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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第百十八話

 敵の気配はない。

 なんとなくこの敵のことがわかってきた。

 やつらは死にかかってる。

 肝臓も腎臓もない。

 慢性の腎疾患を抱えている患者は透析しなきゃすぐ動けなくなる。

 肝臓だって肝不全起こせば地獄の苦しみだ。

 つまり死ぬような苦しみの中で殺意だけ燻らせてる状態だ。

 ゾーク……容赦ねえな。

 やつらは本能に支配されて地獄の苦しみの中襲いかかってくる。

 戦闘能力は人間寄り。

 外皮は硬いが刃物は通る。

 ジャギュレイターがよく効く。

 頭は四つに割れて口になってる。

 口の中は牙だらけ。こいつで獲物をかみ殺す。

 ただし消化能力は失われてるので食事はしないと思われる。

 兵士が二人いればなんとかなる戦闘力ではある。

 ただし見た目がたいへんおグロくあらせられるので精神がガリガリ削れる。


「リリィはどこだ?」


 どこかで戦闘してるはずだ。

 まだ余裕あったけど。

 区画の出口から別の区画に侵入する。

 奥に進むと銃声が聞こえた。


「おい! 進むぞ!!!」


 ヒューマさんが飛び出す。

 奥にはリリィがなにものかと交戦していた。


「お嬢!」


「ヒューマ! 手伝え!」


 なにものかが襲い……って変身した公爵か!

 俺とヒューマさんは問答無用でジャギュレイターをぶっ放した。

 丸ノコが胴体に着弾、公爵は動かなくなった。

 本当にこいつら攻撃力全振りだよな。


「なんだそいつは!」


「どっち? 武器? それとも敵?」


「いやだってその武器……人型重機用だろ……人間が使う武器じゃねえだろ……」


 なんかデカいなと思ってたんだ。

 ロケットランチャーみたいに構えてたし。

 妙に重いし、反動大きいし!


「ヒューマさん?」


「お嬢……言わないでくれよ。大尉が気づいちまったじゃねえか」


「そりゃよ、改造人間のヒューマなら大丈夫だろうけどよ。レオ……あんた生身だろ?」


「生身ッスよ。つか改造人間?」


「ああ、自分は準男爵級の開拓惑星出身でしてね。過酷な惑星で生きるにゃ改造手術が必要だったってことっす。つってもクロレラによる筋力強化だけですぜ」


 改造人間けっこういるな。

 超能力者である俺も似たようなものではあるけど。

 一応天然ものってだけで。

 ……あ、でもよく考えたら外来種なのか。

 ジェスター、アメリカザリガニ説。

 なんかテンション下がってきたぞ。


「アライグマの構え!」


 きしゃー!


「なんすか大尉……」


「いえ、落ち着こうと思いまして。それで生身で使っちゃいけない武器だったと……」


「ま、気にすんな! そういうこともあるよな?」


 ないと思う。

 リリィはテキトーな性格のようだ。

 なんだろうか……フィーリングが合う。

 ボケとボケなのに。


「それで、なにがあったの?」


「ああ、敵と交戦してたんだが数じゃこっちが多いんだが決め手がなくてな。ビーム兵器は弾かれるし、実弾兵器は弾少ねえし」


「それで動けなかったと」


「そういうこと。ホバーボート送るくらいの余裕はあったけどな、なんにせよ助かったぜ! おう、お前女好きなんだってな。ニーナの婿になるか?」


「ニーナさんを汚さないで!!! ニーナさんはクラスのその他大勢になって、えっちな目で見ながら【俺だけがニーナの魅力に気づいてる。世界はまだニーナの魅力に気づかない。デュフフ……】ってやるのが至高なんだろ!!! クラスの半分以上が魅力に気づいてるのに!!!」


「お前屈折してんな! 性癖の化け物か!?」


 その自覚はある。


「まあいいや。お前殿下のこと好きみたいだし」


「好きッスよ」


「言いきったね」


 言い切りますとも。

 嫁ちゃんは誰にも渡さない。

 俺に手を差し伸べた最初の女子だ。

 絶対に手を離さない。

 NTR展開だけは絶対に許さない。


「わかったわかった! ほら行くぞ!」


 そう言ってリリィと外に出る。

 外。

 外なんて言ってるけど、コロニーの中だ。

 ただコロニー内の建物内じゃないから外と表現してる。

 外では避難の真っ最中だった。

 民間人でごった返している。


「おいおい、こんな状態で敵が出たらどうすんだよ……」


「リリィさん! それフラグ! フラグだから!!!」


 実際フラグだった。

 交通誘導の兵士と目が合った。

 上等兵。

 士官学校の生徒じゃない。

 トマスの遠征に参加した兵士だろう。

 その後ろでヨタヨタと歩く人影があった。

 公爵だ!

 俺はカトラスを抜いた。

 ジャギュレイターじゃ民間人に当たる!

 ヒューマさんもカトラスを抜いて突撃した。

 ガパッと公爵の頭が開いた。

 交通誘導してた一等兵に噛みつき振り回す。

 俺たちが目前に迫ったその瞬間、公爵は一等兵を放り投げてきた。

 キャッチするわけにもいかず避ける。

 上等兵を避けた俺は公爵に斬りかかる。

 今回はガラ空きの胴!

 一発じゃ斬れねえ!!!


「おらあああああああああああッ!!!」


 後ろからヒューマさんが斬りかかった。

 弱点は背中だ!

 俺を突き刺そうと肋骨が伸びてきた

 俺は蹴りを入れる。

 そこにヒューマさんが一撃を浴びせた。

 制圧完了。


「ふう、二人いりゃ安定しますね」


「そうですね大尉」


「いやいやいやいや! お前ら二人ともおかしいから!!!」


 リリィに突っ込まれた。

 ボケツッコミが逆転したようだ。


「兵士を避けて連携とか人間じゃねえから!!!」


「いやなんかやりやすいんですよね。大尉と組むと」


「って、リリィ! 一等兵の救護!」


「おっと! 医療用ドローン要請っと。おい生きてるか!!!」


 一等兵は意識を失っていた。

 死んではないようだ。

 辺りをよく見ると様子がおかしい。

 あちこちから悲鳴があがっていた。


「クソ! 公爵だ!!!」


 もはや公爵が罵倒語まで落ちた。

 俺たちは近くの悲鳴があった場所へ急ぐ。

 変身した公爵がいた。

 いやもはや公爵かどうかもわからないんだけど。

 コロニーに紛れこんでたってわからない。

 とにかく化け物がいた。


「止めるぞ!!!」


 人々の悲鳴が上がる。

 俺たちは突撃した。

 ああ、俺たち完全に後手に回ってる!

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― 新着の感想 ―
>もはや公爵が罵倒語 草w
なんか最後の方上等兵と一等兵が混在しています。 どっちなん?と聞きたくなる感じで。 おのれこの公爵野郎、しにくされ! 公爵は消毒だー! もうこの帝国から「公爵」って位失くせば良いのでは?ってくらいに…
[良い点] クソ!公爵だ!!←公爵がもはや敵性エイリアンと同義。 良い意味でB級映画的なコミカルさに笑ってます!
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