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第十二話

 たしかにRPGだったらランクの低い素材が大量に出てきてもうれしくない。

 素材を売るだけだ。

 だけどSLGなら話は別だ。

 弱くても数をそろえられる。

 もうこうなると一国の軍隊レベルの能力だ。

 そうするとジェスターってのは……。ジャンル違い?

 魔王討伐の勇者パーティーには入れないけど、魔王軍との戦争だと主力クラス。

 羅刹の銀河も基本がRPGで艦隊戦とかはおまけだったからなあ……。

 ……考えるのはよそう。


「婿殿。睡眠薬じゃ。今のうち寝とけ」


「まだ大丈夫。ピンチになったら代打で出るかもだし」


「妾は指揮をせねばならぬ! いいか! ちゃんと休めよ! 婿殿が倒れたら総崩れだからな!!!」


 どうやら嫁は嫁なりに俺の心配をしてくれたようだ。

 クレアは言われたとおり仮眠に入る。

 皇女殿下に世話されるとか、数日前だったら考えられなかっただろう。

 なので俺はドーピング。

 まずは医務室にあった医療用ドローンを経口摂取。

 それと首から血管に注射器で直接ナノサイズのドローンを注入する。

 細胞の急速再生が開始する。

 薬の方がマイルドで安全だけど、こっちの方が即効性がある。

 毒々しい色の薬なんか飲んでられっか!

 脳内物質をコントロールして疲労感を軽減。

 同時にタンパク質を合成。

 筋肉を修復する。……らしい。

 たまに心臓発作で死ぬので通常なら推奨されない。明確に禁止だ。

 摂取するだけでも軍事法廷案件だし、死人が出たら責任者の銃殺刑もあり得る。

 けど今は戦闘中。

 こういうのも許されるわけだ。

 拡張現実のメニューから校庭のカメラのライブ映像を見る。

 塹壕の中にクラスの連中がいた。

 機関銃や迫撃砲の班と練習機に乗車した班がいる。

 標準装備は実弾の豆鉄砲(ライフル)

 見てる俺でも不安になる。

 過呼吸を起こしてるものが何人もいた。

 戦闘になると不思議と止まるよね。不思議なことに。

 メリッサのとこにカメラを切り替える。

 こっちは練習機カスタムだ。

 近接武器持って突撃する部隊だ。

 リロードや補給の際に出て戦線を押し上げる役目だ。

 金属の板で手足、それに頭を補強。

 接近戦用のブレードや槍で武装してる。

 俺はスピーカーに切り替える。


「メリッサ! 無茶すんなよ!!!」


 するとメリッサの機体がスピーカーでまくしたてる。


「うるせえ! レオ、おまえは俺の母親か!?」


「母親じゃねえけど俺はおまえの友だちだ」


「おま、そういうところだぞ!!! おまえ本当にそういうところだからな!!!」


 思いっきり照れてる。


「……ったくよ。俺はおまえに借りがあるんだからな!」


「借りってなによ? 実習のときのは気にすんな。艦長の役目を果たしただけだ」


「違え! そっちじゃねえ! おっと敵が来た!」


 警報が鳴った。

 メリッサたちが配置につく。

 するとメリッサから通信が入る。


「おいレオ! もう一度聞くぞ! 俺で欲情できるな!?」


「なんだよ!? できるに決まってるんだろ! いつも俺はおまえのケツを見てたぞ!!!」


 はいそこ!

 そこの男子ぃ!

【このセクハラ野郎め!】って顔しない!

 メリッサが聞いたんだから正直に答えただけですぅッ!!!


「お、そうかそうか。通信繋げとくわ。脳死会話しようぜ」


 そう言ってメリッサはブレードを抜いた。


「抜剣! 突撃ぃッ!!! お前らレオに負けんなよ!!!」


 メリッサの率いる接近戦部隊が突撃した。

 この隙に工兵班が爆薬を設置する。

 後ろから乱暴にドアの開く音がする。


「婿殿! 我らも行く! 婿殿は休め!!!」


 おっさんどもだ。


義親父(おやじ)ども! 学生が突撃した! すぐに行ってくれ!」


「無論だ! 皆の衆行くぞ!!!」


 おっさんたちがドドドドドと音を立てて戦場に向かう。

 俺はなんだか嫌な予感がしていた。

 メリッサがゾークに斬りかかる。

 ブレードは装甲を切り裂く刃だ。

 ゾークにも有効なはず。

 メリッサはゾークの関節部分を切り離していく。

 一撃一撃がゾークの戦闘力を奪っていく。

 男子どもも同じだった。

 さすが学生と言えども近接戦専攻だ。

 俺より上手い。

 連携もできていた。

 勢いと気合だけの俺とは違う。

 メリッサから通信が入る。


「おうレオ! 話聞いてくれっか?」


「どうした」


「いいから。俺の母親さぁ。俺が生まれた直後にさ、親父の弟子と駆け落ちしてさ」


 いきなりヘビーなの来た!!!


「お、おう……」


「たぶん浮気相手の子なんだよな、俺。ぜんぜん親父と似てねえし。だけど親父はDNA鑑定しなかったんだわ。バカだよな」


「そんなことねえよ! なにか事情が……」


「いやバカだ。だってよ、母親似の俺の顔……まともに見ようとしねえんだよ。親父も兄貴たちも」


「兄貴たちも損したな! きれいな顔してるのにな! メリッサの顔見ると元気になるのにな!」


「あはは! 褒めてくれんのか! おまえそういうとこだぞー。あはははは! でさ、俺さ、親にも褒められたことねえんだわ。顔もなにもかも、外見すべて。嫌そうな顔すんだよ。女みてえにするとさ」


「ば、バカ! メリッサ! 俺はおまえに欲情してる!!!」


「そーかー」


「メリッサ俺たちも!!!」


 男子が割り込んだ。


「あはははは! 俺知ってんだよ。おまえら男子のほとんどが士官学校ブス頂上戦の候補に俺を入れてたこと……許さねえからな。あはははは!」


 きゅん!

 俺の分身が縮み上がった。

 怖い!!!

 それ完全にネに持ってただろ!?

 絶許だったろ!!!

 めちゃくちゃ怒ってるだろ!!!

 正直言うね。

 俺、レオはそういうバカな会話をする友だちがいなかっただけだ。

 嫌われ者だった俺は……そういう悪ノリからハブかれただけなのだ。

 場面が違ったら俺も加わっていたかもしれない。


「あ、あのメリッサさん。そのくらいで……誘われなかっただけで俺ももしかしたら……悪ノリに……」


 俺だって聖人じゃないのよ!

 むしろ性格悪いんだから!

 男子のそういうのは思春期特有の病気なの!

 許したげて!!!


「でもさ、レオは俺の悪口言わなかったろ? それでいい。それだけでいい。俺が欲しかったのはそれだけなんだ。うんざりなんだよ!!! 俺を見てブスだのなんだのっていうヤツも! 俺を見て浮気者のビッチにそっくりだとため息つくクソジジイもよ!!!」


 メリッサが叫んだ。

 それは魂の叫びだった。


「俺は女だ!!!」


 メリッサがゾークに蹴りを入れた。

 体勢を崩したゾークに渾身の一撃が突き刺さった。


「おい! 皇女殿下! 聞いてっか!? 帰ってきたらおまえの旦那くれ! 俺を旦那の愛人にしろ! 嫁にしろなんて言わねえ! だけど俺を女扱いしてくれるのはレオだけなんだ!!!」


 お、おう。


「たしかにレオは偏屈で、ムッツリスケベで、おまけにそれを隠し通した道化野郎だ! でも俺が知ってる中で一番の男だ!」


「よく言ったメリッサ! 妾の義理の姉妹になるがいい!!!」


「嫁ぇー!!!」


「婿殿うるさい! 貴様は妾の婿じゃ! この妾のために生きよ!!! ハーレム王でもなんでもなれ!!!」


 横暴だー!!!


「あははははは! 殿下ならそう言うと思った!」


「メリッサよ! これだけは胸に刻め! レオの最初の女で最後の女は妾じゃ!!!」


「あはははははははは! 殿下大好き!」


 笑い合う俺たち。

 だけどそれは突然終わった。

 警報が鳴り響いた。


「ありゃ、やっぱり耐えられなかったか」


 メリッサがつぶやいた。

 メリッサの機体の膝部分がベきりと折れた。

 練習機ではメリッサの動きに耐えられなかったのだ。


「婿殿! おまえの女じゃ! 絶対に助けよ!」


 俺は飛び出す。


「あたしも!」


 クレアもやって来た。

 メリッサ、いま行くからな!

 死ぬんじゃねえぞ!!!

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― 新着の感想 ―
ナノマシンじゃなくてドローン注入しちゃうんですね。
さぁ楽しいステゴロの始まりだ… 唸れ必殺パイルバンカー!!←ステゴロじゃない
うっははははは!!本っ当に面白い!死亡フラグ、仕事して下さいよ?
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