第百八十話
ケビンとクレアが救急措置を行う。
ナノマシン注射して酸素マスクつけて栄養点滴打って担架にベルトで固定する。
ここからは一刻を争う。
女性を担架に乗せて車両を停めた時点まで大急ぎで戻る。
俺も含めた男子数人で担架を担いで山道を全力疾走。
来たときは一時間以上かけたというのに数分で合流地点に到着。
合流地点ではヘリが待っていた。
軍用の車両運べるデカいやつ。
公爵領の救急隊かなと思ったらピゲット直々にヘリを操縦してきた。
「婿殿! 乗せろ!」
俺と男子たち、それに近衛隊でヘリに乗せる。
「婿殿は一緒に乗ってヒーリングしてくれ!」
「やりかたわからねえっす!」
「婿殿ならできる!」
ぴえん。
恐ろしいほどの信頼。
これは失敗できないぜ!
俺は女性の手を握る。
すると直感が働く。
なんとなくいけそうな気がする。
なんとなくヒーリング!
なお効果は不明。
クレアとケビンもヘリに乗り込む。
へリに本職の看護師さんも乗っていて二人はアシストしていた。
心電図は問題なし。
「初期のコールドスリープは心停止の危険があるんですけど……ええ、ナノマシン投与したのは正解でしたね」
看護師さんがクレアたちをほめてくれた。
毎回死にかける俺の世話で経験値が半端ない。
そのままヘリで揺られて病院へ。
あ、タチアナの荷物まで持って来ちゃった。
まー、いいっか。
ほとんど軍のサバイバル装備だし。
病院に女性を引き渡すとただ待ってるだけ。
なぜかVIPルームに通される。
すると背広姿の40代くらいの女性がやってきた。
「大公様。ようこそお越し頂きました。事務長を務めさせていただいてるジャクリーンと申します」
「レオ・カミシロです」
「この病院は公爵家の方々の治療と研究を目的とさせて頂いています」
うーん?
それはわかってる。
公爵家専用病院。
で、暇な時間は自由に研究していい研究機関。
大学の研究者なんかの憧れらしい。
それにしても事務長さん、なんでわざわざ来たんだろう……?
「アレクシアの治療!!!」
女性化したアレクシアの治療。
してないはずは……。
「健康診断だけですが……高血圧、糖尿病、狭心症に不整脈、AGA……などなど」
「放っておけば普通に死んでたのでは?」
おっさん身体の中ボロボロじゃん。
「ところが女性化してからはそれがすべて完治してました。まるで新しく生まれ変わったかのように」
「なぜ帝国に報告されなかったので?」
「我々は公爵家の家臣でございましたので」
帝国より公爵の都合優先なのね。
報告義務があるのが公爵だから、あとは知らぬ存ぜぬで終わりだ。
過大な義務を負わせても仕方がない。
そんなのやったら後で俺が後ろから刺されるだろう。
スキャンダルをでっち上げられたりとかね。
俺は自己保身には優しい男だ。
俺も危なくなったら領地捨てて夜逃げするし。
なので深く追求しない。
それにもう事情聴取くらい受けて不起訴になったのだろう。
「わかりました。殿下には報告しますが、私も軍という組織の人間です。悪いようにはいたしません」
「なにとぞどうかよろしくお願いします」
俺も「公務員だぜ!」とアピールして理解を示しておく。
ここで捜査打ち切りっと。
政変とか暗殺とかで本当にヤバくなったらお世話になるのだ。
いざって時に手を抜かれたら困る。
事務長さんが出て行くと今度はドクターが入ってきた。
「大公閣下、担当の磯野にございます。こちらは担当看護師の中島にございます」
「よろしくお願いします」
俺の腰が低いせいか、めちゃくちゃ驚いた顔してる。
「自分、軍人ですので」
「は、はあ……」
「それで、なにかありましたか?」
「あ、はい! 患者様が意識を回復されました」
「会えますか?」
「あ、はい。もちろん」
「では今すぐ」
廊下を歩きながら説明を聞く。
クレアとケビン、それにピゲットもついてくる。
「患者様は緑色の御髪でしたのでクロレラ処理を疑いましたが違うようです」
なんだろう?
「……その、未知の技術と思われます」
「本人に聞いた方が速いようですね」
「そ、それが……」
なんだろう?
中に入る。
すでに身体の洗浄処置はした。
無菌である。
「気がつきましたか」
裸を見たことはおくびにも出さない。
堅物軍人感を出す。
「軍の方! ここは、どこでありますか!?」
思ったより若いようだ。
俺と同じくらいかな?
「惑星カミシロ本家の病院です。自分はレオ・カミシロ少佐です」
「しょ、少佐! じ、自分は共和国実験体部隊所属、識別番号ワンオーワンであります!」
はい、またもや俺の知らないところでの非人道作戦だよ!
なんなの人類!!!
「実験体部隊?」
「は、はい! 外宇宙探査型新人類人造実験【プロジェクトゾーク】であります!」
ぽくぽくぽくちーん。
「なんだとおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」
一番先に叫んだのはピゲットだった。
「ぴえッ!」
そりゃ怯えるわ。
「そ、その少佐……ここは……共和国?」
「帝国ですね」
「ぴえ! て、敵国! どうして自分が敵国に!?」
「共和国は何百年も前にたぶん滅びましたけど」
「な、何百年!?」
「実は共和国の記録もないんです……」
「ぴええええええええええええええええッ!!! ……きゅう」
あ、気絶した。
情報量にショックを受けたな。
医師に後のことは頼む。
ピゲットは近衛隊から護衛兼監視役を配置する。
病室から出てVIPルームに戻ると義兄ちゃんズと嫁ちゃんがいた。
「婿殿! なにがあった!!!」
「あー、うん、はい。ええっと……ゾークの根源見つけたかも……」
たしか、惑星サンクチュアリにグッドエンドのラスボスであるゾークマザーがいるはずだ。
だとしたら、あの子はゾークマザー?
あの残念な子がゾークマザー? ないない。
さすがに……それはないか……。
じゃあ、あの子は?
それにしても……ケビンと同じくらいでかかったな胸。
俺はケビンを見る。
うん?
ケビンも変な顔してる。
「ケビン? あの子に似てない?」
俺がそう言うとケビンも混乱した表情になった。
うううううううううん?




