日常の検索あれこれ⑦ 「エラー 回避」
「母のスマホ 落とした場所」
『あなたの母親は本日、友人と昼食をとったホルモン焼肉屋ぺこぺこの店内にスマホを置いたまま店を出ました。現在12番テーブルのソファの隙間に挟まっています。』
「喧嘩1番強い奴 校内」
『あなたが通う高校の生徒のうち、殴り合いの喧嘩で最も強いのは2年4組の柔道部、坂東 剛史さんです。』
「最近出てきた女優 ゴリ推し」
『あなたが最近テレビや雑誌でよく目にすることがあり、特に動画サイトの広告で何度も出てくることから嫌っている女優・井藤歩佳さんは所属している事務所の上層部から好感度が高く、多くのテレビやドラマの出演にはその力が大きいと言えます。また、SNSや口コミサイトに井藤歩佳さんを絶賛する投稿を行う人間を事務所が雇っていて、ネット上の人気より実際の人気は低いと言えるでしょう。ただ、現在は作られた人気に実際の人気が追い付いてきています。』
「このパソコン 前の持ち主」
『ERROR ご覧になろうとしている情報は表示できません。』
方法を検索したとしても、そんな方法はありませんという結果が出ることがある。
存在を検索したとしても、そんな存在はいませんという結果が出ることがある。
ただ、こういう質問だけは黒いパソコンから「ERROR ご覧になろうとしている情報は表示できません。」という定型文が返ってくる。どうしてここに来たのだとか、どのように部屋へやって来たのだとか検索内容を変えてみても結果は同じ。
だから、黒いパソコンを手にしてからしばらく経つと、僕はなぜ黒いパソコンがといったことを調べる検索をしなくなった。何しろエラーを吐いても1日の検索回数の1回は消費されてしまうのだ。
黒いパソコンは何でもかんでも解決できるほど超チートアイテムではなく、無理なことは無理と言う。今までも何度か望んだ結果を表示してくれないことがあった。けれど、エラーと言うのは唯一こういう質問だけだ。
何か違っている。きっと特別な質問なのだ。トップシークレットに設定されている。
当然、初めから気になっていることであるけれど、黒いパソコンで調べても分からないのならしょうがない。自分の力で調べようとしても何の心当たりも当てもない……。
「エラー 回避」
『ERROR ご覧になろうとしている情報は表示できません。』
優先して検索したいことも無かったので、今回は次の日にもっと探ってみたけれどやはりダメだった。
エラーにならずに検索を実行させる方法も無し。
じゃあもう気にしないのが正解だ。二度とこの検索はしないことにしよう。
そう思ったのだけれど、今回は黒いパソコンが続きの文を表示した。
『いずれ、知るときがきますよ。』
