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LEAD  作者: ヤジン
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会議3


「…どんなクラスか教えてくれるかな…? 理仁君」


「……」


意外なことに四組の学級委員長は学年随一のトラブルメーカーである天王寺谷理仁だ。生徒の代表的立場に彼が立つなど分不相応極まりないと、誰しもが思ったことだろう。会議の場だというのに両足をテーブル上で組ませる態度は悪い意味で流石だなと思う。


「理仁君…聞いているかい?それと……姿勢を正しくしてもらいたい」


「……」


聞き耳を持たず、目を閉じてニヤ気顔を浮かべている。


「寝てる…のかな? じゃあ他の三人の誰かが彼の代わりに教えてくれないかい?」


「……」


他のやつらも反応を示さない。

金髪サングラスの天沢一輝あまさわかずきは耳にイヤホンをし、先ほどから音量だだ洩れでスマホをいじっている。一方、黒いハットを被った青髪の直江新太なおえしんたという男はファッション雑誌を夢中に読んでいる。どちらも制服を改造しており、比較的緩い校則にも普通に抵触するような身だしなみをしている。


「…全く、三人ともどうしようもないな。代わりに俺が話そう」


他の三人とは違い、真面目な雰囲気がある浅見が起立した。


「…浅見君だね。陸上競技部での活躍はたびたび耳にしているよ。…最初から真面目で誠実な君に聞けばよかった」


「ふん、陸上はこの場で関係ない話だ。…クラス事情については、言うまでもなく誰がどう見ても問題児が多く集まっている。おまけに個性が強すぎる連中が大半を占めている。他クラス他学年に迷惑をかけているのも事実だ」


「ホントそうだよな…四組は色々と終わってるぜ。オレら三組に喧嘩吹っ掛けたり、カツアゲしたり、噂では俺たちのクラスメイトである根本一義をボコボコにしたって話だ」


「その噂の信憑性ついてはよく分からないが、今後気を付けるとしよう。…小笠原明日人…だったか?三組はよく他クラスをけなす傾向があるようだな。そしてこの場におけるマナーもなっていない。…お互いにな。その他の生徒も挙手し、司会や校長の許可を得てから進言をすることは常識なはずだが」


「へっ…言うねぇ~文武両道を掲げる真面目さんよ。硬すぎる考え方ではこの先やっていけねぇかもよ?何事も臨機応変に、時にはマナーとかを無視したやり方をしねぇとな。……ま、そこの問題児三人みたいにはなりたくないけどな」


「最後の発言にだけは同感だ。…青柳、話は逸れたが四組のクラス事情については以上だ。それと、俺はこれから部活に向かう。後のことはこの三人に任せる。無論正常に機能しないとは思うがな」


「そ、そっか…分かったよ。部活頑張ってね」


「失礼する」


そう言ってあらかじめ持ってきていた運動用具を持って行こうとすると、


「…待てよ」


三組席の後ろを通りかかったとき、素早く明日人に右腕を掴まれていた。


「何か用か?」


「へぇ…こりゃ驚いた。なかなか喧嘩強い腕してんじゃねぇか」


「用がないなら離せ。不快だ」


「青柳!こいつへの質問時間をもらいたい。重要な話だ…いいよな?」


急に名前を呼ばれた本人は驚いた。


「…あ、うん。時間はまだあるからいいよ」


「…んじゃあ…許可とったことだし、お前に聞きたいことがある」


「今すぐ練習に行かなければならない。悪いがまたの機会にしてくれ」


「…いいのか? お前が大事にしてきた仲間がどうなっても……」


ヒリついた緊張感に包まれる中、不穏な発言が明日人から繰り出された。


「ハッタリでも何でもないぜ? お前たちの周りに敵がゴロゴロいることは薄々気づいているだろ? こんな風に俺らが平然と他クラスを貶したり、脅迫出来たりしてんのもそういうわけだ」


単なる悪ふざけではなく、正真正銘、命を奪う覚悟を持ち、人を殺した経験があると物語っている言い分であった。それは浅見にもよく感じ取れるものであっただろう。


「にわかには信じられんが、人を殺すことに抵抗がない人間みたいだな。おまけにその口ぶりから察するに、俺とその仲間とやらの事情もよく知っているみたいだな」


「お前の事情とやらは比較的どうでもいいことだけどな。……ま、重要なのはお前がした選択についてだ。…質問に答えなければ、一年二組の永野雄也と柏木智、生天目喜一。仲間…いや、親友ら三人の生首をお前の目の前で見せてやるよ」


そう言われ、明日人に掴まれた浅見の腕には力が込められていた。


「…質問とはなんだ?」


「なぁに、聞きたいことは一つだけだ」


勢い良く立ち上がり、明日人が座っていた椅子が後退し、ガタンっと大きな音が響いた。音は教室中に響き渡り、やがて空気の重さと共に静まり返った。


明日人は周りを気にもせず、顔を上げ、その鋭い瞳が浅見の目を捉えていた。


その視線に気後れせず、彼もまた明日人を直視していた。



「……なぜ、お前は円谷校長からの推薦枠を蹴ったんだ?『候補生』として高校生活を送れる方が将来安泰(あんたい)なんだぜ? 俺たち三人や一組の連中らは二つ返事で承諾したけどな」



この場で円谷校長と接点がない者は何のことかさっぱり分からないだろう。


『候補生』とは円谷校長独自の判断で選ばれた優待新入生のことだ。

『候補生』になった生徒は高等教育高の入学試験全免除、校内外における金銭面の援助。難関大学進学や、安定した進路が確立されたフリーパスみたいなものが特典される。


調べたところ一組と三組に『候補生』がいて、二組と四組にはいない。偏りはありつつも、かなり少数に抑えているみたいだな。


普通に考えて『候補生』になった時のメリットは大きすぎるが、デメリットも多少ある。学級代表委員会や生徒会のいずれかに参加、部活という名目で掲げられた訓練に加わなければならない等、その分自分の時間がなくなってしまう。



…にしても引っかかるな…。



『刺客』と『護衛役』の人間とは別に『候補生』がいると銀二からは教えられなかったのなぜだ。言い忘れることはまずないし、任務に支障が出ない程度の者と判断したのか。あるいは知られたくないことがあるためか。


しかし、どの道こちらの方がSSFよりも『候補生』に接触する機会が多い。よってより多くの情報を取り入れやすい立場には変わりない。



浅見は強引に掴まれた腕を振りほどき、明日人に語気を強めた返答する。



「答えは単純だ。『候補生』になっても、つまらん人生を送ると分かっているからな」



「…はぁ…、本当にそれでいいのかよ。多額の助成金をもらい、この先の人生が豊かになると約束されているんだぜ?つまらないも何も、現実を直視できないバカが持つ答えだぞ…」


浅見が『候補生』にならなかった事実に対し、明日人は何か腑に落ちないことがあるんだろう。円谷校長に認められた自分らは将来安泰の道を辿ることができる。何一つ不十分なく生きていける。自分たちは優秀な人間だと、そう判断してしまったのだろう。


だがそれは彼らの錯覚でしかない。


ただ円谷校長の手の内で操られているだけのこと。


SSFへの攻撃に備えて、円谷組織の防御を固めるための戦力に使われているだけの道具にすぎない。恐らく『基礎的訓練』のカリキュラムになぞらった方法で彼らの潜在能力を引き伸ばし、これから起こりうる行動への布石として投じられたのだろう。


多少腕は立つと思うがSSFや銀二、それに『基礎的訓練』を修めたオレや江坂が相手になれば負けることは早々にない。




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