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第百四話

 奥に行くとメリッサパパと合流できる。

 あ、そうか。

 獲物が分散すると肉をおびき出せないかもしれないのか。

 合流しないとまずいな。


「メリッサ、やっぱり行き先変更。探索しながら敵を倒すんじゃなくて親父さんと合流しよう」


「ここで倒すんじゃなくて?」


「敵は元人間だけあって知能が高いはずだ。おびき出したら親父さんの方を襲うと思う」


「うん、わかった」


「陸人さんもいいですね?」


「わかった。それで行こう。親父たちは最奥の司令室に立てこもってるはずだ」


 というわけで司令室へ向かう。

 ビビリの俺は無駄とわかりつつもドローンで探索。

 どこにもいねえ。

 なんにも映らねえ。

 あとは自分の直感頼りだ。

 盾を出して進む。

 今いるメンバーで円陣組んで全方位警戒しながら進む。


「……いきなり襲ってきたりしてね」


 ぼそっと言っただけなのにみんなに怒られる。


「隊長が言うとシャレにならんのよ!!!」


「レオくんホントやめてくれませんか!!!」


「レオ……さすがにフォローできないわ」


「おめーさー!!!」


 トドメに陸人さんも。


「レオくん……さすがに不謹慎だと思うよ……」


 フルボッコである。

 冗談のつもりだったのに。

 でも場は和んだ……嘘です、お通夜状態になった。

 空気悪くしてごめんね……。

 みんな無言で奥に着く。


「帝国軍信号送ります」


 問題なく認証された。

 子爵領の家臣が変身したのだ。

 もしかすると通らないかなと思ってた。

 でもそういう細かいとこ担当じゃなかったようだ。


「俺だったら通風口から来ると思わせて正しい信号使って正面突破するけどな……」


「ホントそういうとこですよ!!!」


 なぜか妖精さんに怒られた。


「ゾークより隊長と戦いたくないわ」


「ひどくね?」


「でもレオがリーダーじゃなければ私たち生き残れなかったと思う」


 クレアだけは優しい。

 油圧の扉が開いていく。

 中には刀や銃を構える人型戦闘機が待ち構えていた。


「レオ・カミシロ大尉だ! 皇女ヴェロニカの命で馳せ参じた!!!」


 俺はスピーカーの音量を最大にして声を張り上げた。

 本当はピゲットのおっちゃんの方が偉いんだけど、俺の方が世に名が知れてる。

 なので俺が名乗りを上げた。

 ちゃんと事前に話し合いしたよ。


「面倒だ。婿殿がやれ」


 だってさ。

 すると侍たちが武器を下ろしてくれた。


「本当に人間……だよな……」


「親父! 俺だ!」


 メリッサが叫んだ。


「なんで来やがった!!! さっさと逃げろ!!!」


「うるせえ! 俺の知ってる中で最強の男を連れて来た!」


「だ……だが!」


「俺たちで……弥七おじさんを救ってやろうぜ」


 そう言ってメリッサは親父さんにボルトスロワーを渡した。


「俺たちは何をすればいい?」


 親父さんも腹が決まったようだ。

 俺たちはヤツをおびき寄せる。

 ただ俺たちがここにいればいい。

 肉はここにしかない。

 あとは俺のセンサー頼りだ。

 俺は神経を研ぎ澄ませた。

 前に襲われたときを思い出せ。

 殺気は小さかった。

 なぜなら俺たちは獲物だからだ。

 殺そうという殺意はない。

 敵は姿と殺気を消すことができる。

 だけど大きすぎて動き回るタイプじゃない。

 つまり本来なら待ち構えて狩る生き物だ。

 だが……。


「来る」


 俺は断言した。

 ああ、そうだ。

 お前らゾークは追い回す狩猟スタイルだ。

 ケビンもそうだった。

 俺に毒を飲ませれば殺せたのに直接手を下そうとした。

 俺が一番死に近かったのは妖精さんの薬だ。

 毒殺の方が確率が高いはずだ。

 だがゾーク化すると自分たちの狩りのスタイルから離れられなくなる。

 これは深刻なバグだろう……いや違う生物なのだから当然か。

 正しいの基準が違うのだ。

 ガタタ、ガタタと音がして、部屋が振動した。

 やはり狩りのスタイルと能力のミスマッチがある。

 透明化能力は音を立てないで獲物に迫る生き物じゃなきゃ意味ないんだよ!!!

 俺はボルトスロワーを通風口に向け……違う、上だ!!!

 俺は真上にボルトスロワーをぶっ放した。

 空気を切り裂く雷鳴がして眩い光が天井を焦がした。

 ぼたりと破片が落ちてくる。

 効果あり!

 炎より効いてるかもしれない。


「う、上だ!!!」


 俺に遅れて仲間たちがボルトスロワーを一斉に放った。

 焼かれた肉が透明化を解いた。

 そして部屋の全貌が見えてきた。

 天井の空気口からどんどん肉があふれてくる。

 他の通風口からも肉があふれてきた。


「コロシテ……コロシ……テ……」


 肉から顔が浮かびあがってきた。

 それは日系の中年男の顔だった。


「弥七おじさん!!!」


 メリッサが叫んだ。

 だけど俺はその顔めがけてボルトスロワーをぶっ放した。


「メリッサ! 無駄だ! 話し合いになんかならねえ!」


 電撃を受けてバンッと顔が弾け飛んだ。

 だけど、あの顔はできものみたいなものだった。

 中には肉がつまってるだけだった。

 俺には確信があった。

 ケビンとは違う種類の殺気。

 動物が獲物を狙うときのような殺気だ。

 カニちゃんと同じ種類の殺気だ。

 ケビンみたいに葛藤などはない。

 なにか言葉を口にしてるが意味などない。

 電撃が肉を焼いていく。

 一部は放電で弾け飛んだ。

 あ、こりゃ思ったより有効だ。


「いいいいいいいい、痛い」


 肉が触手を伸ばしてきた。

 スライムみたいなヤツだ。

 俺は盾で触手を払う。


「メリッサ続け!!!」


「隊長!」


 俺は足からチェーンソーを抜いた。

 肉を斬って斬って斬りまくる。

 近衛隊や男子は肉に電撃を放っていた。

 触手が俺の手首に巻き付いた。


「肉、にくうううううううううう!!!」


 俺は脱力する。


「喰らえやああああああああああッ!」


 ワンインチパンチ。

 苦手意識があるのか肉は一瞬、固まった。

 顔が出てくる。


「痛い、痛い、痛い……」


 その声は恐怖だった。

 目が俺を見ていた。

 そのとき俺は理解した。


「メリッサ!!! その顔は本物だ!!!」


「うおおおおおおおおおおおッ!」


 メリッサが跳んだ。


「おじさん……ごめん!!!」


 刃が首に食い込んだ。

 メリッサの刀が首を刈った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらずギャグとシリアスのバランスが良いです。 [一言] いつも楽しみにしています。
[良い点] >その首はモノホン これで弥七さんの遺伝子情報をゲット出来たらクローン再生→復活させてあげられる可能性が出て来ましたかね?
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