第百七十三話
惑星級要塞が見えてきた。
惑星級要塞はその名の通りクソでかい要塞だ。
惑星サイズのコロニーに武器を詰め込んだわがままボディはぶ厚い装甲に守られてて無駄に固い。
惑星級要塞からしたら俺たちは小さすぎる。
正面から戦っても勝てない。
なので侵入して内部から破壊するんだけど、中は中で重力発生装置やらドローンやら、兵士やらが物量で押し寄せる。
さらにプラズマガトリングにミサイルにと完全武装したフルアーマー佐藤柔道が立ち塞がる。
これがまた固い。
皇帝に成り上がった佐藤柔道の猛攻は悪夢のような強さである。
このルート……クリエーターが嫌いだったに違いない。
ただ革命ルートとの違いは、佐藤柔道は皇帝じゃないし、帝国皇帝は嫁ちゃんだし、革命を起こす大義名分もなければ、嫁ちゃんは戦争も上手だし人気者だということだろう。
それに時間的余裕もないし、帝国の金を贅沢に使ったわけでもない。
見た目は同じだけど戦闘力は同じじゃないはずだ。たぶんね。
俺は惑星級要塞を目指す。
邪魔するものは倒す!!!
と思ったら、俺の進路から敵が逃げていく。
「あはははは! 隊長が強すぎて敵が逃げてきやがる!!!」
メリッサはゲラ笑い。
「ミサイル支援開始します」
ケビンから通信が入った。
「あ、ちょっと待」
敵から通信が入ったんだけど。
「発射」
あ、間に合わねえ。
逃げていった敵たちにミサイルが襲いかかった。
ケビンのスポッター能力とミサイルの数値補正は恐ろしく正確だ。
盾でがんばって耐えればワンチャン死なないかもしれないけど……。
むしろよけろ! 死ぬ気でよけろ!!!
心で祈るが容赦なく爆発していく。
……うん、ほぼ全滅だ。
だからさー、もっと前に降参してよ!
間に合わないんだって!
ミサイルくらいよけて!!!
「婿殿、合流する!」
別の部隊と戦っていた近衛隊が合流した。
「公爵軍がこのていたらく……我々が懸念してたより深刻なようだ……」
「そりゃね、本来なら前線に出る部隊じゃないしね」
そもそもだ。
広すぎるのよこの領地!
広すぎて末端の惑星まで監視なんてできない。
それは公爵領の軍事組織も同じだ。
一括管理なんてできるはずもない。
そのせいで惑星の王と勘違いしたバカが好き勝手やってたわけだ。
そのバカの一人がルートによっては皇帝にまで成り上がるのだ。
項羽と劉邦とか三国志レベルのミラクルが起きたに違いない。
あ、でも三国志の勝者は司馬一族か……。
あー、うん、アレに嫁ちゃんが負けるのか……。
本人知ってると負けるところを想像できない。
その佐藤柔道も革命軍に負けるわけだけど。
……ゾークが手を貸してたと考えた方が自然かもしれない。
さてこの革命ルートだが、大事なことが一つある。
なんにも解決しないのだ。
【ゾークとの戦いは永遠に続く】で終わりなのだ。
アホか!!!
ただただ無駄に人が死んで終わるのだ。
ある意味ゾーク勝利と言える。バッドエンドだ。
というわけでこのルートは徹底的に潰しておこうと思う。
惑星級要塞が見えてきた。
巨大だ。見た目の圧が強い。邪魔すぎる。
惑星級要塞は一夜城的な発想の産物である。
いきなり拠点ができたら恐ろしかろうと。
実際そうやって運用されたものらしい。
らしいというのは金かかりすぎて運用実績が乏しく、戦術の教科書に載せられるほどではないのだ。
つまり攻略法も開発されてない。
「婿殿、来るぞ!!!」
アホみたいな大きさの主砲が見えた。
チャージされたエネルギーがこの距離でも見える。
ぶおんっと音がした。
すでに俺たちは砲の軌道から距離をとっていた。
だけど生き残ってた公爵軍はただそこに突っ立っていた。
公爵軍を巨大なビームが包み込んだ。
公爵軍がいたところは何もかも消滅していた。
人型戦闘機も、戦艦も、戦闘機もなにもかも消えていた。
あのバカ……味方ごと撃ちやがった!!!
こちらはさんざん人数分リニアブレイザーのビーム一斉掃射を受け続けた身。
あの程度のビームじゃ被害なんて出ない。
ただデカいだけだ。
もし、よけ損なっても俺たちには秘策がある。
ビームを盾で受けつつ、すべてのスラスターをオフにして慣性で弾いてもらうという裏技がな!!!
これで人数分リニアブレイザーの攻撃も一発目だけは防げるようになった。
兵の損耗率も10%以内!(ゲームオーバーになった隊員も飛ばされた先が作戦エリア外で一発退場になっただけだ)
最初こそ地面にめり込むもの多数で悲惨な負け方したけどな!!!
ふざけた戦法に思えるかもしれないが500年前のパイロットマニュアルに掲載されてた技だ。
中途半端に抗うから死ぬのだ!
「行くぞ!!!」
メリッサが突っ込む。
メリッサは射撃はそんなに上手じゃない。
だから俺たちで援護する。
惑星級要塞から普通種の戦闘機が発進した。
俺はスナイパー仕様の大口径プラズマライフルを撃つ。
レンも同じ武器で援護する。
レンは精密射撃。
俺はもはやスコープすら覗かない。
直感で撃つ。
それでいいのだ。
「レオ! 援護します!」
だって今回はクレアが別機体に搭乗してた。
【殺戮の夜】をベースに射撃と格闘に全振りした機体。
【光翼の神拳】が側にいるのだ。
うちは俺の次に強いのがメリッサだと思われがちだがそれは違う。
うちの副長は専用機持ちだけあるぞ!
レンの射撃能力にメリッサの近接戦闘能力。
……あれ? 俺いらない子じゃね?
……気にしたら負けだ。
なるべくいい子にして下剋上されないようにしようっと。
戦闘機を片付けていくと今度は人型戦闘機がやってくる。
この物量。さすがラスボス。
「婿殿、やつらは引き受ける! 惑星級を攻撃しろ!」
近衛隊が前に出た。
俺は全速力で進み敵をよけていく。
「ふははははは! レオ・カミシロ! 相手に不足なし!!! 我は公爵ぐ……ん……」
邪魔だから蹴飛ばした。
俺は一瞥もしない。だってアホだもん。
「この恥! この屈辱! 忘れんぞおおおおおおおおおおッ!!!」
うるせえ。
実際、アホの子は実力が足りなかった。
近衛隊の攻撃を受けてあっさり爆発したのであった。
こうして俺たちは惑星級要塞にたどり着いたのだった。




