表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

124/533

第百二十四話

 軍の礼服に着替えて出発。

 軍属なのだからなにも恥じることはない。

 もしTPOに合わなければ嫁ちゃんやメイドさんが指摘してくれるだろう。

 今回はシャツと靴だけはとんでもなくいいヤツに変更。

 腕時計も高いのらしいけど詳しくないからわからない。

 礼服もシャツも高級ホテル仕上げだ。

 服にかかった額を前にしてゾークと戦う前よりも恐怖をおぼえている。

 え? ウォルターと愉快な仲間たちはそもそも既製品じゃない? 仕立ててる?

 マジかよ……。

 文官ってそんなに儲かるの?

 親父の給料そんなによくなかったような……。

 不正ですか。あ、はい。

 車は高級メーカー製。

 こいつも人に見せびらかす系のメーカーではない。

 一見すると金持ちが乗ってそうくらいの車だけど、耐衝撃に防弾加工のほぼ装甲車。

 事故でぶつけられても相手の方がぺちゃんこになるやつだ。

 本気を出せばレースカー級の速度が出る。

 運転手も元プロレーサーの軍人だ。

 命を狙われてますと言外に宣伝しまくっているような気すらする。

 実際狙われてるし、狙われてなくても言い張ってウォルターに圧をかける作戦なんだろうけど。

 なお、俺たちの車の前後はピゲットたちのガチ軍用車に挟まれてる。

 ものすげえ殺気だ。

 ……うん、俺は嫁ちゃんと楽しくお話ししよう。


「嫁ちゃん、そのドレス似合ってる」


「そうか? 婿殿も精悍(せいかん)な目つきになったの。軍の礼服が似合うようになってきた」


 どうやら選択肢は正解。

 ギャルゲかよと。


「ねえねえ嫁ちゃん、俺は何すればいいの?」


「なにも? 夜会を楽しめ」


「本当にそれでいいの?」


 その……なんというかウォルターを半殺しにするとか。

 そういう作戦じゃなくて?


「婿殿は自分の価値をわかっておらぬ」


「価値って?」


「婿殿は救国の英雄じゃ。妾の横にいるだけで意味がある」


「まだ半分も救ってないんだけどね」


 偽りなき事実である。

 男爵子爵伯爵はそれこそ星の数ほどいる。

 彼らの領地はほぼ手つかずである。


「帝都を奪還して主要宙域を取り戻した。それだけでも救国じゃ」


 そんなもんかねえと思いつつ会場に到着。

 会場は帝国徴兵保険組合所有の施設だ。

 元は帝国が迎賓館として作ったものだが老朽化で組合に払い下げられた。

 現在では帝都崩壊のどさくさに建設当時の姿で再現された。帝国の金で。

 つまり最近できた新しい施設である。

 民間風を装ってるが実質的に国営施設である。

 大きな和風建築の門を通り中へ。

 迎賓館は明治時代風の巨大な洋館である。

 帝国の建物にありがちないかがわしさはなく、とても品のある建物になっている。

 ……やればできんじゃん。

 軍部くんさ、わかる? これがデザインよ!

 おめーら、なんでも紅白にすりゃいいと思ってやがるだろ!!!


「やだこの庭園……しゅごい……あとで見て回りたい……」


「婿殿は趣味が渋いのじゃ……」


 迎賓館内部の会場も品があった。

 ほんとさー、やりゃできんじゃん!!!

 中には遠征に参加しなかった公爵会の残りカスに関係ない公爵。

 それに各役所のお偉いさんに有力な侯爵や伯爵が参加していた。

 大臣クラスは少ない。

 遠征で死にまくって後釜が決まってないらしい。

 軍部からは高倉大将閣下と俺。

 露骨な敬遠である。

 中に入るとトマスがいたので挨拶。


「本日は……」


「挨拶はいいよ。君と私の間柄じゃないか!」


 笑いながらトマスはパンパンと俺の肩を叩く。

 さすが人柄のトマスである。


「ヴェロニカ、そのドレス似合ってるよ」


「ありがとうご存じます。兄様」


 会場では偉そうな貴族と文官が戦況についての中身のない話をしていた。

 中身がないとわかるのは知識が追いついてきたからだろう。

 アホだなとは思うものの憂国がうんたらと偉そうに言う気力はない。

 その貴族どもと目が合った、

 なぜかコソコソ逃げ出した。

 おまけに公爵会の残党も俺を見て逃げた。

 なんだろうか?

 異常なほど恐れられているような。


「レオくん、今の見たか? 公爵が逃げ回ってるよ」


 トマスがそう言うと嫁ちゃんも楽しそうな顔をする。


「さすが婿殿。眼光だけで雑魚どもが逃げ出したわ!」


 俺が極めてフレンドリーな生き物であるというのは公開情報だ。

 そう妖精さんに性癖シャウトを公開されてしまったのだ!

 なぜか世間ではAIによるディープフェイク扱いだったけどね!

 だれも信じねえの!

 なのにこの状態よ!

 俺にビビリ散らかす部分ねえぞ!

 ゾークじゃあるまいし……。

 ……待てよ。


「嫁ちゃん、逃げ出した連中に監視つけて」


「どうした婿殿?」


「俺見てビビるってことはゾークじゃ?」


「うむ、一理ある。兄上」


「わかった。監視をつけよう」


 小者が逃げると会場に司会のお姉さんがやってきた。

 美人だなと思ったら即座に嫁が脇腹を肘打ちした。

 最近になってちょっとだけ嫉妬してくれるようになった。


「ウォルター殿下のご挨拶です」


 ウォルターがやって来た。

 元気がなさそうだ。

 俺たちがいない間、帝都で地盤固めをしてたはずだ。

 有利になったと思ってイキリ散らかすかと思ったんだけど。

 ウォルターの定型文での挨拶が終わる。

 そんなウォルターの横には美女がいた。


「遠藤公爵の娘のアレクシアじゃ」


「……ほう」


 それは凄まじい美女だった。

 そう、美女なのだ。

 なのに心が動かない。

 ミサイルみたいな胸部装甲なのに……。

 ……うん? ミサイルみたいな胸部装甲?


「嫁ちゃん。ものすげえ意味不明なこと言っていい?」


「なんじゃ? さっきから様子がおかしいぞ」


「美女なのに……。心の主砲が反応しない。まるでケビンを見たときのように」


「婿殿はなにを口走っとる?」


 そう心のギャラクティカマグナム44が完全沈黙してる。

 賢者タイムなのである。


「アレクシアちゃんってさ……昔から女だった?」


 もうね、ケビンのツラしか浮かばない。


「婿殿なにを言って……根拠胸ェッ!?」


 そう胸だけなのだ。

 あの巨大なお胸。

 それだけが根拠なのだ。

 根拠が薄弱にもほどがある。

 俺だって頭おかしいとは自覚してるのだ!


「……わ、妾を胸を根拠に動かすとは……あ、あははは……だが婿殿の予感じゃ。正しいのじゃろうな……はぁ……」


 嫁ちゃんが盛大にため息をついた。

 ……ごめんね。

 いつも残念な夫で。


「なんの話だ?」


 トマスはわかってないようだった。


「あのな兄上、婿殿はなアレクシアが敵のスパイじゃないかって疑ってるのじゃ」


「は?」


「前に人型ゾークに殺されかけての。それに似てるんだと」


「……レオくんがそう言うのなら……たぶんそうなのだろう。わかった調査しよう」


 トマスまで俺を無条件に信じ始めた。

 俺を疑ってるのは俺だけ状態なの本当にやめて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
残念ながら無駄に高性能な危機感知能力が囁く以上はね そして当たり前の様にガッツリと食い込まれている帝都 ……問題は……人をゾークに変えた女って奴だよなぁ。話の流れ的に多分アレの可能性が高そうだし………
遠藤公爵の娘、と思わせて実は公爵の息子……と更に思わせてから実は実は公爵自身だった!てオチだったら爆笑しそうな気がするけど流石にそこまでやらかさないよねw
考えるな、勘(を信)じろ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ