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word46 「未発見 深海生物」

 この地球上には未発見の生物がたくさんいる。僕が調べたことではないけど、偉い学者さんたちが言うにはなんと何百万種類もの生物達がまだ見つかっていないらしい……。


 信じられないような数だが、偉い学者さんがそう言うんだからそうなのだろう。


 凄くワクワクする話だ。僕の先祖の代から世界中に人間が住んでいて、クタクタに使い古されていそうなこの地球にまだ何百万もの感動が眠っているというのだ。


 中でもその多くは海の中にいるという話だ。青い星地球は陸よりも海の面積のほうが広い。しかも人間が普段生活していない場所に見つかっていない生物が多いのは当然と言えば当然の話である。


 陸からではよく見えない海面の下の暗い海の中、我々人間が生身では到達できない領域に、今も多くの未発見生物が生活している。


 見たことない色、見たことない形、もしかしたら驚くほどデカい生き物とかもいたりするのだろうか……。


 長年に渡って名だたる学者たちが研究しているだろうその疑問、黒いパソコンを使えばもちろん瞬時に答えを知ることができる――。海に行かなくても特殊な機械が無くても、ボタンを押すだけで1発だ――。


 何でもない場所にある一軒家の、どこにでもあるような部屋の収納を開くと、普通の高校生である僕は、今日も黒いパソコンを取り出した。


 今日の検索を未発見の海洋生物を見ることに決めた。動画検索を使って、文字ではなくちゃんと姿を見る。


 生物系のことを調べたり、動画を見るのは嫌いじゃなかった。今こういう検索をしようとしているのも初めは動画アプリのおすすめに出てきた珍妙な魚の生態を見たからだ。


 最近見つかったという初めて目にする形をした魚を見て、こんな珍しい生物は世界中にどれくらいいるのか調べたくなった。


 つまり僕が見たいのは未発見生物の中でも、気持ち悪いというか驚くような形をした生物である。


 気持ち悪い生物と言えば、1番に思いつくのは深海魚。奴らは高い水圧や光の届かない世界で生きているうちに独特な変化を遂げている。目玉が他の魚と比べてデカかったり、鱗が付いていなかったり。


 テレビでも時々それらの特集をやっていたりするが本当にどいつもこいつも独特。深海魚と一括りにするにはあまりにも見た目や生態が違っている。


 深刻な環境に対する進化の方向が各々違っているのだろう。餌を取るのが難しければ、音で獲物を察知するのか、暗い場所でも見える目を用意するのか。天敵と相対した時の対処法も攻撃や逃走など様々である。


 そして、その進化の結果、深海魚は人間から見てルックスが気持ち悪いものが多い。


 僕は深海魚の中でも最もルックスが気持ち悪いやつを黒いパソコンに聞くことにした。どうせなら深海魚に限らず、甲殻類なども含めた深海生物という言葉にして、1番気持ち悪いという言葉も付け足して。


「未発見 深海生物 1番気持ち悪い」


 動画検索に設定して、ワードを入力し、Enterキーを押す。


 するとすぐに、黒いパソコンの画面が切り替わった。


 画面に大きく表示されたのは体の表面が透明になっている魚だった。まるで味のないゼリーで体ができているような、見た感じ柔らかそうで、内臓や骨が綺麗に透けている。そんな中、目だけが赤黒く大きいのでグロテスク。


 何よりも気持ち悪いのがお腹の部分が風船のように膨れていてそこに小さな粒々がいくつもあることだ。集合体恐怖症の人が見たら泡吹いて倒れそうな粒々は、よく見ると1つ1つが細胞のように透明な丸の中央に黒い珠が1つという作りになっている。


 これは卵か何かだろうか……眉をひそめて、気持ち悪い魚を見ていた僕……次の瞬間、さらに僕の眉間が歪む。


 しかも、これまでにないほど大きく……。


「ん……?」


 気持ち悪い深海魚が何かしたのではない。深海魚を映したカメラの奥に別の生物を見つけたのだ。


 しかも、それはどこかで見たことがあるような……。


 まさか、そんなはずは無いと思った僕は目をこすった。そして、顔を画面に近づけてもう1度よく見る。


 けれど、カメラに映りこんだ別の生物は嫌な予感を決定づける行動を取った。


 深海魚に向かって両手で手を振る――。水中に人型で存在するそいつは、皮膚が緑色で筋骨隆々――。


 奴はまさしく……。お隣さんだ。


 なぜ、こんなところに……。

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― 新着の感想 ―
[一言] お隣さん深海魚説(別の星の)
[一言] でた、お隣さん。 深海魚に向かって手を振っているのか、画面の向こうの主人公に手を振っているのか…どちらにしても怖いですね。
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