第一話 久しぶりの出会い
自我がなかった。でも気づいた時にはもう遅かったんだ。僕を置いて桜は咲き、新しい出会いが生まれ始める。そう、僕以外はみな、
大学生になってしまった。
「自我が芽生え始めたのは受験のちょっと前くらいだった。僕はそこそこの進学校に通っていたが、勉強はまともにしていなかった。文系科目は苦手、というより反復しないから覚えられないのは当たり前。数学や物理は授業で理解すれば、テストや模試はなんとかなったので適当に理系を選んでいた。うちの学校は高3になると理系と文系でクラスが分かれる。学校全体では女子の方が多いが、理系クラスとなると約七割が男子となった。健全な男子にとってこれは辛いことだが、僕はなんともなかった。別に、強がっているわけではない。何も考えていなかった。他の人の趣味に興味を持てないように。今思えば思うほど、あの頃の自分が怖い。今はもちろん女の子が大好きだ!
話が逸れてしまったが、、、あー逸れたしもういいや。自我とか関係なしにあの頃は頭おかしかったし。割愛しよーっと。もーこの堅苦しいナレーションとかはいいや!塾の最初の説明みたいなのも終わったし、明日からここで浪人頑張るんだ!!」
自分の現役時代にナレーションをつけ、それをepisode0にしながら、ゆっくりと歩き予備校が入った大きなビルから出ようとする。すると、
「りょーすけ??」
そうそう僕の名前はりょーすけ
え?
後ろから呼ぶ声がする。びっくりして振り返ると、
「やっぱりりょーすけだ!久しぶり!」
「え、え?あ、ま、まどか?!」
良介は驚いた。そこには今生きていた中で、一番仲良くしてくれた女子が立っていた。
「え、なんか大きくない?また身長伸びた??」
「あぁ、180は超えたかも」
『やっぱり?小学校の時は私と同じくらいだったのに〜」
笑いながら楽しそうにしている
「いつの話してんの」
僕も笑う。お互いに笑いながら僕は思った。
自我のある今なら断言できる。この子は可愛い。
「てか、こんなとこで何してるの?も、もしかして浪人?」
「あはは、そうなんだよね。あんまりうまくいかなくて。」
「ご、ごめん』
「てかりょーすけもってことでしょ。このビル予備校と会社しか入ってないし。」
まじか、同じ予備校とかまじか!良介は舞い上がった。てことは、一緒に勉強したり、一緒に帰ったり、進捗とか報告しあったり、、、。単純すぎる自分を軽蔑しつつ話し続ける。
「まじか、一緒に頑張ろう」
「そだね!てかさ、りょーすけはどの予備校行くの?」
「え、〇〇塾じゃないの?」
自分の心の中で緊張が走る。なるほど、まどかはまだちゃんと予備校決めてないんだ。体験とかで来たのか?頼む、同じところに!
「えー、違うところだ〜。残念」
あらら、もう決まってるんかーい。違うところなんかーい。終わった。まどかもがっかりしていたが、その倍の倍以上に悲しかった。
「でもこのビルから出てきたってことは〜塾じゃないの?」
彼女は答えた。
「このビル三つくらい塾入ってるよ」
盲点!曇天!承知ガッテン!
くそつまらないようなことを行って心を落ち着ける他なかった。
僕の学校はそこそこ進学校で大手予備校に行くと割引があった。だから家から近いそこに決めて他の塾をしっかりとは調べていなかった。
「まじか、このビルにそんな入ってたのか」
動揺しまくる心を落ち着けながら、平然を装い話し続ける。