番外編1 「デスゲーム 終わらせ方」③
「誰かを殺すなんて……あり得ない……」
「やっぱり早く逃げよう」
初めの議題はどうにかしてこの状況から逃げられないかというものだった。
学級委員長とか部活でキャプテンをやっている奴とか、普段からクラスの中心にいる奴がメインになって話し合った。
どこかで見たことがありそうなデスゲームという状況にそれぞれ戸惑いながらも、話せる精神状態になった者から徐々に意見が出てきた。
みんな死にたくないし殺したくもないからミニ人体模型から逃げる算段を立てて、逃げれた奴が警察や他の大人に助けを求める。話の筋はこうで、この話の際中に否定意見は出なかった。
スマホは何故か誰の物も外へと繋がらなくって、だから無理やり窓ガラスを割って出ることしか方法は無かった。
それが決まると、誰がやるのかという話になって、すぐには誰も手を挙げなかったけど程なくして、先程も逃げようとした背の高いリーダー格の男子が手を挙げた。
「俺がやるよ……」
しかし、いざ実行時用とすると、またもやその手は止められた。
ミニ人体模型にではなく、同じクラスメイトの手によって窓を割ろうとした手は止められる。
「このゲームからはそんな方法じゃ逃れられない」
何かを知っていそうなクラスメイトの発言で生まれた疑念に拍車をかけるようにミニ人体模型が口を開く。
「言い忘れていタけど、このゲームの開催は君たちの中の誰かが望んだものだヨ。僕は頼まれてココにいる。ちなみにその裏切り者を敗北者として殺せば、このゲームは終わるヨ」
そこで僕たちの話し合いの議題は切り替わって、どうしてこんなことになったのかというものになった……。
クラスメイトの間で生まれた疑念。「何か知っている人がいるなら正直に話してほしい」から「何か知っていそうな人を正直に話す」。
どんどん僕のクラスの話し合いは不穏な方向に進んでいった。
そして、ついに自分が1番怪しいと思っている人へ投票するしかないと言い出すものが現れた。
「――もうそれしかないだろ。俺は投票するよ」
「待てって。明日まで時間があるんだから、もっと色々試してみてからでいいだろ」
「そんなこと俺だって分かってる。でもそれがダメだった時の保険だよ。明日までにどうにかできたらこの件は忘れてそれはそれで一件落着でいいじゃん」
「おい……」
「もう嫌……」
1人の男子が止めても無駄だと言わんばかりに力強く投票用の黒いBOXに向かう。しかし、その間に複数の男子が割って入った。
僕は人生最大の修羅場を見ている時も俯瞰しているような気分で、ただこれ以上被害が出ないまま時間が過ぎるのを祈っていた。
普通の高校生じゃ解決できそうにないから僕が真の力を見せるしかない。例え力がバレることになっても使うしかない……。
「投票するにしてもお前の感情だけで入れたらダメだ。獲得票数同率1位が生まれる方法を考えないと」
「そんなもん無理に決まってんだろ……だって誰かを同率1位にするとしてそんな危ない役を買って出る奴なんている訳ねえだろ……」
「だったら別の方法を……」
「…………」
「……俺がやるよ。1人目は俺が票を受け取る」
……投票が始まって、それぞれが苦しい表情を浮かべながらも黒いBOXの中に1人ずつ入っていった。
しかし、黒いBOXから出てきた者が何故か急に態度を変えたり、自ら自分がデスゲームを開催した裏切り者だと宣言する奴が現れるといった事件が起こった。
もうクラスはパニック状態。状況を整理できている人が誰もいなくなって、殺される人が決まる票がどんな風に流れているのかも把握できなくなった。このままではデスゲームを始めた人間の思惑通り誰かが死ぬ――。
そんな時にチャイムが鳴った――。絶望の時間だった――。長かった――。
ようやく僕の出番だ。




