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word24 「若手女優 裸」

 僕は正義なのか悪なのか――。


 この黒いパソコンを手に入れてからというもの、色々なことを検索してきた。そのパソコンの使い方は客観的に見て正義だったのか悪だったのか。


 基本的に人を不幸にするようなことは検索してはいない。平和な検索をしてきたと自負している。他人に知られたくないであろう隠し事を知ったりしたことはあるけれど、それをさらに誰かへ広めたりはしてないし、僕のせいで凄く不幸になった人は絶対にいないと思う。


 だから、正義なのか。それもちょっと違う。


 正義に満ちた人間がこのパソコンを持てば人々の役に立つためのことを検索しているだろう。僕は自分の為ばかりに使ってきた。世のため人のため、指名手配犯の居所を掴んだり、この知識を使って医者を目指したり、そんなことはしようとも思わなかった。エロ目的で使ったことが1番多い。


 でもやっぱり、悪でもないと思う。


 悪人がこのパソコンを持ったらそりゃもうとんでもない悪事を働けるだろう。盗みとか人への嫌がらせは簡単にできる。その人が盗まれたことに気づかない時間や1番嫌がることなんて検索したら一発だ。その気になればきっと世界の秩序を壊すことだってできる。


 だから僕は正義の人間でも悪の人間でもない。結論を言うとそうなるみたいだ。


 だけど今からやろうとしていることを実行してしまえば僕は悪の人間になってしまうかもしれない――。


 なぜ僕が今こんな難しいことを考えているのかと言うと、僕が今あと1歩で悪に染まってしまう境界線に立っているからだ。


 黒いマウスという夢のような機能を有しているマウスをを取り戻してからの最初の検索。


 その選択を間違えると僕は人として堕ちてしまうのではないか、下種に成り下がってしまうのではないか。そんな気がする――。


 僕はマウスを取り返した日の夜、日を跨いですぐにその機能を確かめることにした。


 マウスを操作して右クリックをすると、すぐにその機能の存在は確認できた。画面に見たことが無いウインドウが表示されて、そこに画像や動画といった選択肢があった。普通のパソコンで右クリックしたときとなんら変わらない白いウインドウが出てくる挙動であった。


 初めて黒いパソコンを私利私欲の為に使おうとしたときと同じ気持ちになった。誰も経験できないであろう夢の体験へ手を伸ばす。神になろうとでもしているみたいな。二度と経験できないとさえ思っていた気持ち。


 世界が1段階広がるときの気持ちだ。


 画像や動画のみならず地図や知恵袋といった項目もあった。最も気になるのはショッピングという項目。それらの項目を見た時は本当に胸が躍った。


 しかし、僕はそこで衝動に任せて検索を実行せずに思いとどまる。


 何でも見れるというのならやっぱり今日本で1番人気のある女の子の裸を見ることにした。具体的には今映画やドラマに引っ張りだこの若手女優の裸だ。だけど、それはさすがにまずいんじゃないかと思った。


 僕の勝手な基準だ。エロい情報を知るのはいいけれど、裸をそのまま見てしまうのはいかがなものか。直接手を汚している感じがしたのだ。


 だってそうだろ。これって完璧な盗撮じゃないか。僕は気づいて頭を抱える。


 絶対にバレることは無いだろうけど、やってることはその人の風呂へカメラを仕掛けて見ているのと変わらない。盗撮ってちゃんとした犯罪だぞ。犯罪を犯した人間は捕まるんだぞ。女の子を平気で盗撮するなんて男として終わっているし。


 心の奥底に眠っていた僕の中の倫理が声を大にして反対している。


 もしも警察にこのパソコンの存在がバレて、さらに検索したこともバレたとしても、今までの検索だけなら捕まりはしないが、女性の裸を検索してたら捕まる気がする。


 胸に手を当てて目を閉じると聞こえる。それはさすがにやめておけ……後悔することになるぞ……絶対にやめろ……。


 ……………………。


 でも、まあ検索するんですけどね。


 僕は心の声を振り切ってある若手女優の名前と裸という文字を入力した。


 いや、これは僕のせいじゃない。僕は悪くない。もしこの行動に文句を言ってくる奴がいるなら問いたい。日本一ファンの多い女優の裸を見れると言われて見ないなんてことがあるのかと。


 見ないなんてそれはもう逆に男じゃない。何ならこの若手女優にも失礼ではないだろうか。目を開ければ日本一の裸があるというのに目を開けないなんて逆に失礼になってしまう。


 そんな考えが悩んでいた僕の背中をあっさりと押した。


 表示される若手女優の裸画像。そこには思っていた以上の光景があった。


 超が付くほどの高画質だったのだ。


 自然な姿で立つ全裸の若手女優の姿、背景は白色。そのモノホンの胸の形、乳首の色、乳輪の大きさ、へその下にあるほくろまで、そしてもちろん……股間も。


 絶対に一生直接は見ることができない国宝級の裸体。それが……もう1度言うが、超高画質で……。


「いや……やっば……」


 思わず声が漏れる。興奮すると鼻血がでる漫画のキャラならたぶん大量の鼻血で宙に浮く案件だ。


 さらには、マウスをスクロールすることで上下左右色んな角度からその姿を捉えた画像が出てきた。


 顔を近づければ産毛も見える。クリックだの右クリックだのを交えて操作すればズームすることも可能ではないか。


 ああ。手にしてしまったんだな。僕は。手にしてしまったんだ……。


 それから僕は裸の画像を見るだけで2時間という時を過ごした。

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