第3話 第二の人生
生まれた時から偶に頭痛が起こることはあった。
そして、1週間前くらいからは頭に鋭い痛みを感じることが多くなった。
最初は、どこかに頭をぶつけたっけなと疑問に思いながら、頭に治癒魔法をかけるだけだった。
しかし、三日前くらいから頭痛が起こる頻度がまた多くなったと感じ始める。
幼馴染の2人で冒険者を始めパーティーを組み、Cランクパーティーまで上がることができてすぐのことであったため、こんな大事な時期に、少し体調が悪いからと言って依頼を受けないことなどできない。
今日もそんな思いでゴブリン退治に向かった。
ゴブリンくらいなら多少体調が悪くても、何匹きても倒せる。
洞窟に向かう途中、レイが狼に襲われて足を噛まれてしまうというトラブルもあったが、治癒魔法をかけて布も巻いてあげたので、依頼には支障はない。
頭が痛いと言っている私に気を取られて怪我をしてしまったので、謝りたかったが私の口はいうことを聞いてくれなかった。
ゴブリンくらいなら、ゴブリンくらいならと、いざゴブリンの住処である洞窟に入るが、そこにはゴブリンはいない。
神隠しにあったかのように空っぽの洞窟に、戦わなくていいという安心以上に、不安な気持ちになった。
不安な気持ちを消すために、洞窟内のゴブリンの生活の跡を調べる。
すると、ゴブリンの血らしき青い液体が少量広がってるのを見つけた。
「あ、まって!血の跡がある!」
レイにゴブリンの血があることを伝えた時、今までにないほどの痛みが頭を刺す。
いつもとは違う痛み。
我慢できない痛み。
頭を刺す痛さと、ハンマーで殴られたかのような鈍痛が同時に私に襲いかかる。
「うっ……。痛いっ……!」
私はたまらず膝をついた。
レイが駆け寄ってきて声をかけてくるがよく聞き取れない。
帰ろうの言葉だけかろうじて聞こえる。
「う…うん……」
レイには何度も止められたのに私のわがままで依頼を受けた。
痛いけど我慢できないほどじゃない。
依頼に支障はない。
そう言って体調も完璧ではないのに、冒険者としての活動を優先した。そして、この様だ。
魔物が出るかもしれない状況で膝をつき、正常な判断、素早い行動ができないという大失態。
レイに対して申し訳ない気持ちが湧き上がる。
だが、その気持ちも更なる痛みに流された。
痛い……!!
あまりの痛みに唇を噛んでしまい、口内に鉄の味が広がる。
レイが何かを叫ぶと、体に強い衝撃を受け、私は地面をバウンドしながら転がった。
しかし、その衝撃すら頭の痛みによってどうでも良くなる。
物を考えられないほどに痛みが強くなり、頭がおかしくなりそうだ。
永遠とも感じる痛みに悶えていたが、その痛みが消えるのは一瞬であった。
「はっ……?」
先ほどまでの痛みが嘘みたいに消えるが、驚愕の感情で脳内がいっぱいになる。
おもむろに体を起こすが、頭の整理には時間がかかりそうだ。
今自分に起こっていることと記憶の整理に戸惑う。
「リナ!しっかりしろ!!」
レイの言葉で彷徨っていた意識が現実に引き戻された。
僕は………
転生したのかもしれない。