第百二十話
どうやらゾークは人間にリーダーがいることは知っているらしい。
つまり嫁ちゃんを潰せば俺たちが瓦解することは理解しているのだ。
……どの段階で俺たちが危険な群れと認知されたのかはわからない。
でも潰そうとしていると思う。
ゾークが雑に俺たち人間を理解してるように、俺たちはゾークを理解してない。
だから最後は推測でしかない。
でも潰そうとしてると思う。
さらに言えば危険な群れ……いや……ある程度管理された群れが帝国だ。
もしかするとゾーク的には人間の養殖場や実験場なのかもしれない。
ゾークがなにを考えてるかなんて人間には理解不能だろう。
でも帝国の管理はされている。
ウルトラ無能な麻呂を皇帝につけたり、操っている公爵会が権力を握るようにした。
俺んちみたいにジェスターの子孫に冷や飯を食わせながらも監視下に置いた。
だから俺はゲーム内のシナリオではゾーク侵攻で真っ先に殺されたし、エッジの放っていけば何の害もない惑星を焼いた。
ジェスターのアリッサを殺すためだけにだ。
おそらく自覚してない裏切者は公爵会だけじゃないだろう。
そして今度は嫁ちゃんが邪魔になった。
ああ、その考えは正しい。
嫁ちゃんがいなけりゃ俺たちは空中分裂だ。
俺は戦う意味がなくなる。
どこかに逃げるだろう。
そうゾークは思っていやがるのだ。
……ざっけんな!!!
絶対殺させねえぞ!
嫁が怪我でもしたらゾーク皆殺しだ!
宇宙港にはカニが待ち構えていた。
男子どもが戦っている。
「レオ! こっちだ!」
妖精さんが知らせてくれたのだろう。
男子どもは俺が嫁ちゃんのとこに向かっているのを知っていた。
俺がカニを蹴散らしていく。
出発できねえだろが!!!
ジャギュレイターで真っ二つにしていく。
さらに近づかれたら肉弾戦でカニをボコボコにしていく。
カニを片っ端から地獄に送った。
戦闘が終わると警察の機体はボコボコになっていた。
特に足の関節がバキバキになっていた。
もうこりゃ乗れんな。
宇宙港の中へ。
「お前の専用機だ」
いつもの専用機が用意されてた。
「欠陥兵器だがボルトスロワーしかねえ。持っていけ」
酷使される専用機かわいちょ。
というわけで専用機にバーニアつけて出発!!!
「クレアちゃん向こうだから今回は私が複座ね」
妖精さんがムフーッっと鼻息荒くした。
楽しそうである。
「妖精さん、嫁ちゃんは」
「固有の生体反応あり。クレアちゃんもだよ」
生きてる!
よっしゃ!
やるぜ!!!
宇宙に出る。
と言ってもすぐ近くに嫁ちゃんの船がいる。
でも様子がおかしかった。
だって巨大な顔が貼り付いていたのだ。
……橋本だ。
「ゆ、ユルサンゾ!」
嫁の船も負けてない。
主砲を顔に一斉射撃する。
「ぎゃあああああああああああああッ!」
顔は悲鳴を上げるが、効果は薄そうに見えた。
嫁の船に近づくと通信が入る。
「婿殿! 来たか! レーダーに映らない敵じゃ!」
毎度、毎度、やたら芸に細かい連中だ。
今回はステルスかよ!
「気がついたら接近されてた……いや妾の船の近くで巨大化した!」
くそ!
橋本の野郎!
宇宙泳いでくるくらい嫁のことが大好きなのか!
……ぶち殺す。
これがエロゲだったらNTRフラグが立つところだった。
「わかった! ボルトスロワーで……効くのか?」
「効くとは思うが豆鉄砲じゃ! 先ほどの主砲も効果はほとんどない!」
うっわ、巨大ボスってどうやって倒してたっけ?
なんかイベントがあるんだよな……。
……ない場合ってどうすんのよ?
どうにかなるか!
俺は橋本に近づきボルトスロワーを発射!
表面は焼けたがあまり効果はない。
だめじゃん!!!
すると通信が入る。エッジだ!
「レオ! 今から行く! アリッサが言うには超能力をぶつけるしかないって」
おっと、そういやエッジは超火力の超能力者だ。
でも……。
「ぜんぜん訓練してなかったけど……大丈夫なのか?」
「アリッサと訓練してたけど正直自信がない……」
ですよね!
すると妖精さんが通信に割り込んできた。
「ああ、もう! 私がフォローします! まかせてください! これでも私、高レベルの超能力者ですから!」
「……AIなのに?」
「えっと……私、実はバラされた体が帝国中央サーバーの配線に使われてまして……なんと元は人間でした!!!」
「ええー!!!」
「まあまあ気にしないでください! さあエッちゃん! お姉さんの胸に飛び込んで!」
「エッちゃん……? お姉さん?」
ですよねー。
妖精さんはメスガキですよねー。
決してお姉さんなんて生き物じゃないですよねー。
「……レオくん」
妖精さんが底冷えする冷たい声を放った。
「なんすか?」
「メスガキって言ったらレオくんが予約してる【黒ギャルVS人妻忍者】の情報をヴェロニカちゃんに送信するから」
「やめて! タイトルが面白いからつい買っちゃっただけで!」
決して黒ギャルが好きなわけでは……好き!!!
人妻忍者も好きなわけでは……好き!!!
あれ? 問題があるのか?
ああ、でも嫁ちゃんにバレるの恥ずかしい。
一緒に鑑賞はまだ……その……一線越えないと……その。
「クレアちゃんにも送信するから……」
「あ、やめてください! マジで!」
クレアさんは冗談じゃすまないのでやめてください!
俺は空気は読む男よ!!!
なおノーダメージ枠はメリッサである。
一緒に鑑賞してくれると思う。
ただえっちな気分になったら気まずいからしないけど。
とアホな妄想を繰り広げてるとエッジがやって来た。
「レオ! ジェスターの能力で増幅してください」
「ほえ?」
そんなんできるの?
待って、どうやるの?
「レオくん! 集中して!」
集中!
でもどうやってやるん?
「えっちなことでも考えてください」
え……嫁ちゃんのメイドコス。
うおおおおおおおおおおお!
「今までにないパワーだ!」
成功してる?
「レオくん! もっと煩悩をたぎらせて!」
……なにを考えれば?
メリッサの無防備な! 無防備ショットを!!!
「レオ! 出力が下がってます!」
「レオくん! なに考えた!」
「あ、うん、ケビンのおっぱいのことが頭によぎったら急に冷静に……」
「バカー!!!」
し、しかたなかったんだじゃー!!!
俺は別に考えてないのに頭に浮かんじゃったんじゃー!!!
そのときだった。
【賢者タイムによって覚者になりました。あなたはジェスターでありながら賢者である存在になりました】
ふぁ?
なにこのシステムメッセージ。




