word47 「黒いパソコン お隣さんから」②
仮にお隣さんが今日……いや、今日じゃなくても……僕が深海魚について動画検索することを知っていて、そこに映り込む術も知っていたとしたら……この嫌な予感は的中していると思う。
お隣さんはわざと黒いパソコンの画面に自分の姿を映して見せたのだ。その意図は分からない……けれど何かしらの意図があって。方法はお隣さんが僕に黒いパソコンを渡したりなんてしていたとしたら知っていてもおかしくはない。
それこそ僕が無いと決めつけている2台目の黒いパソコンを保有している可能性だってゼロじゃない――。
僕は自分の部屋の中から、お隣さん家の方向を見た。窓がある方向ではないので、ただ壁を見ただけだが、息を呑んで。さっきまで何の変哲もなかった部屋が落ち着かない場所になってしまった。誰かに監視されているかのような居心地の悪さがある。
もしそうだったら目的は何なんだろう。気づいてしまった僕はこれからどうするべきなんだろう。どうさせたいんだろう。
普通お隣さんから受け取るものと言えば、回覧板と旅行のお土産くらいだと思うんだが、何でも検索できるパソコンをお隣さんが届けてくれていた場合、裏にある理由はなんだ。ご近所付き合いなんかでは決して決してない。
必要なくなったからか、何かの実験か、前に知ったブログのネタか、あるいは僕のことが好きなんだろうか――。
こうやって迷ったときは黒いパソコンに頼りたくなってしまう。これを手にしてからはずっとそうだ。
けれど、今回ばかりはそうもいかないのである。
検索したばかりですぐには使えないし……それ以上に黒いパソコンとお隣さんとの繋がりを検索したとして、結果が100%信用できるのかという問題がある。
もし実際繋がりがあったとしたら、それを隠すような結果を表示するのではないだろうか。お隣さんの息が掛かっている可能性があるとなると、黒いパソコンが白かどうか疑わしい。
そもそもそういう検索はエラーになるかもしれない……。
つまり――つまりだ――直接対決を挑むしかないないのである。
「黒いパソコン お隣さんから」
次に知りたいワードはこれに決まった。しかし、聞くのは黒いパソコンだけでなく、お隣さんにも面と向かって聞かなければ。
ちょっと暇を潰そうと思って深海魚を検索しただけなのにとんでもない勝負の時が来てしまった。知ってしまった以上待ったなし、いつかはやらなければと思っていたがこのタイミングなのか。
黒いパソコンと僕の最終章になるかもしれないお話……。
できればまた後回しにしたいところだが、生まれた疑惑を解消するには、突撃!隣の宇宙人するしかないようだ――。




