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LEAD  作者: ヤジン
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会議4


「『候補生』になろうがならまいが、それは個人の自由だ。なぜお前はそんなに躍起やっきになっているんだ?他人事で済む話のはずだが」


明日人にやや執拗しつように付きまとわれる浅見は、口で抵抗をした。


「…躍起になっている…だと?…何言ってやがる…。俺はお前の心配をしているんだぜ!?自分から幸福になる人生を捨てたお前は大馬鹿だ!俺ら側につけばっ…!」


「ホッホッホ…明日人君や…少々熱くなっておるようじゃな。落ち着きなされ」


独特な笑い声と共に、円谷校長が冷静になるように促した。


「円谷校長……」


「…浅見和人君。君の秀才っぷりは一目置いておる。自分のことをよく考え、考えが改まったらまた儂のところへ来てほしい。歓迎するぞい?」


「……」


返答せず、退出していく直前、周りのやつらに気づかれない程度に浅見はこちらに一瞥いちべつした。目でこれから起こる危険性を訴えている、そう見えた。


「…行ってしまったのぉ…明日人君や」


優秀な人材を手放した喪失感。そんなことを思ったのだろうか、円谷校長は残念がる様子を見せた。


「……仕方ねぇっすよ。……本当に勿体ないっ!」


怒りを露にし、明日人は机を強く叩いた。


「あ、あの…会議の方はどうするのでしょうか? …議題から逸れた話が上がってて……私たちが理解できない話になっているのですが…それで…何の話をしているのでしょうか?」


怖気ながらも涼は勇気を出し、円谷校長に問いかけた。


「…そうじゃったな…お主らにはあまり関係ない話をしてしまった、すまないのぉ…、ホッホッホ」


「……えっと…先ほどから一体何の話を…」


「…いやぁ~、最近の子は立派な子が多いのぉ~」


涼への質問をスルーし、ここまできても自分の素性を一般生徒に知られないような振る舞いをした。ごまかす手段としては下手だが、先程の恐怖感が涼たちに植え付けられているため、これ以上詮索はできないと思わせることができている。


場の雰囲気の作り方が上手い。自分の特徴や個性、長年の経験を得て確立された技術と言うものだろう。敵味方問わず外見では接し方を統一し、重要な話の時は

声のトーンや話し方を巧みに変える。そしてその話術によって『候補生』らを自分の駒として洗脳させ、円谷組織内の『基礎的訓練』は『応用的訓練』に何か繋がりがあるのは確かだ。


この『応用的訓練』に関しては注意深く探っていく必要がある。何せ、その訓練はオレも受けたことがなく、英国科学研究所と円谷組織の二つの組織で秘密裏で行われているという噂でしかない。噂だけあって深いところまで調べがつかずにいる上に、デマという可能性もある。調査に時間を費やすかどうかの判別が難しい立ち位置だ。



ここまで来て敵の懐がだいぶ明らかになってきた。早い段階で動き出すことは予想はしていたが、銀二に続き円谷側も似たタイミングで行動し始めてきたのは偶然だろうか。




昨朝の銀二の奇襲。

円谷組織の急速な戦力拡大。



SSFが円谷組織を狙っていることは明らかだが、円谷組織はSSFだけでなく、他の組織にも対抗しているかのような姿勢を示している。SSFが一番の難敵にもかかわらず、他の組織を優先して倒す行動は見えている。SSFを警戒することも大事だが、それ以上にオレや円谷組織は奴の方に焦点を上げるべきだろう。


銀二は自分の野望のためにSSFの人間として、円谷組織を何としても叩こうとするだろう。国の保護は二の次で、英国科学研究所に囚われている妻の香を救出するために感情で動く場面も多々あるだろう。


銀二の書斎に潜り込んだあの日、情報を完全に盗めなかったイレギュラーが発生した。その頃からオレのことを敵対視し、こちらの手の内の幾らかが知られてしまった。


あいつは高等教育高の中でも円谷校長や赤坂教頭と一番距離が近く、『協力者』でもある平野先生を利用し、敵の情報を得てきた。その過程で平野先生と偶然関わってしまったオレに気付き、その背景に岡本研究所の存在があると、あいつなりに推測を立てたのだろう。


そしてオレが『協力者』である沖谷教授や須賀教授に接触した際に、彼らの監視の者に目をつけられた。直接監視されたわけではないが、公共交通機関を利用した者全ての足跡一つすら見落とさない、SSFが所有する最大のビッグデータを基にオレを追跡した。この考えなら筋が通るし、間接的に岡本研究所と関りがある線は、これ以外で知ることはできないはずだ。



そして、岡本研究所とオレの関係性を知ったあいつの行動パターンは更に絞られてくる。



極めつけは昨朝の襲撃の時だ。あいつは思わぬ場面でこちら側が香の存在を知っていることをジーニの口から聞いた。命を削り、そのことを誰にも知られないように奮闘してきたあいつは、自分の努力が全て無駄になったと、そう思ったに違いない。SSFの人間ですら知らないはずの自分の妻の事情が、岡本研究所に知られている。このことだけであいつが作り上げてきた、固く丈夫な内面の壁にヒビ割れさせるには十分だろう。そしてこの先ボロが出ていき、近いうちに内面が露になるはずだ。



ここまでは当初の予定通り、許容できる事態に収束しつつある。



円谷組織を銀二よりも早く始末し、復讐心で動いていた銀二を混乱させる状況を作る。同時にSSFの指令部の機能を下げ、SSFを壊滅させる。


そのためにこちらとしても円谷組織同様に、早い段階で戦力を拡大していく必要があった。急ぎ足で行動した分、見落とした箇所があったのは否めないが、些細な問題でしかない。


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― 新着の感想 ―
[良い点] こんばんは。ヤムですTwitter企画からきてます! 4話まで読ませて頂きました。 1話から非常に良くねられたお話です。 [気になる点] 話数ごとに分割した際に、 小説のテンポは良いと思…
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