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word53 「告白したら付き合ってくれる人 人数」⑥

 きゅ、9人か――。8人でも10人でもなく、その数か。うーん、微妙。


 検索結果を見た僕の顔は今までしたことが無い形になった。唇や眉が絶妙な感じで曲がった。画面の黒い部分に映ったそんな自分と目が合ったので、僕は頭を掻きながら顔を元に戻す。


 ここんとこの検索はいつもこんな反応になっている気がする。救いを求めて黒いパソコンを頼っているのに、いつもこれじゃない。やはり、ハードルを上げすぎてしまっているのだろうか。


 それにしても9人とは、本当に微妙な数字だ。


 僕が事前に決めたルールに従うと、これでは折原に連絡しないということになる。でも、たった1人足りないだけだ。それだけでまた僕は逃げて、楽な道を選択する……いいのか。


 うーん、その答えもまた微妙…………いやいや、良くないだろ。

 

 9人だぞ、告白したら付き合ってくれる人が9人もいる。多いじゃないか。前と比べて激増している。自信を持っていい。


 それにここで逃げたら、じゃあいつやるのって話になる。心に余裕がある週末に、こんなに勇気を出して恋に関連する検索ができることなんてもう無いかもしれない。また今度にするかって……いや、もういいだろこんな生活は。


 僕はまた勢いに身を任せてスマホを手に取った。素早い操作で、軽音楽部のグループトークから折原のアカウントを探す。すぐに見つかる。20人そこそこのグループだから当然。元よりそこは問題ではない。


 好きだと言っていたギターのアイコンから、折原を感じて――ほんのちょっと心が揺らいだが、まだ止まらない。


 もういいだろ、行くところまで行って、行き切っていいだろ。こんな遅い時間だけれど、そこも逆にいいだろ。このくらいの時間のテンションじゃなきゃ無理だ。


 ずっと縛られてしまっている生活をなんとかしたい。そろそろ弱い自分が鬱陶しくなってきた。


 送るぞ、僕は――。トークボタンも僕は勢いのまま突破した。


 でも初めは何と言ってメッセージを送ればいい。狂ったままいきなりデートに誘ってしまうか。今度2人でどうしようだなんて……でも、ないぞデートプランなど。1月後半という季節にはイベントらしいイベントもないし、そういうのがあったら楽なんだけど、いやというかいきなりデートは流石に無いだろ。


 そもそも僕のアイコンやプロフィールはこれでいいか。そういえばずっと変えていないが、女子受けはどうなんだろう。まずは男子が設定していたら萎えるアイコン5選みたいなサイトを見ようか。これを機に何か格好が良いものに変えたほうが良い。一旦やめて……。


 いや、考えるな――。もう、やめよう――。ノリと勢いで行ってしまおう――。この胸のビートを思いのメロディに変えて、ぶつけるんだ…………何を言っているんだ僕は。


 思いのままに指を動かすと、つらりつらりと筆は進んだ。突然やり始めたことだけど、心臓と指が直接繋がったのかというほど迷わなかった。上手く感情を言葉に変換できた。


 できたはいいけれど、送信には流石にもう一捻りの勇気が必要だった。時計の秒針に合わせて指を振り、いちにのさんでそこも乗り越える。


「君のことが気になってて連絡しました、音楽室で2人で話したのが楽しかったので、またギターの話が聞きたいです」


 個人的にはちょっと攻めすぎかとも感じるそのメッセージ。送信されていくのを見届けると、僕はすぐにスマホを布団へ投げ捨てた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ええぞ、良くやった主人公
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