第二百十話
俺たちは遊んで時間潰し……げふんげふん、壮絶な訓練をしながら出撃に備えていた。
壮絶な書類仕事も一度動き出したら減っていった。
ある程度自動化もできたしね。
今日もダイビングで珊瑚礁の警戒業務に、公爵の野郎が持ってたクルーザー出して釣りに行き、カジキを捕って大満足し、午後には暇を持て余したサイラス&トマスの近衛隊と我が一門で大相撲大会を開く。
「おらああああああ! 猫だましじゃあああああああ!」
ぽいっとな。
俺が普通にステンと投げられる。
どうしても狭い土俵ではパワーが足りない。
こういうのは体格が物を言う。
俺は小さい方じゃないが上位陣ほどではない。
というか男子ではクロレラ処理勢が無双してる。
みんな身長2メートル越えだもん。
女子だとビースト種のレン無双だ。
なおケビンは男女どっちに入れてもよくないので記録係である。
「はーい、レオ。罰ゲームの丸太打ちな」
「へーい……きえええええええええええええええぇッ!!!」
横綱と書かれた太い枝で丸太を叩く。
なぜ罰ゲームまで薩摩風なのだろうか?
50回丸太を叩いて終了。
パワー!!!
「はっはっは、聞いてたよりも壮絶な稽古だねえ」
トマスが笑ってる。
「壮絶? 遊びですよ」
「だって本来の訓練やった後で相撲だろ? そりゃ仕事じゃないかもしれないけど化け物じみた運動量だと思うよ」
……言えない。
その前にもさんざん遊んだなんて言えない。
よく考えたら俺ら、仕事してないときはずっと動いてるな。
相撲が終わって夕食。
釣ってきた魚をさばいてもらう。
それだけじゃ足りないからいつもの養殖の魚もね。
というバカンスの日々を送ってたわけだ。
なぜか筋肉増えたけど。
そんな日々の最中、俺たちの追加兵がやって来た。
とりあえず第一陣は1000人。
みんな少尉で隊長なのでみんなに振り分ける。
俺のところに女性を入れるのは嫁ちゃん&嫁の皆様に阻止された。
待って、まるで俺が女たらしみたいじゃないか!
俺から「ぐへへ。我が嫁になるがいい!」ってやったのクレアだけだよ!
なんでそんなに信用ないの!?
「異常にモテるからじゃ」
あ、うん、はい。
有力貴族で金持ちで若いからですね。
増長しないようにします。
で、数十人の若い男に囲まれる。
今回送られてきた兵の年齢は若い。
伸びしろがある人材なんだって。
エリート部隊への配備である。
顔は期待に満ちていた。
あとはいつもの訓練を……なんで倒れてるの?
「じ、地獄だ……」
「まだ準備運動だよな? なあみんな!」
まだ物資持って走ってから丸太に打ち込みしただけだよ。
このあと砂浜走ってスパーリングして準備運動終わり。
って思って横を見たら……他の部隊の新人も倒れてた。
なんでぇ!?
まだ追い込みもかけてないのに!
「あはははは! 大惨事だね! レオくん完全にズレてるよ!」
トマスも倒れてた。
サイラスも無言で倒れてた。
なぜだ!
「でもさー、このくらい余裕でこなせる体力ないとゾークの大軍倒せないよ。死んじゃうよ?」
部隊の連中にハッキリ伝える。
「ぐ、ぐう、うおおおおおおおお!」
カミシロ一門には平民から伯爵になったものも多い。
成り上がりを夢見る者。
自分の家の復興を求めるもの。
さらにはゾークへの復讐を求めるもの。
いろんな野望があった。
どんな野望であれやる気は充分だった。
男たちは立ち上がる。
訓練続行である。
で、訓練後……。
「嘘だろ……隊長たち……あれだけ動いてから遊んでやがる……」
なんでみんな遠巻きにどん引きしてるのかな?
そりゃ遊ぶだろ!
常夏の楽園だぞ!
体力余ってると熟睡できねえぞ!
俺たちはまだまだ遊ぶ。
遊びまくる。
……で、この生活に慣れたころ、遠征の辞令が来たのである。
「へーい、物資運ぶよ~」
みんな重機の運転にも慣れた。
資格持ってない子には最優先でシミュレーターやらせまくって免許を取らせた。
なのでみんな作業はできる。
「運ぶであります!」
ワンオーワンすら運転できるのだ。
できないとは言わせない。
タチアナも人型重機の免許取って運搬してる。
で、運搬が終わる。
今回の船は新造の大型戦艦。
艦長は嫁ちゃんだ。
嫁ちゃんだけは生きて帰さないとね。
もう一台はトマスとサイラスの艦がある。
それと公爵から差し押さえた大量の軍艦に各貴族が乗船してる。
カミシロ騎士団も参戦。
サム兄は根本的に戦闘に向いてないので勘弁してもらった。
ま、本家当主の俺が行くし怒られないでしょ。
武器は大量の実弾兵器。
それにボルトスロワーの改造版。
弾丸式でしばらく電撃を放つタイプである。
で、前回のトマス遠征の失敗点も考え、今回は生産用の船も用意。
弾薬の心配はない。
人型戦闘機も対ゾーク用に改修した。
殺戮の夜は速度が速すぎて、エースパイロットクラスじゃないと使うのは難しい。
なので標準機のマイナーアップデートで対応した。
さらにミサイルやら最悪の場合を見越して惑星破壊用のミサイルも持っていく。
できれば使いたくないけど。
惑星サンクチュアリごと破壊も視野に入れている。
「ふう、あとは食料食料と」
食料を積み込んでると執事さんが来た。
「お館様……ご立派ですぞ!」
なぜかむせび泣いてる。
前の領主は軍人じゃないからね。
こういうのはなかっただろう。
「すぐ帰ってきますんで領地は頼みます」
「この命に換えましても!!!」
やる気があるのはいいことである。
俺もがんばらないとね。
嫁ちゃんが来た。
「婿殿、ちょっと来い」
「どうしたん?」
「その……なんだ……これを登録してくれ」
なんか樹脂製の試験官を渡された。
説明書を読むと……凍結保存するのね。
その赤ちゃんの素的なやつを。
「妾のはすでに登録した。帰って来れなかったら……わかるな?」
「あー、うん、はい。了解ッス」
めっちゃ顔が赤くなってる嫁ちゃんがかわいかった。
こりゃ本気で帰ってこないとね。




