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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第二百一話

「エディ・アンハイム伯爵様でしょうか?」


 惑星カミシロ本家への定期船で自分の領地に向かった。

 とうとう俺も伯爵様だ。はっ、笑える。

 現実感が未だにない。

 だというのに宇宙港の搭乗ゲートを出るや否や、伯爵様と女性に話しかけられる。

 伯爵様って言われても一瞬誰のことかわからなかった。


「ミネルバ・カリ秘書官です。伯爵様のサポートを命じられてます」


 女性は俺と同性代くらいか。

 少し年上だろう。

 セミロングの茶色い髪で眼鏡をかけた大人しそうな女性だ。

 俺を見つけられたのは軍服姿のせいだろう。


「命じたのは誰? 陛下に? それとも軍に?」


 ここが重要だ。

 カミシロ本家には敵が多い。

 そりゃ俺たちは成り上がりだ。

 おもしろくない連中も多いだろう。

 いまのところ表立って攻撃してきた勢力はぶっ潰した。

 今は敵対勢力なんていない状態だ。表面上はな。

 だけどそれは地下に潜っただけ。

 レオ・カミシロとヴェロニカ陛下が戦上手なら俺たちを切り崩すまでだ。

 だから俺たちは今までよりももっと慎重にするべきだ。

 今回の領地視察もそうだ。

 レオの野郎はなにも考えてないだろうが、ヴェロニカ陛下は違う。

 接触してきた勢力を報告し、可能なら叩きつぶして来いって意味だ。

 そのくらいは俺でもわかる。


「帝国軍です。こちらが辞令です」


 辞令の書類が送られてきた。

 ファイルごとルナ様と陛下、それとレオにも送る。

 ルナ様から【本物ですよ】と返事が返ってきた。

 それなら味方だな。


「ありがとう。では領主の館に向かおう」


 惑星アンハイム、公爵会所有惑星の一つだった。

 極寒の惑星だ。

 季節が冬だったのもあって雪が降っている。

 雪はそんなに降らないって聞いてたんだがな……。


「夜には吹雪に変わるようです。急ぎましょう。お車を用意しております」


「ありがとう」


 タイヤの代わりに無限軌道がついた車に乗り込む。

 足は遅いが……ってこの雪じゃ普通の自動車でも同じか。

 滑らないだけこっちの方が優秀だ。

 運転はAIによる自動運転だ。

 暗殺は可能っと、レポートを送る。

 30分ほどで市街地に出る。


「そちらの高層ビルが行政センターとのことです」


 なるほど。

 自宅とは別なのか。


「先に荷物置きたいんだけど、この住所わかる?」


「領主邸ですね。先に向かいましょう」


 領主邸は街を見下ろす一軒家だった。

 ただデカい。

 実家も領主だけどスケールが違う。


「もとは代官屋敷だったそうです。温泉を引いていると書いてあります」


「やりたい放題かな?」


 さすが悪徳公爵の代官。

 腐敗のスケールが違う。

 駐車場に車を止めて外に出ると背広姿の中年男性が頭を下げた。


「執事の渡辺にございます。アンハイム伯爵様にご挨拶申し上げます」


「よろしくお願いします」


 ミネルバがなにやら渡辺と話してた。

 話し合いが終わるとミネルバは俺の方に来た。


「私がお迎えをしたのでその話を」


「なるほど。宇宙港に家臣が迎えに来なかったのはそのせいですか」


「伯爵様はそういった華美なものがお嫌いとお聞き致しましたので」


「エディでお願いします。名前の後に何かつけたければ爵位じゃなくて少尉で。同じ帝国軍人なのですから」


「ではエディ少尉。これからよろしくお願いします」


「こちらこそ。よろしくお願いします」


 代官屋敷に入る。

 ブーツを脱いで玄関に上がる。

 中はレオが好きそうな純和風の内装だ。

 囲炉裏まである。

 すぐに女官が来て荷物を渡す。

 最悪空港でドンパチまで想定してたがその心配はないようだ。

 囲炉裏の側に座る。


「慣れていらっしゃるんですね」


「うちのリーダーがこういうの好きなんで」


 レオは本当にこういうの、純和風が好きだ。

 偏愛してるとも言える。

 あの野郎……今考えるとゾークの襲撃前は猫被ってやがったんだな。


「まずはこの領地の基本データをお願いします。事前にもらった資料ではなく、本当のをお願いします」


 資料が送られてくる。

 この資料を読んで意味がわかるようになる日が来るとは思わなかった。

 俺の家は領地なしの宮廷貴族だ。

 粛正された文官の血筋にあたる。

 レオと陛下のおかげで粛正は免れた。

 親父は引退、俺が当主になって伯爵様である。

 おそらく二人には一生頭が上がらないだろう。


「惑星渡辺……今は惑星アンハイムですね。公爵所有の惑星の一つで常に雪が降っているため伯爵級とされていましたが……」


「なにか問題でも?」


「いえ、その……異常なほどの地下資源が見つかりました。それと……」


「それと?」


「この惑星の表土のほとんどがチェルノーゼムと判明しました」


「それって……えっと……」


「大量の腐食を含んだ上質の黒土です」


 クレアちゃんに来てもらえばよかった!

 農業のことはわからないぞ!


「つまり?」


「温度の問題はありますが農業に適した惑星です。それを加味すると公爵級でも上位かと。エディ少尉はそれを見抜いてこの惑星にしたのでは」


「純粋にクジの結果ですが。あと蒸し暑いところは嫌だなと思ってたんで」


 特に主張のない俺たちは最後は考えるがめんどうになって領地をクジで決めた。

 とんでもない惑星を引き当ててしまった……。

 惑星の収益が大きく間違ってたことをレオと陛下に通報。


「勘弁してくれよ……」


 俺は頭を抱える。

 自分のコントロール下から離れて事態が大きくなっていく感覚……。

 あれだ! ブス決定戦だ。

 すると軍服を着た中年男性が息を切らしながら入ってくる。


「お、お館様!!!」


 一瞬誰よって思った。

 そうか俺の事か。


「い、一大事に御座る! 周辺の惑星で公爵会派が一斉蜂起しました」


「なん……だと……」


 レオがいないだけでこれかよ!!!

 クソ! 説明は受けたがジェスターって本当に決戦兵器級の超能力じゃねえか!


「れ、レオ! 頼むから応答してくれ!!! 周辺の惑星まで巻き込んでクーデターが起きた」


 すぐに返事が返ってくる。


「こちらレオ! そっちの隣の惑星にレンがいるはずだ! 協力して鎮圧してくれ」


「おま! 協力って!」


「俺もすぐ行く!」


 ……嘘だろ。

 結婚もしてねえのに!!!

 彼女もいねえのに!!!

 ド畜生が!!!


「あの少尉……?」


 俺は無表情で考えていた。

 俺はレオと違って表情に出ないタイプなのだ。


「ミネルバさん、隣の惑星に優秀なスナイパーがいる。まずは彼女と連絡を取ろうと思う。それと君のことは守る。約束する」


「はい!」


 俺は軍帽を目深に被る。

 心が折れそうだ。

 泣きそうだよ……。

 どうすんだよ……これ。

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― 新着の感想 ―
 ここで、皇帝夫妻暗殺の一報が銀河にひびく。  混迷を極める帝国。  その中で、新任の伯爵は流動する事態を納めるためいやいや立ち上がる。 「お前ら、くたばるわけねえんだ。さっさと戻って来て仕事しろ…
ジェスターがいないとこうなる があるとレオ日常回が尊い以上にやべーとなる
最初エディて誰状態だったけどモブ枠から名前つきにクラスチェンジしたのかおめでとう 好感触な人柄なのに色々ご愁傷様です
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