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あとがき

 本作『ゴブリンバトラーTAKERU』(以下、ゴブリンバトラー)は、児童の健全なる育成を目的として書かれた作品である。

 昨今、親が子になろう系小説を読み聞かせるのは一般常識となりつつあるが、如何せん性的表現や猟奇的表現に傾いた作品が余りに多すぎる。それらのエログロ系に触れることが児童の生育にどういった影響を齎すか、ここで詳細に言及するつもりはない。また、本作だけでこの大きな潮流を払拭出来るとも思っていない。然しながら、この刺激的な――余りにセンシティヴな風潮に一石を投じる価値はあるだろう。



 『ゴブリンバトラー』におけるテーマは「正義」である、「友情」である、そして「愛」である。わかりやすく、ありふれたテーマであるが、だからこそ手強い。正義は時に独善となり、暴力となる。友情は時に忖度となり、徒党を組ませる。愛は時に憎しみとなり、怨恨となる。だからといって我々はこれらの諸観念を否定すべきではない。むしろ判然とした悟性を以て大いに突き詰め、肯定していかねばならぬものだ。その肯定の方法論こそが『ゴブリンバトラー』に書かれているものといえよう。主人公タケルの言動、一挙手一投足に込められたものは、正にこれらの具体的方法の数々なのだ。

 私は一言一句とて、無駄な言葉は使わなかった。平易な言葉は心がけたが、細心の注意をもって単語を選定し、語句を当てはめ、文章を紡いだ。「方法」とは徹底された論理の先にあるものだ。透徹した知性の行き着く先でしか存在出来ぬのが真なる「方法」なのだ。これを獲得した時、人類は新たなステージへと到達するだろう。

 果たして『ゴブリンバトラー』によって我々はその地平へと近づけたか。それは読者諸氏の判断に任せたい。



 ゴブリンの象徴性に関してもここで触れておくべきであろう。彼らが今迄に負わざるを得なかった穢きイメージの数々は殊更言うまでなかろうが、私は敢えてそれに挑戦した。ゴブリンを人類――子供たちの友として描くことで、象徴性の転覆を狙っている。これは子供たちの認識そのものとも言えよう。児童らは時に、大人たちの思いもよらぬ視点を投げかけ、我々の価値基盤を転倒させる存在といえる。いわば児童達の視点そのものが本作品におけるゴブリンの象徴なのである。この観点において子供=ゴブリンの図式は出来上がり、子供たちはゴブリンそのものとなる。この認識を踏まえた上で、身近にいる子供達を御覧いただきたい。ゴブリンに見えてきたことであろう。しかしそのゴブリン共は決して凶悪な存在ではない。あなたに笑顔を投げかける、優しきゴブリン達なのだ。



 ところで、登場人物には全て参考にしたモデルがいる。主人公であるタケルは、恥ずかしながら幼き時分の筆者をモデルとした。あの頃の私――正義感に溢れ、友情に厚く、勉学に励み、誰からも人気であった私を、上手く落とし込めていると思っている(多少喧嘩っ早かったことは欠点であるが……)。

 友人のミツルは、小学校の頃の親友であったMを参考にさせてもらった。私ほどではなかったものの、非常に頭の良い奴であった。今では弁護士となり大層活躍しているようだ。話を聞けば、どうも財界の著名人からも一目を置かれる存在らしい。そんな彼も未だに私には頭が上がらないようで、飲みに行った時はいつもペコペコと頭を下げてくる。私は対等に会話がしたいというのに、全く。

 女の子のカナコちゃんは、Kちゃんという子がモデルである。彼女も小学時代の友人の一人だ。非常に美人であったが、それが故に男子共から頻繁にちょっかいをかけられていた。スカートめくりなどという破廉恥極まる性的被害すら受けていた。正義感に溢れた私が、それらの加害行為から助けてあげたことは言うまでもない。見返りに尻を揉ませてもらった。無論、同意の上である。



 なお、投稿後に小学館あたりから書籍化やコミカライズの打診が来ると予想されるが、あらかじめお断りさせて頂きたい。『ゴブリンバトラー』は貧困層の子供たちにこそ届けたいと思っている。それに子供達にこの作品を「買わせる」などという下卑た行為をさせてはならぬ、そうした信念からである。公共的価値のある財産は、平等に与えられねばならぬのだ。そのため本作はパブリックドメインとし、私は著作権を放棄するつもりである。

 そもそも財産の所有自体が間違っているのだ。それらは争いの火種を振りまくものだ。所有がために我々は疑心暗鬼となり、心にいらぬ壁を作っていく。人類は所有放棄の思想の元、徹底した財産共有制度からなる、劇的な社会体制を――歴史が失敗してきた諸思想とはまるきり違う、新たな体制を目指さねばならない。それには大いなる指導者が必要だ。――それは誰か? ここでは敢えて言うまい。が、正義感に溢れ、友情に厚く、勉学に励み誰からも人気の人間でなければならぬ、とだけ言い添えておく。



 最後に。

 重ね重ねになるが、本作は児童の健全育成を目的として執筆されている。なろうユーザーはほぼ全員無職の引きこもりらしいので、子を持つ親は極わずかだろうが――もしまかり間違ってあなたに子供が出来たなら。どうか本作を読み聞かせて頂ければ幸いである。きっとあなたも、そしてお子さんも、幸せに包まれながら眠りにつけると保証する。……それはこの作品だけに限らぬことであるが。

 畢竟、読書体験とはそれ自体が幸福なものなのであるから――。

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