緩む。


「もうクレア! ドヤ顔かわいいなあ」


 レオにツンツンされる。

 かわいいって、もう! 人前で言うな! 恥ずかしいから!


「いいじゃない。自慢の商品なんだもん」


「あ、アオイさん。クレアの家、スーパーマーケットやってるんです。一度取り寄せたんですけど美味いですよ!」


「そんないいものを! ありがとうございます!」


 ケビンちゃんがニコニコしてる。


「クレアちゃんってわりと顔に出るタイプだよねー」


「え……そんなにわかりやすい?」


 なるべく余計なことは言わないようにしてるんだけど。


「うん、いつも顔に出てるよ。クレアちゃんって表情豊かだもんね」


 なんてことだ。

 自分では感情をコントロールしてるつもりだったのに。

 私は自分自信をクール系でありたいと思ってたし、そう振舞っていたと思ってたのに!

 ああ! 恥ずかしい。


「クレア……あきらめなって。俺の関係者はみんな崩れるのさ」


 レオの胸元に思いっきりチョップしたい。

 でも確かにそうだ。

 皇族のヴェロニカちゃんも最近ではジャージで出歩いてる。

 ビースト種というコンプレックスの裏返しにお高くとまってたレンちゃんも親しみやすくなった。

 メリッサちゃんは逆に女の子っぽくなってきた。

 ルナちゃんは神扱いから遊び相手に。

 ケビンちゃんは女の子扱いになったけどあれは例外か。

 タチアナちゃんに至っては不良から懐かない妹扱いだ。

 そもそもレオ本人が近所の野良猫みたいに扱われてる。

 私だけが影響を受けないなんて事はないのだろう。

(逆にエディくんは誤解が解けて評価が上がった)


「そういやさ、マザーが俺を恐れてるって?」


 レオ、ナイス!

 話の腰を折ってくれた。


「そうです。レオ少佐は歴代ジェスターの中でも異質ですので。打った布石がことごとく理不尽に裏目に出るのでマザーは少佐を理解するのをあきらめたようです」


 ……レオの被害者は帝国だけじゃなく宇宙規模のようだ。

 さすが我が婚約者。


「ですので数の暴力で作戦を開始するようです」


 私たちの一時の安寧は終わりを迎えることになりそうである。

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― 新着の感想 ―
>レオの胸元に思いっきりチョップしたい。 逆水平? 是非やって欲しい!
クレアの照れ隠し逆水平チョップだー!これは効いたか!レオ・カミシロ、胸を押さえてふらついている!いや、心に効いている!レオ・カミシロ!クレアにめろめろだー!ひゅーひゅー!!
尿路結石は地獄よ。←経験者。 手術も高いし。 今は薬で治るらしいが・・・。 水よりも低脂肪カルシウム強化された牛乳を飲んだ方が良い。 医者にもカルシウムを取る様に言われたし。 最近…
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