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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第百八十六話

「あそこに見えるのが病院だ」


 小さなビルが見える。

 駐車場なんかは広めのようだ。


「へー、病院あるんだ」


「ああ、俺たちの組合で雇ってた産業医の息子……いまは娘か……とにかく医者がいてな」


「先々代の時っていつだったの?」


「25年前だ。あのころここをスキーリゾートにする話があってな。だが当時の公爵が倒れて息子がやっぱやめた金は払わんって言い出しやがってな」


 執事さんに聞いた話と同じだ。

 ゴミすぎるだろ公爵。


「それで抗議のために居座ったら閉じ込めやがった。幸い鉱山があったから外の軍と取引してなんとかやってきたってとこだ」


「理不尽なご苦労をおかけしました。ちゃんと前公爵の約束した賃金と賠償金を現在の貨幣価値に換算して支払います」


 こういうのケチると破滅に一直線だ。

 俺は支払おうと思う。

 どうせ転がり込んできただけの金だし。


「あんた……貴族のくせにずいぶん話がわかるんだな」


「末っ子で士官学校で金もらいながら勉強してた身なもんで」


「はは! こりゃこの惑星も先が明るいや」


「その分、教養が足りないんで領地経営で四苦八苦ですわ。アホの佐藤が知らんとこでやらかしてるわ。アホな公爵軍に領主交代の通知が行ってねえわ……」


 なんか腹立ってきたぞ。


「部下も公爵会の領地を譲り受けた面々なんで、いまのうち営業しとくといいと思いますよ。いまのとこ仲間の実家くらいしかコネないんで」


「はは……運が向いてきやがったな……」


 ロジャーはケビンやワンオーワンとは違う容姿だ。

 かといってアレクシアとも違う。

 姐御肌の気の強そうな女性って感じだ。

 中身は50歳以上のおっさんだろうけど。


「大通りに面してるそこは救急だ。入り口はこっちだ」


 細い道に入ったところが正面入り口のようだ。

 そんなに大きい建物じゃない。

 三階建ての鉄筋コンクリート製の建物だ。

 中に入ると受付があった。

 でも人の姿はなかった。


「おーい先生! 大公様連れて来たぞ!!!」


 大きな声で呼ぶとタタタタタっと足音がした。


「ロジャー! 誰連れて来たって!?」


「大公様だ! 佐藤を倒してこの惑星の領主になったんだってよ!」


「おいロジャー! 俺たちのことは……」


「なんか知ってるみたいだぞ」


「ええっと」


 俺は握手しようと手を差し出した。


「レオ・カミシロです。ドクター」


「ナガノです。大公閣下」


 ナガノは眼鏡をかけた知的な女性だった。

 また違うタイプの女性型ゾークのようだ。


「ナガノ先生。女性化の原因ですが……帝国が戦ってるゾークと関連があると思われます」


「ゾーク?」


「失礼ですが……ネットは繋がってないので」


「ええ、隔離されてから数年は衛星通信ができましたが……ここ20年は完全に……」


「それはむごいことを……」


 同情したら【コイツはいままでの暴君と違うようだな】って顔された。

 さすがに公爵会の連中は最低の領主だと思う。

 一緒にされたくない。


「で、ナガノ先生。例の連中に会ってみたいって」


「わかった。隔離病棟にご案内します」


 地下案内された。

 隔離病棟は厚いで閉ざされていた。


「中にどうぞ」


 中に入ると女性たちがいた。


「先生、その方は?」


「新しく領主になられた大公閣下だ。俺たちに会いに来たようだ」


「え? お、男に戻れるんですか!?」


 あー……一番痛いところ聞かれちゃった……。


「えーっと残念なお知らせなんですけど……我々の最新技術をもってしても男性に戻るのは……難しく……」


 普通の手術はあるんだけど、元の姿に戻るわけではない。

 そもそも若返ってしまってる。

 これは我々の技術でも難しい。

 メカニズムも解明されてないのだ。


「だろうね」


 医師のナガノがため息交じりにつぶやいた。

 そりゃ無理だよね。


「ですが悪夢の解除はわかってます。ゾークネットワークと通信してる個体がいるはずです。それを排除すれば……」


 するとロジャーとナガノは顔を青くした。


「中佐だ……!」


「中佐?」


 俺より偉い人?


「そこの基地の責任者だった男だ」


 帝国軍だと【佐】がつく人って基地の総責任者なんだよね。

 流通だと店長より上でエリアマネージャーの県とか州の統括責任者的な立場だと思う。

 一般企業だと部長クラスかな?

 一般企業よりは数が多いけどさ。

 いや軍を超巨大な国営商社って考えれば適正人数か。

 ……そうだよ。10代で部長なのがすでにおかしいんだよ!

 いくら親の七光りとか嫁が社長令嬢でも部長は30代からだろが……。

 中佐も帝国軍じゃなくて公爵軍の中佐だろう。

 それはそれで偉い。

 この惑星じゃかなりの権力者だろう。


「女になっちまったんで、伝染病だと思った基地の連中が追い出したんだわ」


「それで今どこに?」


「同じように追放された兵士と軍を作って東側に君臨してるよ。人型重機や戦車で武装してやがるから俺たちも手を出せねえ」


「じゃ、排除しますね」


「それができりゃ楽なんだが……人質がいるんだ。もともとここに住んでた女や子どもだ」


「うっわ最低……」


 俺はメリッサを見た。

 いい笑顔で親指を立てた。

 うん、潜入ミッションではあるが楽勝な気がしてきたぞ。


「みんなは俺と潜入。ケビンとニーナさんは人質奪還したら殲滅ね」


「了解でーす」


【うふふっ♪】てピクニックに行くような声でニーナさんが返事した。

 なのに後ろから【ゴゴゴゴゴゴゴゴ!】って音が聞こえるような気がする。

 タチアナが俺の袖を引っ張る。


「アタシはなにすればいいんだ?」


「お留守番って言いたいとこだけど、働いてもらう。ニーナさんと物資の運搬してくれ。重要な仕事だからな。手を抜くなよ」


「おう!」


 いい子だったのでチョコを渡す。

 なんか俺……女子を餌付けしてるよな?

 まあ……いいか。


「さーて行くベか」


「おう!」


 どうせ基地から通報行ってるんだろうな。

 おそらく待ち構えてるんだろう。

 でも甘いのである。


「各自光学迷彩ユニットを準備して待機」


 最初はどうなるかと思ったが……ゴールが見えてきた。

 待ってろよワンオーワン。

 すぐに解放してやるからな!

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― 新着の感想 ―
皆殺し~~♪ という軽いノリやね
どうして公爵ってやつはこう、クズばかりなのだろうか(;´д`)
地道な餌付けを忘れないの大事だと思います!
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