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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第二百話

 恐ろしい話であるが……金が減らない。

 無駄遣いしてるつもりだった。


【ほとんどの惑星が一から開拓だし、取り上げた公爵会の資金なんてすぐに枯渇するだろ】


 なんて言ってみんなで笑ってた。

 一箇所に金が貯まって動かないのはよくない。

 どうせ俺らの金じゃねえしサクッと使っちゃえと思ってたのに……。

 惑星開拓の資金はレイモンドさんが派遣してくれた弁護士チームが帝国の補助金でどうにかしてしまった。

 公爵邸の文化財なんかは帝国に渡す。

 芸術わからない側の人間に持たせちゃダメ。

 メンテできなくなって永久ロストする可能性がある。

 もちろん俺はわからない。

 帝国の博物館に渡した方が保存状態が良好なのは間違いない。

 で、寄贈しようと思ったら雇った方がいいって。

 帝国の金で博物館を建てて観光客に見せればいいそうだ。

 ここまでも俺たち側の金をかなり使ったはずなのに補助金で逆に増えた。

 わけがわからない。

 しかもすでに開拓完了してるような惑星は無駄に大きい宇宙港なんかがあってガンガン稼動してる。

 作ったら作っただけ売れる状態だ。

 もともと公爵会の惑星は収益性の高い惑星ばかりだ。

 佐藤家レベルの超絶無能でも黒字になるほどなのだ。

 農産物なんかも過剰生産だったらしく大半は捨てていたというから驚きだ。

 公爵会って帝国の癌だったのでは?

 ガンガン帝都に送る。

 で、うまく行くと今度は文官だけじゃなくてビジネスの主体になってくれる人が足りなくなる。

 そうだな……毎日が文化祭みたいな状態とでも言えばいいだろうか?

 食材はあるんだけど、たこ焼き焼いて売る人がいない。

 この間も恐ろしい勢いでカミシロ一門名義の口座の金が増えていく。

 で、商社もクレアの実家もパンクしそうになってるからクレアが会社に行ったという状態である。

 ……たこ焼き食べたくなったな。

 作るか。

 食堂に向かう。

 見つかると「大公様! 軽食なら作りますので!!!」と言われてしまう。

 違う。

 作りたいの。

 高級なタコじゃなくていいの。

 たこ焼き器でみんなでわいわい言いながら作りたいの。

 俺はステルスミッションに挑む。

 まずは倉庫。

 執事やメイドさんに見つからずに侵入成功。

 おっと、ガス式のたこ焼き器あるじゃん!

 ガス缶も!

 たぶんこれ厨房のまかないで使ったやつだな。

 楽しそうなことしちゃって!!!

 次に食品庫へ。

 粉と冷凍のタコ発見!

 よっしゃ!

 ソースを……あった!

 たまご……たまごっと、あった!

 ネギと紅ショウガは……あった!

 さすがに揚げ玉は……へっへっへ……まかない用のがあるじゃん。

 かなり好き放題やってるじゃねえか!

 油にキッチンペーパーに菜箸と串ももらって……おっと鰹節あるじゃん。

 牛乳は……いる派といらない派がいるんだよなあ。一応持っていこう。なお俺はいらない派。

 あと和風だしと山芋粉と。おっと青のり忘れてた。

 マヨネーズ……君も賛否あるけど入れるね。

 それをカートに乗せて……食堂に。


「なにやってるでありますか?」


 ぽよんぽよんとお胸を揺らしながらワンオーワンが来た。

 俺は悪い顔をする。


「おやつを作るのさ!!!」


「わーい!!!」


 そう言って食堂を目指すとケビンに見つかった。

 こっちもお胸を揺らしてきた。


「あ、たこ焼きするの!? やろやろ!」


 と喜びながら食堂に入ろうと思った瞬間、執事に見つかった。

 ステルス失敗。


「殿……命じていただければいつでもお作りしますのに……」


「じ、自分で作りたかったのよ~!!! たこパしたかっただけなのよ~!!! いいからいいから。はい一緒に作りましょう!」


 こうなったら共犯作戦である。

 くっくっく。

 食堂に行くとケビンがエプロンを着ける。


「タチアナ呼んでくるであります!!!」


 ワンオーワンが元気に食堂を出て行く。

 で、ゴソゴソなにやらやっている気配を察知した嫁ちゃんもやってくる。


「おー、なにやってるのじゃ」


「たこパ。一緒に食べよう!」


「おう!」


 というわけで作る。

 アシスタントはケビン……と思ったらすでに生地作ってくれた。

 ケビンも牛乳使わない派だった。


「たこたこ~たこさん♪」


 謎の歌を歌いながらケビンが油を塗った鉄板に生地を流し込んでタコと紅ショウガに揚げ玉を入れる。

 タコを入れて待つ……って結局ケビンがほとんどやってる。

 さすがガス式。

 火力が高くてすぐに生地が焼けてきた。

 ひっくり返す。これくらいはやるさ!!!


「ほ~。おもしろいものじゃな」


「あれ? 食べたことない?」


「妾の世界は後宮か軍艦しかないからの。こういった庶民の味は口にする機会がなくての」


 だから俺たちが食うようなものでも文句の一つも言わずに食べてたのか。

 そういや遊園地でも買い食いしたものうれしそうに食べてたな。


「言ってよ~!」


「……なんというか……恥ずかしかったのじゃ。知らないことが多すぎて……それを婿殿に知られるのが……」


 嫁ちゃんは頬を赤く染めていた。


「じゃ、今から知ろうよ!」


 ケビンができあがったものから皿に盛る。

 鰹節と青のりかけてソースをかけたらできあがりっと。


「ちゃーっす」


 ここでタチアナがやってくる。


「タコ焼きあざっす!!!」


 と言いながらワンオーワンの横に座る。

 ケビンに盛ってもらって食べると首をかしげる。


「えへへ、タコタコタコ焼き~♪ アタシ食べたことないんすよ」


 皆に電流走る。


「え?」


「うちクッソ貧乏なんでタコなんて買えねえですし。そもそもうちのコロニーじゃ売ってねえです」


「えっと普段のご飯は……なにを?」


 わりと上澄みのコロニー出身のケビンの声が震えてた。


「帝国フードバンクからの援助物資ッスね。菓子パンとかスナック菓子とか……インスタントラーメン? それも近所のチンピラに取り上げられるんで、よく近所のガキが死んでましたね。みんな無計画にガキ作るんで」


「足りない分はどうするの?」


「盗んだり、売春したり? アタシは軍の物資の横流し手伝えたんでそっちで。領主軍に入ったのもそこからッスね。ま、アタシ、運がいい方なんで!」


 タチアナは親指を立てる。

 わ、笑えねえ。

 タチアナ的には渾身のギャグなんだろうけど笑えねえ。

 でもこういうときに空気を読まない人間は救いになるのだ。


「タチアナの弟妹はどうなったでありますか?」


「それがー、隊長の下についたあたりで領主が逮捕されて母親と一緒に生活支援施設にいるみたいッスよ。はっはっはー、不思議なこともあるものッスね」


 嫁ちゃんの口角が上がった。

 おそらく、嫁ちゃんだろう。


「アタシの仕送りもあるんで、そのうち生活できるようになるんじゃねえッスか? この隊、やたら給料いいですし」


【君の給料、実は役人にピンハネされてたのよ~】なんて現実は教えない。

 もう逮捕されたし。

 それに帝都の物価換算で給料支払われるから帝国軍は新兵でも給料がいいのだ。

 タコ焼きを食べる。

 もうマザーなんか倒さなくてもいいのかな。

 そのうちエッジが勝手に成長して倒しちゃうんじゃないかな?

 主人公だし。

 なんて思うタコパであった。

 最後に執事さん。


「これからもたまにやりましょうか」


 気に入ったのね!

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― 新着の感想 ―
おっさんはこういう話に弱い。浪花節っつうか、下町人情模様っていうか。(個人の感想です) 結婚相手の実家にに挨拶に行った組も、無事挨拶できたんやろうか。惚れたとか家の都合だけで添い続けるってのも大変だか…
こちらのノリに合わせて来てくれる執事さんええ人やな。
カミシロ公爵家の身内限定パーティの定番として長々と末代まで続いたりしてw まぁ何処ぞで他の家にバレたり仲間内の家で広まって「カミシロ公爵家の秘密の会合」とかなんとか囁かれる様になったりしてねw
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