第百二十六話
俺にアレクシアを調べる手段はない。
いやだって俺は兵士だし。戦闘しかわからんし。
そういうのは公安が専門だろ。
というわけでメリッサに連絡する。
「うん了解。調査の要請しとくわ」
「俺の勘で公安動かしてもいいの?」
「うんだって、ウチにも【レオ・カミシロの勘は絶対。全力で対応せよ】って連絡来たよ」
とうとう公安公認の直感になってしまった。
「じゃ、調べとくわ」
「あー、ところで親父さんは?」
「もう元気でさ! 門弟が潰れるまで稽古してるよ。もう少し落ち着いたら戻るね。じゃーねー」
俺……アホの息子でよかった……。
メリッサんちの子だったら耐えられなかった。
次の手段は妖精さん。
「妖精さん。そっちはどう?」
「遠藤のとこの周辺。片っ端から監視カメラ切ってますね。露骨すぎて罠じゃないかなとすら思いますわ」
「で、世界一優秀な妖精さんならなんか証拠確保したんじゃないの?」
「ふふふ。レオくんわかってますね。通販サイトの自動配達ドローンの映像を手に入れました」
動画が再生される。
アレクシアが外出する映像だ。
アレクシアは自動運転の車に乗り込む。
「行き先は?」
「ウォルターの財団のパーティー会場みたいです。自動運転管理の会社のログだとここ一週間パーティーにずうっと参加してます」
「え? もしかしてウォルターのパーティーって連日やってるの?」
「朝はゴルフ、昼はパワーランチ、夜はパーティーみたいです。合うメンツはいつも文官派閥みたいです」
アホな政治家の一日かよ。
無駄の極みじゃねえか!
「なにやってんの?」
「これが大学とか、地方惑星出身者交流会とか、経済・業界団体とか、慈善団体のイベントならわかるんですけど……いまだったら軍関係とか」
アホなのかな?
いや人脈の構築知らないだけか。
嫁ちゃんはマメに軍関係のイベントに顔出ししてる。
と言ってもパーティーは少ない。
懇談会中心だ。
こういう細かいところまで気の利く嫁ちゃんは、いままで苦労してきたんだなって思う。
後宮でもそうやって味方を増やしてきたのだろう。
俺も明日は嫁と一緒にゾーク戦役戦没者追悼式に参加する。
まだ戦争は終わってないけど一息ついたタイミングでいったん行うとのことだ。
終わったら今度は公爵位叙任式がある。
帝国では領主に関しては人が爵位を持ってるのではなく、領地にくっついてくる。
ただそれも領地持たない上級貴族の存在で崩れてるんだけど。
一応、前提を遵守して7個の惑星所有の公爵になる。
分割されたのに公爵である。
橋本家がでかすぎたんじゃ!
サム兄が次の侯爵になる予定だ。
通例では俺は惑星橋本の統治者である橋本公爵になるはずだった。
でも橋本は逆賊なので領地の名前を変更。
俺は別の家を興してもよかったんだけど、めんどうだからカミシロ家のまま。
あえて言えばカミシロ公爵家でカミシロ一族の本家だ。
なんでサム兄が分家、カミシロ侯爵家の家長になる。
なお分割されたその他の貴族。
メリッサのとこは侯爵家に。
レンの実家は公爵残留。
サイラス義兄さんや大野のおっさん、それにリリィは伯爵家になった。
惑星が封鎖されて領地がなくなったサイラス義兄さんことシャーアンバー元男爵に合わせた形である。
どれも公爵級惑星なので公爵内定と思えばいい。
うむ、めんどうくさくなってきた。
アレクシアに関してはウォルターの付属品みたいにしてるって以外は調べようがないな。
「これどうでもいい話なんですけど、アレクシアはゴルフのスコア100切ってるみたいですね」
よくわからん。
ゴルフ全然わからない。
「女子でこれならすごいですよ。大学その他で習った記録はないんですけど……うーん?」
なにもかも謎である。
そもそも大学行ってないでゴルフ?
遠藤公爵家レベルならプロに習うよな?
そしたら記録が残ると思うんだよな……。
「あ、レオくん。外に誰か来ましたよ!」
「誰よ?」
「データベースによると橋本公爵家の家令です」
「嫁ちゃんに連絡して!」
「了解です!」
ホテルのフロントに連絡して家令を会議室に案内してもらう。
俺も嫁ちゃんと合流して会議室へ。
会議室には神経質そうなおっさんがいた。
「旧橋本家家令のジョーダンにございます」
「カミシロ本家家長に就任予定のレオです」
「皇女のヴェロニカじゃ」
地位が低い人からご挨拶と。
ジョーダンが頭を下げた。
はらわた煮えくり返ってるだろうな……。
一瞬で家潰されたんだもんな。
刃物抜いて刺してきても不思議ではない。
「今日は領民の助命をお願いしたく参上つかまつりました」
「うん?」
領民を殺すつもりないけど?
「婿殿、領主が帝国に弓引いた場合。領民も皆殺しなのじゃ」
「そんなんでどうやって統治すんのよ?」
「他の領地から、この場合カミシロ侯爵家からじゃな」
「え、無理。皆殺しとか無理」
倫理的以前に無駄の極みである。
「とのことじゃ、婿殿に感謝せよ」
「ははー!」
なぜかジョーダンは土下座した。
いやそういうのいいからと思って手を出そうとすると嫁に止められる。
「ここはちゃんとケジメをつけるのじゃ」
えー……実家はその辺ゆるいのに。
「面を上げよ」
「ははー!」
嫁ちゃんが命じるとジョーダンは顔を上げた。
「喜べ、我が婿の意思により貴様らの罪は免じよう。ただしゾークの検査法ができしだい、全領民の一斉検査を行う!」
「ははー!」
これはしかたないよね。
防疫措置だもん。
にしても、こんなのリモートですませばいいのに。
わざわざ来るなんて……。
「ジョーダン。なにか俺に伝えたいことがあるんじゃないですか?」
「その……こちらをお収めください」
そう言ってジョーダンは記録メディアを差し出した。
「中身は?」
「領地の裏帳簿に公爵会の名簿と文官派閥との繋がりの記録にございます」
「嫁ちゃん……なんかすごいの来たね……」
「ああ、決定的証拠じゃ……」
メリッサに送信しとこっと。
え? 妖精さんもう送ったの!?
こうして俺たちは着々と証拠を集めて……証拠が勝手に転がり込んできたのである。
……偉くなるとこういうブーストがかかるのね。




