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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第百七話

 数日後。

 トレーニングと書類仕事に追われる日々を過ごした。

 ようやく人型戦闘機の修理が終わったと連絡があった。

 次どこよ?

 それが問題だった。

 現在俺たちは休暇になった。

 館花子爵領を解放したら周囲の惑星からもゾークが逃げていった。

 そこで家族に連絡を取ることにした。

 士官学校の連中のほとんどが家族の無事……もしくは死亡を確認できた。

 家族が亡くなった生徒たちは嘆き悲しんだ。

 だけど俺に恨み言の一つもなかった。

 毎回俺が死にかけてるのを見ているためだ。

 むしろ未だに士官学校の仲間に犠牲者が出てないことを感謝される。

 メリッサも親同然の人たちを何人も亡くした。

 でも俺や嫁ちゃんを責めることはなかった。

 逆につらい。

 せめて誰か一人でも俺に石投げてくれればな。

 俺も嫁ちゃんも士官学校の連中もピゲットですら……誰も【こうすれば良かった】という案を持ってない。

 むしろ現在の状況はうまく行きすぎているくらいだ。

 俺は要塞の士官用個室のソファーでぐったりしてた。

 俺のヒザには嫁ちゃんが頭を乗っけて寝そべっていた。


「せめて誰か文句言ってくれよ……」


「帝国の上層部を恨んでも、婿殿を恨む理由がないからな。婿殿は大尉の権限を考えればベストを超えた結果を出しておる。むしろ妾の方が責められるべきじゃ。命令無視してこっちに来ることもできたのじゃ」


 嫁ちゃんもぐったりしてる。

 思うところはあるのだろう。


「命令無視したら空気読めないウォルターが討伐隊編成してトマスと俺たち巻き込んで全滅する可能性があるって言ってたじゃん。無理だよ……」


 文官どもはこの期に及んで戦況を理解してない。

 そもそも停戦自体が不可能だっていうことすらわかってないのだ。

 だから未だに足の引っ張り合いを続けている。

 嫁ちゃんを殺せると思ったらノコノコ死ににやってくるだろう。

 しかも一部のバカ貴族も合流してイキリ散らかしてる。

 仲間も死にまくってるのになに考えてんだあいつら……。


「八方塞がりじゃ……」


 嫁ちゃんがため息をついた。

 ウォルターは殺したら殺したで敵討ちを大義名分にして文官とアホ貴族が暴走する。

 なんだろうね!

 無能が帝都に居座ってるこの現状!!!

 現在、帝都では暴動が多発してる。

 ウォルターの【こりゃダメ感】が市民にまで伝わっているせいだ。

 警察まで市民の味方をしてるのだから笑えない。


「それじゃ未来の話」


「婿殿は子ども何人欲しい?」


「そっちじゃねえよ。次どこ行くの?」


「直接トマスを逃がそうと思う。艦隊戦を覚悟せねばな」


「宇宙空間で戦ったことない」


「大丈夫じゃろ。婿殿じゃし」


「なにその根拠のない信頼!!!」


「だってトマスの艦隊は足止めどころかボコボコにされておる。つまり誰も勝ったことないのじゃ。それに効果のある兵器さえあれば婿殿は無双するじゃろ」


「うわぁ……」


「なあに、トマス兄様だけ救出すればいいのじゃ」


「あとの貴族は?」


「盾にするに決まっておるじゃろ。こんな無謀な作戦立てた無能は一人残さず死ぬべきじゃ!」


「マジっすか?」


「当たり前じゃろ。己のために皇族の命を利用したのじゃ。失敗など許されぬ。失敗したのだから根切りじゃ……」


「仲間にする……とかは?」


「無能はいらぬ。それに若くて有能で軍事に明るいものがこの船にたくさんいるのじゃ。家だけ残して首をすげ替えればいい」


 怖ッ!!!

 嫁ちゃんはリアルガチ本当にキレてた。

 やだ! たまたまタマタマがきゅんってしちゃう!

 もはや自分でもなに言ってるかわからない!!!


「そうじゃの。まずは大野とリリィを侯爵にしようかの。さすれば能なし貴族どもにも妾の本気がわかるじゃろ」


 ぎゃおおおおおおおおおおおおおおんッ!!!

 嫁ちゃんの今までたまりにたまったフラストレーションが爆発した。

 なんかカミシロ家が生まれた経緯もこんな感じなのだろう。

 ホント運だけで生きてるよな。我が実家!!!


「えーっと妖精さん。男子どもに【嫁さん見つかりそう】ってメッセージを一斉送信しといて」


「はーい。【殿下がお嫁さん世話してくれるって。なお断ったら処刑されます。あしからず】っと」


 娘いりゃ強制的に結婚だな。

 死んでも嫁にしようとするだろうな。

 男子どもは俺と同じ立場(たねうま)になったわけだ。

 祝ってやろう。


「返事が返ってきましたよ。【そういうシチュエーションも! びくんびくん!】だそうです。おおむね好評です」


 バカでよかった。


「あー……ケビンちゃんから返信です。【ぼくどうすればいい?】ですって」


「……どうしようか? 嫁ちゃんケビンどうする?」


「知らん! 婿殿の所有物じゃ!」


「まだそのネタ引きずってるの!? もうそろそろ市民権復権させてあげたら?」


「大きい胸がムカつくから嫌じゃ」


「まさかの私怨!!!」


 わざわざ起きた嫁ちゃんがぷいっと顔をそむけた。

 よほど胸のことを気にしてるようだ。

 背も伸びてきたしそろそろ胸も大きくなるだろ。

 嫁の胸は俺のものじゃー! ものじゃー! ものじゃー! ものじゃー!

 そういやコスプレの約束どうなった……?

 コスプレーコスプレーコスプレー!!!


「ヴェロニカちゃんは気にしすぎだと思いますけどねー。私なんか物理的な胸囲ゼロですよー」


 妖精さんが余計なことを言ってゲラゲラ笑う。

 お、おう。


「と、とにかくトマスを助けに行くぞ!」


「了解ッス!」


 しばらくだらだらして嫁ちゃんは自分の部屋に帰っていく。

 通い妻状態である……。

 それはいいとして艦隊戦……。

 とうとう銀河で英雄的な戦いが始まることになったわけである。

 問題はゾークがどんな兵器持ってくるかだよね。

 巨大ゾークとか。

 おそらくカニちゃんを送り込んでくる戦術なんだろうけど。

 そういや艦隊戦ってどうやるんだっけ?

 ゲームの方じゃなくてリアルの方。

 教科書読み返しておこうっと。

 人間相手の戦いしか書いてないけどね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ケビンちゃんはペット枠だから浮気にならないのね
[一言] 嫁とトマスと分離独立を目指したりはしないのかしら
[一言] 一応軍人(大尉)が「そういや艦隊戦ってどうやるんだっけ?  教科書読み返しておこうっと。」とか言ってて草 まぁ学生だったし仕方ないんだけど…
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