第百七十八話
戦闘服に機関銃と標準装備。
バックパックには軍用の糧食とお菓子を詰めこんで遺跡調査。
軍用車で近くまで行って、警備用の人型重機も数台持ってきた。
人型重機を運んできたトレーラーも止めて調査に入る。
「なんであんたら、こんなフル装備なんスか?」
タチアナがごもっともなツッコミを入れた。
各自30キロ以上の荷物である。
なおタチアナと同じような体力の嫁ちゃんはお留守番。
「わからんか? 遊びに行くんじゃ有休の申請しなければならないが、遺跡の調査任務として軍に申請すれば給料に危険手当がつく」
報告書書くのめんどうだけどね。
そこは士官学校生。それぞれが隊長。
がんばって書類仕事をしてほしい。
「あははは! 悪いこと考えますね! そういうのはアタシにゃ無理ッス」
「うん? なに言ってんの?」
「だから管理職なんて難しいことは無理って……」
「タチアナ。お前、来年から士官学校生だぞ」
「はあああああああ?」
タチアナがよろけた。
荷物が重すぎるのだろう。
「ほれ、貸せ」
タチアナの荷物を自分のバックパックに移す。
水筒と食料なんかの最低限の荷物だけにしてかつぐ。
ちょっと重いな。
「うす。あざっす。で、なんでアタシが士官学校に入るんスか?」
「貴重なレア能力者なんだ。現場で使いつぶすわけないじゃん」
「学力がぜんぜん足りねえッス!」
「あきらめて勉強しろ。ケビンが教えてくれるってよ」
「な、姐さんの顔を潰すわけにはいかねえッス! がんばらねえと……」
悩むタチアナを後ろにいたケビンに押しつけて先頭を歩く。
みんなビーチで遊ぶのも飽きてきたので遠足には大賛成だった。
荷物重いけど。
「歌うぞー!」
「おおー!!!」
荷物重いけどみんな元気だった。
そうこうしてるうちに遺跡に到着。
惑星カミシロ本家はほとんど開拓されてない。
佐藤家が支配してた時代では佐藤家の私邸があるだけの惑星だったせいだ。
だから遺跡の調査もされてない。
俺も大公になったわけだし、ガンガン開拓していこうと思う。
遺跡は銀河共和国のものとのことだ。
でも歴史で習わないんだよな……。
研究もされてないらしく、資料もない。
遺跡の入り口を見つけた。
遺跡なんて言ってるけど、石造りのダンジョンなんかじゃない。
ちゃんとした地下基地だった。
外側はツタが覆って……葛か。
葛を鉈で撤去しながら入り口を探す。
「ドアがあったぞ!」
すぎに扉は見つかった。
基地は油圧式のドアで塞がれていた。
電子錠でロックがかかっている。
「妖精さんお願い」
「はーい」
妖精さんに解除してもらって中へ。
その前に……。
「ケビン、ドローン頼む」
「了解」
なにせ何百年も放置された可能性のある施設だ。
低酸素だったら怖い。
また佐藤家が頻繁に中に入ってた可能性もある。
そのときはゾークがいるかも……殺気は感じないから大丈夫だと思うけど。
開いた扉からドローンを入れて調査。
ドローンのセンサーから低酸素ではないようだ。
空気口が生きてたのだろうか?
なんにせよ即死することはない。
カメラにも生物の姿はない。
「侵入する」
そう言って中に入る。
みんな銃を構えて中に入る。
変態パイロットの集団だから忘れがちけど……みんな優秀なんだよね。
死線くぐってるし。
レンとかは偉い人に【頼むから射撃の競技会出ないでくれ】って土下座で頼まれるくらいだし。
「ドローンでマップ作成と索敵します」
ケビンは小型ドローンを大量に放つ。
こいつは地上かつ物資が大量にあるときだけできる。
いや禁止されてないんだけど、やっぱ補給受けられない状態だとやめとこうって話になるよね。
「奥で何か発見。ディスプレイに映します」
ライブ映像が送られてきた。
縦長の円柱形の装置。
そこに人型のなにかの姿があった。
髪の長い……女性……裸!!!
ガバッと目を隠される。
メリッサ、レン、クレアにタチアナが俺の目を隠した。
「なぜ隠す?」
「……ムカつくからよ」
クレアさん……その圧倒的説得力やめてもらっていいですか?
ちなみに俺はタチアナの目を隠してる。
ただの八つ当たりだ。
「おい、レオ隊長! おっぱい見えねえだろ! 手どかせ!!!」
「ぬははははは! 教育的配慮じゃああああああああッ!!!」
「むかつくうううううううううううッ!!!」
ベシベシ叩かれるが痛くもかゆくもない。
「……仲良し兄妹かよ」
「メリッサに言われる始末である」
さて、結局映像は見せてもらえなかったので話を聞く。
女子たちの話を聞くと「装置の中に女性が浮かんでいた。怖い。ぴえん」そうだ。
なお男子たちに話を聞くと、「おっぱいでかかった」とのことだ。
間を取ってケビンに話を聞いた。
「女性だね。なんらかの培養装置に入ってるみたい。スキャンしたけど生きてるかわからなかった」
「偉い! ケビンにはお菓子をあげよう!」
ポテチとジュースを渡す。
するとタチアナが目をキラキラさせて手を出してきたので飴とラムネを乗せる。
「ん!」
もっと寄こせと言いたいようだ。
しかたなくキャラクターものの棒付きチョコをあげる。
「さんきゅ」
タチアナはガキが食うものが好き。
心のメモに書き込んだ。
「おータチアナ、お兄ちゃんに飴もらったのか。よかったな」
「もらったー!」
完全に男子どもは親戚の兄ちゃんのように振舞ってる。
かなり甘やかしてるような気がするが……まあいいや。
ケビンはお菓子に手をつけずに自分のバックパックに入れた。
「行ってみるか~」
中は入り組んでて軽いダンジョンみたいになっていた。
端末があちこちの部屋に置かれてる。
さらにいくつもの装置があった。
「生化学系のラボみたいですね」
妖精さんがつぶやいた。
「妖精さん、なんの研究してたかわかる?」
「端末に入りますね……なんらかの実験を……人体実験? ……焼き払いましょう」
妖精さんの地雷を踏んだらしい。
「待て、まだ調査してない」
「え~、じゃあ、さっさと調査してください!」
「その前に通信。嫁ちゃんとピゲット、それに義兄ちゃんたちに【実験の痕跡を発見。戦闘になるかはわからない】って知らせてくれる」
「は~い」
俺たちは裸の美女へと歩みを進めた。
ところで……おっぱい大きいってどのくらい?




