第百八十九話
メリッサを完全に無視して俺に突っ込んできた臥琉磨。
それをG殺法で華麗によけつつ剣を走行の隙間、首の付け根に突き刺した。
なんだ刺さるじゃん!
「ぐ、ぐおおおおおおおおおおおおッ!!!」
臥琉磨が暴れる。
にしても、侍従長といい戦闘型のゾークは仮面的なライダーになるのか。
かっこいいな。
それに比べてこちらは何もかもギャグにして絶望を有耶無耶にして回避する超能力。
格好良さ、美しさを最初からあきらめた能力である。
ほら、説明したら字面がひでえ。
なんだろう……目から汗が……。
俺の能力じゃ【改造人間の苦悩が……】なんて起きないもんね!
「ゆるさんぞおおおおおおおおッ!!!」
臥琉磨が殴ってきた。
俺はその腕に切りつけながら、下から肘をカチ上げようとした。
戦闘服の硬さを味わうがいい!!!
「おらあああああああああああッ!!!」
ごきゅり。ぱきん。
「痛ッてええええええええええええええぇ!!!」
アゴをカチ上げたら戦闘服が割れた音がした。
【戦闘服、腕部分が破損!】
音声でアラートが知らされる。
嘘だろ!!!
おまけに問題がもう一つ。
……剣が折れた。
「おうふ……」
「うおおおおおおおおおおおおッ!!!」
臥琉磨はもう必死だった。
めちゃくちゃに腕を振り回してくる。
対して俺は丸腰。
腕をくぐってよける。
だけどクソ速い。
だけど臥琉磨は体重移動が拙い。
前に重心が移った瞬間に足払いしながらノドに手刀!!!
すてーんっと臥琉磨がバランスを崩して尻餅ついた。
俺は距離を取る。
ハンマー!
ハンマーをくれ!!!
「隊長! 使って!」
メリッサが刀を投げてくれた。
刀を上手に使う自身はない。
だから薩摩殺法である。
「うおおおおおおおおおおお!」
俺は全速力で駆け出した。
ようやく臥琉磨が起き上がってきた。
異常な硬さと引き替えに体が重いのだろう。
俺は臥琉磨の頭に剣を振り下ろした。
生身の俺じゃ一発で一刀両断する自信はない。
だから何度も振り下ろす。
攻撃なんてさせない。
一方的にボコす。
めこん。
……うん?
こっちも曲がったああああああああああッ!
「うおおおおおおッ!!!」
でも俺はあきらめない。
馬乗りになってナックルでぶん殴る。
ゴリラ戦法って言われてもいい。
勝てばいいのだ!
息の続くかぎり、動け! 俺の拳!!!
何度も何度も殴りつける。
息が血なまぐさい、心臓が破裂しそうだ。
それでも俺は手を止めない。
「はあ、はあ、はあ……おらあああああああああああッ!!!」
「隊長! ストップ!!!」
「レオ!」
クレアに後ろから抱きしめられた。
メリッサも俺の腕をつかんでいた。
「終わったよ……」
臥琉磨は動かなかった。
痙攣してないから死んでないだろう。たぶんね。
「あはははは! 臥琉磨も大公様がこんな泥臭い戦いをするなんて思ってなかっただろうね!」
よく見ると臥琉磨の頭部装甲がベコベコに割れていた。
……勝った。
「はあ……はあ……はあ……」
息が切れる。
たまらずヘルメットを脱ぐ。
酸素! 酸素をくれ!!!
「ふへえ……」
酸素が美味しい。
ヘルメットの内側が息で曇ってた。
自動でメンテナンスモードになったヘルメットを床に置く。
戦闘服の中は汗だくだ。
「レオ、もう生身でも勝てるようになっちゃったね」
「はあ、はあ……でも効率が……はあ……悪い……ッス」
少なくとも銃は必要だ。
でも銃だと室内で軽機関銃ぶっ放すのも難しいんだよね。
アサルトライフルだと殺しきれるかが問題になってくるし。
やっぱハンマーでぶん殴って、ビーム兵器が体力的に楽かな。失敗したら死ぬけど。
ようやく息が整ってきた。
すると通信が入った。タチアナだ。
「隊長! アタシ、なんか嫌な予感がする!」
俺も背筋がゾクッとした。
なにが来るかはわからない。
だけど回避するために横に飛ぶ。
頭の横をなにかがかすめた。
なにかが頭の肉をえぐる。
次の瞬間、壁を貫いて触手が俺に向かってきたのだとわかった。
粘った血が流れるのを感じた。
俺は受け身を取って転がり、その回転の勢いで起き上がる。
「バカめ! バカめ! バカめ!!!」
ベコベコになった臥琉磨から声がした。
「私は戦闘型だ! この程度では倒れぬ!!!」
基地の壁が溶けていく。
「基地丸ごと支配下に置いた。貴様らを飲み込み魂を神に捧げてくれる!!!」
溶けた壁が俺たちを囲む。
逃げる隙間は……こりゃやべえ。
ちょっと後悔した瞬間だった。
タチアナから通信が入る。
「隊長! 殺戮の夜が【送ってくれ】って!」
「あん?」
「いまロックを外すから待ってて!」
どうやって?
すると妖精さんから通信が入った。
「な! 殺戮の夜が勝手に発進処理していきます!!! もうわけがわからないよ!!! あー、もう! 手伝います!!!」
嫁ちゃんからも通信が入った。
「婿殿! 殺戮の夜が勝手に飛び立った! もうなにが起きてるかわからんが……助けに向かってるようだ!!! それまで生きるのじゃ!!!」
えー!!!
もしかして意思があるやつ?
それともタチアナの能力なのか?
もうわけがわからなかった。
同じジェスターでもここまで違うのか!?
そういやアリッサは俺と同じ事ができないって言ってたな。
ジェスター個人差ありすぎだろ!
もう! がんばる!!!
「メリッサ! グレネード!!!」
「うっす!!!」
メリッサがグレネードを投げた。
一瞬、触手が止まる。
「クレア! 残りの爆弾は!?」
「ある!!! いま爆発させる!!!」
クレアが爆弾を投げた。
一秒後に爆発する。
近くだったせいで俺たちは倒れた。
でも壁から伸びた触手も動きを止めた。
爆発は有効だ。
……ってクレアが仕掛けた爆弾の爆発まであと40秒って所か。
殺戮の夜も間に合わないかも……。
【殺戮の夜ワープしました!】
え?
次の瞬間、殺戮の夜が目の前に現われた。
嘘やん。
それだけじゃなかった。
殺戮の夜の姉妹機として開発してたメリッサの侍カスタム、クレアのファイター、それにレンのスナイパーまでもが目の前に現われた。
……というか触手ごと建物壊して現われた。
「乗れえええええええええ!!!」
俺たちは人生で一番急いで乗り込んだ。
乗り込んだ瞬間、仕掛けてた爆弾が爆発したのである。
今回はマジでヤバかった。自滅するとこだった。
この爆発で臥琉磨ぽん倒れてくれないかな。(フラグ)




