第百六十三話
訓練が終わり男子寮に帰る。
透明ゾークはカワゴンの襲来事件として大問題になっていた。
【何年も前から軍部はゾークの存在を知っていた】的な陰謀論も流布されている。
カワゴンの正体が俺だとは軍部も言えないだろう。
勝ったな!
男子寮に帰ると、部屋で嫁ちゃんが待っていた。
「久しぶりの夫婦の時間じゃな!」
「どうしたん? なんかあったん?」
いま嫁ちゃんは暇がないはずだ。
なのに俺の所に来るのだ。
なんか用事があるのだろう。
「あのな……ちょっといま問題になってての」
「なにが?」
「例のシミュレーターじゃ」
「あれねー、なんか超能力の講師にも言われたわ」
「人気すぎて生産が間に合わぬ」
「ほう……」
帝国軍人ドM多すぎ問題。
「知的財産権が問題になっておる」
「なんか難しい用語が出てきたな……」
「要するにルナに入るはずの金が問題じゃ!」
「妖精さん、特許料くれるんだって」
すると妖精さんが拡張現実に現われる。
心の底から興味なさそうな顔してやがる。
「いらねえです。こちとらマザーAIですよ。金なんていくらでも作れます。プールしてる金ありますし」
「はした金いらないって」
「だろうな」
「嫁ちゃんもらっちゃえば? 俺たちの総責任者なんだし」
「それなら婿殿がもらえばいい」
なんで俺?
たぶんルナが皇族で、俺は皇族の婿だから家族扱いでOKって事なんだろう。たぶん。
俺の知ってる民法と違うが……たぶん。
ま、いいか。
もらえるものはもらっておこう。
「税理士つけてくれるなら」
どうせ公爵領の上がりもあるし。
ここで税理士のお世話になっておこう。
「よし、では承認申請送るぞ」
拡張現実に【承認】ボタンが出現したので押す。
すると【入金しました】の通知が来た。
「いきなり入金? って、なんじゃこりゃああああああああああああッ!!!」
生涯年収くらいの額がいきなり入金されたぞ!
「ふむ、銀河中の軍で採用されるくらい人気じゃからの」
やはり帝国軍、ドMの集団じゃねえか。
「このプラグラムの、プレイヤーが強くなるのじゃ。最初は10秒かからず死ぬが、30秒の壁を突破できれば一流、1分を突破すればエースパイロットじゃ」
「プレイした人数分のリニアブレイザーが出てからが本番だと思うんだけど」
デスブラスターの一斉発射。
初撃さえ避けられれば勝てるのだが……。
「婿殿……自分が一番ドMであることを自覚してるか?」
どうやら俺がドMキングだったらしい。
「でもさー、強いゾーク出たら、あのくらいできないと死ぬんだよね~」
「急に説得力出したな……たしかに帝都の半分吹っ飛ばす必要があるくらいの敵ではあるが……」
「RPG的文法だと、一度倒した敵は普通の装備で勝たないといけないんだよね。しかも色違いのパワーアップしたやつ」
「やめろ! 婿殿が言うと本当になる!!!」
その後、嫁ちゃんと手を繋ぎながら食堂に行く。
メシよ。メシ。
いくら食べても腹が空く。
健康診断受けたけど体重は減っていた。
どうやら急激に体が作り変わってるようだ。
もともと細マッチョだったんだけど、腹筋ボコボコ。
仲間の男子どもも急激に筋肉質になっている。
女子は見た目は変わらない。
なんか俺たちまでゾークに合わせて進化してるような?
嫁ちゃんと夕飯を食べる。
嫁ちゃんもホテルのディナーよりこっちの方が好きみたいだ。
一流シェフに味では負けてるが、家庭の味だもんね。
おうちごはん最強なのである。
今日は生姜焼きにカニカマ使用のかに玉にサラダに豚汁。
タンパク質優先だわ!
でもおいしい、びくんびくん!
飯を食ってると女子がやって来る。
メリッサとレンだ。
ごはん山盛りがメリッサで、生姜焼き山盛りがレンだ。
それにケビンだ。野菜多め。
うん? いつの間に俺はケビンを女子にカウントしてるんだ?
……気にしないでおこう。
俺はカニの入ってない虚無かに玉のグリーンピース多めである。
……地元で作ってるんだよ。山盛りで頼む。
食後、余ったグリーンピースを大量にもらった。
え? カミシロ領から大量に入荷した?
お買い上げありがとうございます!
なので油で揚げて塩とうまみ調味料を振る。
作った先から腹ぺこどもに略奪されていく。
嫁ちゃんも気に入ったようだ。
見かねたケビンが手伝ってくれる。
「ふええええええええん!」
「みんな目の色変わってる! さっさと揚げて!」
ケビンに言われて作業スピードを上げる。
スナック菓子に飢えてる10代なめていた!
そこにニーナさんがやってきた。
ああ、援軍が!
ニーナさん尊い!
「あられ用のお餅もらってきたよ。作ろう!」
はい地獄。
スプレーボトルで油かけてノンフライヤーにぶち込む。
できあがったあられの調理はニーナさんに頼む。
醤油とうまみ調味料、それは勝利。
みんなが満足してから三人で余りを食べる。
「飯にするか……」
俺はつぶやく。
「もう食べたよ。お爺ちゃん」
ケビンがツッコミを入れてくれた。
「いやさー、臨時収入あったからさー、なにに使おうかなって考えてたのよ」
「いま婿殿はちょっとした金持ちじゃ」
「そりゃ公爵だしね」
メリッサはよくわからずに言った。
「だからここの飯に使おうかなと」
「使い切れんじゃろ」
「でも食材が良くなるのは嫁ちゃんも賛成でしょ?」
「うむ」
反対ではないようだ。
どうせ細かいことに使っていったらいつの間にかなくなるって。
「あとは妖精さんのシミュレーターのアップデートに使いたいなあ。細かいバグ取りとかグラフィックの最適化とかさー」
「呼びました?」
妖精さんもやって来た。
「いやさー、シミュレーターのアップデートしたいなあと。売り物になるようにグラフィックとか細かいところをさ」
「いいですね! そういうところは専門家にやってもらった方がいいですからねー。メインプログラム触ったらぶち殺しますけど」
妖精さんは本気だ。
俺の勘が訴えかけていた。
帝国崩壊フラグをどうでもいいところに仕掛ける悪意よ。
「じゃあ見積もりを……」
「やだー、手持ちの資金で足りるわけないですよー! ねー、ねー、ヴェロニカちゃん、会社作りません?」
「お、いいのう」
「レオくんの名前で銀行からお金借りますね」
「……」
一瞬にして金持ちから多額の債務を抱える身になった気分を答えよ。(10点)
A.「ら、らめ! お姉ちゃん! (借金の額が)らめえええええええッ!!!」
B.「はあああああああん! な、なにか(借金取り)来るよ~!」
C.「死亡確認」
お金って恐ろしいよね。
俺は沈黙するのだった。




