表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
213/217

word60 「黒いパソコン なるべく優しい人へ送付」①

「作業はすごく簡単です。まずパソコン本体の裏側を開いて、そこへあなたが板チョコみたいだと思っている黒いパーツを入れるだけです。表裏も向きもありません。あとはネジを締めるだけ。もちろん、魔法をかけるなんて工程もないから、魔法使いじゃなくてもあっという間に作れます。」


 黒いパソコンを手放す前の仕上げとして、最後から2番目の検索として選んだワードは「黒いパソコン 作り方」。


 既に入手した黒いパソコンの組み立て方を教えてもらって、もう1つ黒いパソコンを作るための検索だ。


 僕は検索結果を見て鼻で笑いながら、言われたとおりに作業に取り掛かった。どうせそんなこったろうと思っていた。


 パソコンの形をした外部パーツを折り畳んだ状態で裏返して、蓋を外す。すぐに外れる状態だったので前にも開けて見たことがあったが、すっからかんで何も入っていない。


 ビターチョコを煮詰めたような板チョコ、物体Xを再び持ち上げる。


 今まで黒いパソコンを使っていても、内部のパーツがこれだけだと思わなかったくらいなので見た目よりは重い。重量も質感も金属っぽさはある。


 黒いパソコンの本体はガワよりもこっちのような気がする。取り寄せるのに必要なポイントもこっちのほうが高かったし……。


 しかし、こんなもの一体どこに売っているのだろうか。ショッピング検索のルール上、宇宙のどこかには売っているはずだが……。


 なんとなく表に見えるほうを探してひっくり返しながら、言われた通りにただ外部パーツの中へ入れてみる。すると、強力な磁石でくっつくように物体Xは固定された。


 少し斜めになったのが気に入らない。けれど、1度くっついてしまうと、うんともすんとも言わなくなってしまった。これ以上やったら壊れてしまいそうなくらい力を入れてもダメ。


 だから僕は諦めて蓋を閉じた。かなり気持ち悪いが致し方ない。


 昔壊れたゲームを解体したときに使ったまま、引き出しの中で放置していたドライバーを取り出す。ネジを左手で固定しながら、ドライバーを垂直に立てた――。


 僕の机の引き出しは大体とりあえず入れておこうで片付けられたガラクタ達の集まりだった。他の収納も表面上綺麗だけど、中は汚い。


 黒いパソコンを手に入れてからは探し物には困らなくなっていたけど、明日からはまた引き出しの中をガサゴソ漁ることが増えるんだろうな。そんなことを作業をしながら思った。


 ――上下に4つずつと、左右の真ん中に1つで、計10個のねじを締め終わる。これだけでもう黒いパソコンの完成らしかった。


 表に返してカバーを開いてみると、既に起動していた。見慣れたというかどのパソコンでも見れるパスワード入力のような画面は黒いパソコンのものと全く同じ。


 初期設定もしていなければ、何の保証も入ってないしウイルス対策ソフトもインテルも入っていない。けれど、説明が無かったからきっともうこれで完成のはず……。


 一度やる気が入った僕は、続けざまに次の作業に取り掛かった。


 もしも僕の想像通りなら、あの日検索を無限にする方法の謎に対して出した答えが正解ならこれで――今日2回目の検索ができるはず――。


「黒いパソコン なるべく優しい人へ送付」


 僕は指紋等の汚れが全くない新しい黒いパソコンのキーボードを叩いて、最後となる予定の検索ワードを入力した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ