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第百三話

 倉庫で怪我人の救助をする。

 できれば怪我人を外に出したい。

 なので男子の半分を怪我人の搬出任務に割り当てる。

 男子どもは不満そうだったけど言うことは聞いてくれた。

 俺はクレアと休憩。

 整備班の点検を見ながらカロリーバーを食べる。


「衛生兵の講習受けたのって誰がいたっけ?」


「ケビンくんだよ」


 クレアは苦笑した。

 コロニー民は無料でさえあれば限界まで資格を取る傾向がある。

 俺みたいに金を出してまで講習を受けないが、無料のものは絶対に受講する。

 ケビンも同じで衛生兵の初任者研修に整備兵にオペレーターに広報にと講習を受けまくっていた。

 なので戦闘面よりも裏方で活躍してる。

 というかケビンがいないとシフトに穴が空く。

 絶対に外せないメンバーである。

 シフト表作るときもケビンの休みを真っ先に考えねばならないほどである。

 つまり怪我をされると困るのだ。

 いくら衛生兵持ちでも前線に出せない。

 なので運ぶしかない。

 男子たちはフロートボードに要救助者を乗せて運んでいく。

 俺たちは見送りして探索に出る。


「行くぞーい」


 まずはドローンで探索。

 でも通路にはいないんだよね。


「陸人さん。肉はわかったんですけど、弥七師範がゾークになったってのは?」


 陸人さんの機体と通信する。


「……バカバカしい話だと思うかもしれないが……あれは数日前のことだ。弥七師範が化け物になった」


「女性化したのではなく?」


「え……なにそれ?」


「これ機密なんですけど、突然女性化したやつに撃たれて死にかけましてね。どうやらゾークは俺たちの中に遺伝子から改良したスパイを放ってるらしいんですわ」


「……そのスパイは?」


「今日のシフトは衛生兵ですね」


「なんで殺さなかったの!?」


「友人なんで殺すの嫌だなと判断保留してたらなんとなく許したカタチに……」


「キミ実は内政苦手だろ。血も涙もない戦闘狂って聞いてたのに!?」


「いやほら……被害者俺だけだったんで、もう俺さえ黙ってればいいかなと」


「キミさ、侯爵家の当主だよね!? それで許されると思ってるの?」


「むしろ侯爵家の権力で事件をなかったことにできないかなあと。ほら、舐めてきたアホは殺せばいいだけですし」


「極端! 行動が極端!!!」


 どうやら陸人はツッコミ気質のようだ。

 怒濤のツッコミを浴びせられた。


「とりあえずキミが身内には異常に甘いのはよくわかった。今度はこっちの話だ」


「あ、どぞどぞ」


「弥七師範は化け物になった……あの肉だ。最初は化け物の形をしてたんだが……いきなり崩れて」


 ……あ、いま嫌な予感がした。

 もしかしてケビンや全員女性になった惑星とかまだマシだったんじゃ。

 そりゃそうだ。

 短期間での女性化なんてうまく行くはずない。

 ケビンが適合者で異常なのであって、弥七師範のように化け物になる方が確率的には高いのでは?

 待てよ……あの寄生体とかって。

 俺は嫁ちゃんに連絡する。


「なんじゃい婿殿。その喜怒哀楽どれにも当てはまらないのに凄まじい表情は」


「あの肉、ケビンのなれの果てだった……」


「……詳しく話せ」


 俺は詳しく話した。

 要するに変身失敗すると化け物になるよってことだ。


「わかっていたことではあるが……本当にやつらは我ら人間を実験動物だと思ってるようじゃの」


「明らかに知性はあるんだけど交渉の入り口にすらつけない感じだよね。人間とザリガニくらいの遠さというか……」


「……やつらにとっては実験体がどうなろうとかまわぬのか。我らが現地生物を捕まえたときのようにな」


 そりゃ人間の方もだ。

 捕まえて解剖くらいはしてるだろう。

 人型ゾークに関しては嫁とトマスが非人道的な扱いを禁止する内部通達を出してる。

 そんなのバレてみろ。

 士気がだだ下がりになる。

 俺たちは【いきなり侵略してきた悪の生物ゾーク】と戦ってるから士気が高いんだっての。

 それがついさっきまで一緒に暮らしてた人間を実験動物にしたなんて知ったら兵士のやる気など一瞬でなくなるだろう。

 麻呂のやってきたことだけでも爆弾だというのに。


「つうわけで戦闘戻るわ」


「ボルトスロワーは装備したな」


「うん効果あるかまではわからないけどね」


「うむ、無理せず生きて戻れよ! 婿殿はいつも死にかけるからの!」


「がんばるー」


 報告が終わるとドローンでのサーチも終わった。

 光学カメラに映るものそれが問題だった。


「このシーンですね」


 妖精さんが解説してくれる。

 ドローンのカメラにはなにも映ってない。

 だけど次の瞬間、なにもなかった通風口の壁に肉が貼り付いていた。


「……光学迷彩?」


「とてつもなく透明なんだと思いますよ。超音波に映らなかった理由はわかりませんが……厄介ですね」


 侍が簡単に倒された理由がわかった。

 彼らはおそらくメリッサよりも強い。

 でも負けたのだ。

 おそらく不意を突かれたのだろう。


「どうすんのよ、これ」


「うーん……この肉ですが元人間で高い知性を持ってると言ってましたね。だったらレオくんに苦手意識があるんじゃないかな」


「インチキワンインチパンチで?」


 たぶん人間の頃なら相手もできたぞ。

 それどころか呼吸力だの合気だのまで使えたんじゃないかな。

 対角線のコーナポストまで届くロケットキックとか。


「インチキでも威力は本物ですし」


「逆に俺を執拗に狙ってくる可能性は?」


「……」


「黙らないで。不安になるから」


「それいいかもしれませんね」


 あ、俺、いけにえの予感。

 でも不可視の存在とどう戦えばいいんだ?


「それにしても学習能力が高いですね。攻撃さえしなければドローンに発見されないのを理解してます」


「自爆する?」


「有利な場所で戦いたいんで、こちらも見つけてないフリします」


 当方も学習能力ありと。

 相手がゾークだと思うと戦略が意味不明だけど、人間相手ならある程度読める。

 俺の方も作戦考えないとな……。

 やるか。

 なにをするにせよあの肉は邪魔だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] >>対角線のコーナポストまで届くロケットキックとか。 何処かの『最強の素人』『プロレスができる御曹司』もできたし、余裕やろ(狂。 ギャグ作品に見えて敵設定がエグ過ぎなんよ…
[一言] 更新お疲れ様です。応援してます。
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